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サプリメントやエナジードリンクなど、さまざまな商品の成分として目にすることが増えたアルギニン。
しかし、その効果や体への影響について、じつは詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、アルギニンが健康や美容にもたらす効果や働きを解説します。
アルギニンを多く含む食品や効果的な摂取方法、1日あたりの摂取量の目安も紹介するので、ぜひ参考にして日々の生活に取り入れてみてください。
アルギニンとはどんな栄養素?
アルギニンは、たんぱく質を構成するアミノ酸のひとつです。
私たちヒトの体に必要なアミノ酸は20種類あり、そのうち食事からの摂取が必要な9種類を「必須アミノ酸」、体内で生成できる11種類を「非必須アミノ酸」と呼びます。
アルギニンは、体内で生成できる非必須アミノ酸です。しかし、食事からの摂取がまったく必要ないかというと、そうとも言い切れません。
なぜなら、幼児期は必要な量に対し生成される量が十分でなく、大人でも大きな怪我や感染といった特定の条件下では需要が高まることがあるためです。
このことから、アルギニンは「準必須アミノ酸」や「条件付き必須アミノ酸」とも呼ばれています。
アルギニンの嬉しい効果6つ
アルギニンは、たんぱく質の構成要素としてだけでなく、疲労回復や免疫機能の向上、血流改善など、体内で多くの役割を果たします。
私たちの健康や美容にどのような影響を与えるのか、アルギニンの嬉しい6つの効果を詳しく見ていきましょう。
成長ホルモンの分泌を促す
アルギニンには、脳下垂体を刺激して成長ホルモンの分泌を促す働きがあります。
成長ホルモンは、子どもの成長や発達に重要な役割を果たし、思春期にピークを迎えたあと徐々に減少します。しかし、大人にとっても成長ホルモンは重要です。
成長ホルモンには、病気に対する抵抗力を高めたり、骨の形成を促進して骨密度を維持したりする働きがあります。
また、脂肪の代謝を促し、筋肉の成長と修復をサポートするため、成長ホルモンの分泌を促すアルギニンは、ダイエットや筋肉増強を目指す人にもおすすめの栄養素です。
疲労回復を助ける
アルギニンは、アンモニアを尿素に変換して体外に排出する「尿素サイクル」に関わるアミノ酸です。
アンモニアは、運動時の疲労感を引き起こす原因物質のひとつで、体内に蓄積すると疲労感が増します。
アルギニンには、そんなアンモニアの血中濃度の上昇を抑え、疲労回復を助ける効果があるのです。
また、アルギニンはカフェインの覚醒効果を増強する働きがあるため、緑茶やコーヒーなどと一緒に摂ると、精神的なリフレッシュにも効果が期待できます。
免疫力を高める
アルギニンは、マクロファージと呼ばれる免疫細胞を活性化します。
マクロファージは、体内に侵入した細菌やウイルスを捕食する白血球の一種で、活性化が感染症への抵抗力の強化に繋がるのです。
さらに、アルギニンにはコラーゲンの生成を促進して、傷の治癒を早める効果もあります。
そのため、感染症リスクの低減や創傷の治癒を助ける目的で、大きな怪我や床ずれ、手術後の回復にアルギニン輸液が使用されることがあります。
生活習慣病を予防する
アルギニンから生成される一酸化窒素(NO)には、血管を拡張して血流を改善する働きがあるため、高血圧などの生活習慣病の予防効果が期待できます。
また、アルギニンには血糖値を低下させる効果があることも報告されており、血糖コントロールに有用です。
ただし、腎機能障害を持っていたり降圧薬など特定の薬を服用していたりすると、アルギニンが悪影響を及ぼすことがあります。
持病や服用中の薬がある人は、アルギニンを摂取する前に医師に相談するようにしてください。
運動パフォーマンスを高める
アルギニンを摂取すると血流が改善するため、筋肉への酸素の供給量が増え、運動中の持久力が向上します。
成長ホルモンの分泌を促し、筋力の増強を効果的に行えるのも嬉しいポイントです。
またアルギニンは、アンモニアの蓄積を防いだり、血流促進により筋肉の回復を助けたりするため、疲労の軽減効果も期待できます。
これらの理由から、アルギニンは運動パフォーマンスを高めるのに効果的です。
肌の潤いを保つ
アルギニンは、肌の角質層に存在する天然保湿因子(NMF)の主要な成分のひとつです。
NMFは、角質細胞の水分を保持する役割があるため、アルギニンを摂ることで肌の保湿をサポートできます。
また、アルギニンにはコラーゲンの生成を促進する効果もあります。コラーゲンは、肌の弾力性や保湿力を維持するために重要なたんぱく質です。
アルギニンの摂取によりコラーゲンの生成が活性化されると、肌のハリや潤いを保つ効果が期待できます。
アルギニンを多く含む食品
アルギニンは肉や魚、ナッツ、大豆、卵、乳製品などに多く含まれています。
各食品の具体的な含有量については、以下の表を参考にしてください。
食品名 | アルギニン含有量 (mg) |
---|---|
ゼラチン | 8100 |
落花生 (炒り・小粒種) | 3300 |
大豆 (炒り・黄大豆) | 3000 |
ごま (炒り) | 2900 |
アーモンド (炒り・無塩) | 2300 |
車えび (養殖・生) | 2100 |
鶏むね肉 (若どり・皮なし・生) | 1500 |
豚ロース肉 (生) | 1500 |
和牛肉 (そともも・生) | 1400 |
まさば (生) | 1200 |
銀鮭 (養殖・生) | 1200 |
鶏卵 (生) | 840 |
プロセスチーズ | 830 |
※可食部100gあたり
参考:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
アルギニンの効果的な摂り方と摂取量の目安
アルギニンの効果的な摂取のタイミングは、目的に応じて異なります。
ここからは、アルギニンを摂取するおすすめのタイミング、相乗効果が期待できる成分、1日の摂取量の目安など、より効果的な摂り方を説明します。
アルギニンを摂取するおすすめのタイミング
免疫力の向上や骨密度の維持など、成長ホルモンの分泌促進による効果を期待するなら、就寝前のアルギニン摂取が効果的です。
成長ホルモンは就寝中にもっとも分泌されるため、就寝前にアルギニンを摂取すると、効果的に分泌量を増やせます。
一方、運動パフォーマンスのアップや、トレーニングによる疲労の回復が目的なら、運動前後の摂取がおすすめです。
アルギニンの血中濃度は、摂取から30分~1時間後にもっとも高くなるため、目的に応じたタイミングで摂取するとよいでしょう。
アルギニンと相性の良い成分
アルギニンと相性の良い成分として、オルニチンとシトルリンが挙げられます。
「オルニチン」は、しじみなどに多く含まれる、尿素サイクルにおいて中心的な役割を果たすアミノ酸です。
成長ホルモンの分泌を促進する効果もあることから、アルギニンとオルニチンを組み合わせることで、運動パフォーマンスの向上や疲労回復への相乗効果が期待できます。
「シトルリン」は、スイカなどウリ科の植物に多く含まれるアミノ酸です。
シトルリンは、体内で徐々にアルギニンに変換されるため、アルギニンと一緒に摂るとアルギニンの血中濃度を長時間にわたり高く維持できるのがメリットです。
アルギニンも、一酸化窒素(NO)を生成するプロセスを通じてシトルリンを生成することから、相互作用により単体で摂取するよりも高い効果が期待できます。
1日あたりのアルギニン摂取量の目安
アルギニン摂取による効果を得るには、成人では1日あたり2,000~4,000mgの摂取が必要といわれています。
ただし、アルギニンは健康や美容に嬉しい効果がある一方、過剰に摂取すると消化器官に悪影響を及ぼし、腹痛や下痢などを起こすことがあります。
とくに、サプリメントや栄養ドリンクを利用する場合は、摂り過ぎにならないよう摂取量にじゅうぶん注意しましょう。
まとめ
アルギニンは体内で重要な役割を果たすアミノ酸です。成長ホルモンの分泌促進や疲労回復、血流改善など、嬉しい効果がたくさんあります。
また、オルニチンやシトルリンと相性が良く、運動パフォーマンスの向上や免疫力アップに役立つ点も魅力的です。
アルギニンは大豆やナッツ、肉や魚に多く含まれていますが、最近では手軽に摂取できるサプリメントも数多く販売されています。
目的により一緒に摂るべき栄養素や摂取のタイミングが異なるため、アルギニンを摂取する目的に応じて、効果的に活用しましょう。