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岸田文男首相は「新しい資本主義」政策の中で、「貯蓄から投資へ」と打ち出しました。
国や金融機関が株式や投資信託などに目を向けることを推奨する中、注目を集めているのがNISA (ニーサ)です。
初心者向け運用の代表格として紹介されることも多いNISAですが、デメリットしかない、やらないほうがいい、という声も聞かれます。
今回は、NISAのメリット・デメリットを深掘りしますので、NISAの運用を迷っている人、デメリットを理解した上で対応したい人はぜひ参考にしてください。
NISAとは
金融庁のホームページによると、NISAとは2014年に始まった個人投資家向けの税制優遇制度。
株や投資信託などの配当金や売却益などが非課税となる制度です。
通常は、株や投資信託を購入して利益が出ると、約20%の税金がかかります。
例えば10万円の利益が出た場合、2万円は税金分なので8万円を受け取れるのですが、NISAだと10万円全額を利益として受け取ることが可能です。
少額から投資ができるとあって、投資初心者におすすめの制度だといわれています。
2022年現在、NISA は3つに分かれていますが、2024年からは新しいNISAが始まります。
NISAの種類
NISAには、下記の3種類があります。2023年に終了するものもあるのでご注意ください。
- NISA(一般NISA)
- つみたてNISA
- ジュニアNISA
一般NISAは2014年から始まり、毎年120万円の非課税投資枠が設定されています。期間は5年間です。
つみたてNISAが始まったのは2018年です。積立式の少額投資非課税制度で、年間40万円が上限で投資期限は20年となっています。
ジュニアNISAは2016年に始まりました。19歳以下の未成年者を対象とした少額投資非課税制度で、投資枠は年間80万円です。ジュニアNISAは2023年末で終了します。
2024年からは新しいNISAに変わる
2024年からは新しいNISAに変わります。
ジュニアNISAの新規の口座開設は2023年までで、2024年以降、新規購入ができなくなります。
NISAの対象年齢は18歳以上となり、新しいNISAとつみたてNISAの2種類になります。
新しいNISAの非課税枠が2階建てとなるのが特徴で、1階部分はつみたてNISAと同様の運用、2階部分がこれまでの一般NISAとほとんど同じ内容です。
非課税投資枠も変更となり、1階部分は20万円、2階部分は102万円が上限となります。
NISA・つみたてNISAはデメリットしかないと言われる理由
日本証券業協会が2021年12月に発表した「NISA口座開設・利用状況調査結果」によると、NISAとつみたてNISAの総口座数は1067万口座。
2021年末における証券会社の一般NISA口座数に対する投資未経験者の割合は47.4%、つみたてNISA口座数に対する投資未経験者の割合は87.2.%と、いずれも増加傾向にあります。
NISAは少額といえども投資です。これまで全く投資をしてこなかった人が、老後に備えるため、いきなり投資に手を出すのは、少々危険な行為といえるかもしれません。
投資には価格変動のリスクがあり、必ず利益が出るとは限らないので注意が必要です。
NISAやつみたてNISAにデメリットしかないという声があるのは、投資未経験者の投資リスクへの認識の甘さが関係していると考えられます。
下記の2つに分けて、それぞれデメリットをご紹介します。
- NISA(一般NISA)のデメリット
- つみたてNISAのデメリット
NISA(一般NISA)のデメリット
NISA(一般NISA)のデメリットとして、以下のような点が挙げられます。
- 税法上のメリットが少ない
- 売却時期は自分で決めなければならない
NISA制度全般にかかわるデメリットとして、一般NISAもつみたてNISAも、NISA口座と他口座の損益通算(利益と損失の相殺)ができないことが挙げられます。
損失分の繰越もできないため、税法上のメリットが少ないのがデメリットです。
投資において一番難しいのは、売却時期を自分で決めることです。
NISAでも同様です。売却時期を決めるのは投資初心者にとって至難の業といえるでしょう。
つみたてNISAのデメリット
つみたてNISAのデメリットは以下の通りです。
- 元本割れのリスクがある
- 対象は投資信託だけ
- 年間の非課税投資枠が少ない
つみたてNISAは少額投資といえども投資である以上、購入した金額を下回る元本割れのリスクが伴います。
つみたてNISAの投資対象は、日経平均株価やアメリカのS&P500などに連動するインデックスファンドが中心。人気の米国株式や、REITは対象外です。
年間の非課税投資枠が40万円と少なく、毎月1回の積立に換算すると3万円強となります。より多くの資金をNISAに回すには物足りない金額かもしれません。
NISA・つみたてNISAはデメリットしかないわけではない
一般・つみたてNISA両方には、デメリットだけでなく、メリットも存在します。
NISAは、より多くの国民に投資を始めるきっかけにしてもらおうと始まった制度。
長期的に積み立てることでリスクは減少し、分散投資を行うことで万が一に備えることが可能です。
デメリットばかりが強調されますが、メリットを頭に入れておくことも大切です。
下記の2つに分けて、それぞれのメリットをご紹介します。
- NISA(一般NISA)のメリット
- つみたてNISAのメリット
NISA(一般NISA)のメリット
NISA(一般NISA)のメリットは、以下の通りです。
- 全額を利益として受け取れる
- 非課税期間を延長できる
- 株式など、選択の幅が広い
NISA(一般NISA)は毎年120万円を上限として、5年間行えます。
つまり、5年間で600万円運用することができ、全額を利益として受け取れるわけです。しかも、5年間の非課税期間を延長することも可能。
株式、投資信託、ETF、REITなどを選ぶことができ、本格的に投資を始めたい初心者でも気軽に取り組むことができます。
つみたてNISAのメリット
つみたてNISAのメリットとして、下記の点が挙げられます。
- 少額から投資できる
- リスク分散ができる
- いつでも解約できる
つみたてNISAは、一般NISAと比べて少額から長期的に運用することができるため、より初心者向けの投資といえるでしょう。
投資期間が長ければ長いほどリスクが分散できるため、多少の価格変動があったとしても、影響は少なくて済みます。
コツコツと定期的に積み立てたお金は、いつでも解約が可能なため、運用初心者にも安心です。
NISA・つみたてNISAを始める際の注意点
NISAにはメリットもデメリットもあるため、絶対にやらない方が良いとはいえません。
メリットもデメリットも踏まえたうえで、何をすべきかよく考えることが大切です。
NISAを始めるにあたっては、以下の点に注意してください。
- 情報を多く集め、比較する
- 言われるままに手を出さない
- 無理をしない
NISA・つみたてNISAは証券会社だけでなく、銀行や保険会社でも取り扱っています。
まずはできるだけ多くの情報を集め、どこで取引を行うのが良いか考えることが大切です。
銀行や保険会社がすすめる金融商品をそのまま購入することは避けた方が無難。
無理をしない程度にコツコツと少額投資するのが賢明な選択だといえるでしょう。
NISA・つみたてNISAの失敗しないためのポイント
NISAをこれから始める人は、失敗したくないと思っているでしょう。
ここでは、失敗しないためのポイントを、下記の2つに分けてご紹介します。
NISA(一般NISA)のポイント
NISA(一般NISA)を失敗しないためのポイントとして、下記の3点があります。
- 世界経済の動きをチェックする
- 一時的な動きに一喜一憂しない
- 同じ商品を買い増しする
一般NISAの運用期間は5年間です。短期的には一時的な変動で損をすることがあったとしても、長期的に見ると上昇するタイミングがあります。
世界経済の動きに関心を持ち毎日チェックすることで、上昇するタイミングを見極めることが可能です。
価格の変動に一喜一憂しないことも大切だといえるでしょう。
さらに一時的に値下がりした時点で、同じ商品を買い増しするのも効果的です。
つみたてNISAのポイント
つみたてNISAを失敗しないためのポイントは以下の通りです。
- つみたてNISAをやり続ける
- 積立金額を増額する
- どの金融機関で積み立てるかを決める
つみたてNISAは年間40万円までの積立投資による利益が非課税となり、20年間の長期運用が可能です。
証券会社や銀行、保険会社などで取り扱っているのですが、金融機関によっては扱う商品が限定されます。
つみたてNISAの口座をどこで開設するか慎重に選びましょう。
投資はコツコツやり続けることが大切。また、剰余資金で行うのが鉄則ですが、ある程度余裕が出てきたときは、積立金額を増額するのも失敗しないポイントとなります。
まとめ
資産形成として注目が集まっているNISAは、損益通算や損失の繰り越しができないなど税法上のメリットが少なく、自分で売り時期を判断するなど、投資初心者にとってデメリットと感じる点もたしかにあります。
しかし、中長期的な視点から見るとメリットも少なくありません。
2024年以降、新しいNISAが始まりますので、これから始める人は新しいNISAになる可能性があります。
今のうちからNISAの仕組みを学び、投資を始めてみてはいかがでしょうか。