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NISAで非課税期間を過ぎた後、ロールオーバーすれば非課税で運用できる期間を延長することができます。ただ、実際に運用していくうえで、ロールオーバーを活用した方がいいのか迷う人も多いのではないでしょうか。
今回は、NISAのロールオーバーはするべきなのかという疑問に答えるとともに、ロールオーバーのやり方、さらには忘れたときの対応や新NISAになった際の取り扱いについても解説します。
NISAのロールオーバー(非課税期間延長)とは
NISAの制度にはつみたてNISAと(一般)NISA、ジュニアNISAの3種類があり、ロールオーバーが認められているのは、一般NISAとジュニアNISAです。ただ、ジュニアNISAについては2023年で終了することが決定しているため、ここでは説明を省略します。
一般NISAは年間120万円までの金額を最大5年間非課税で運用できる制度で、株式なども運用対象となっている点がつみたてNISAと異なります。
そして、一般NISAの場合、5年間の非課税期間が終了したら、
- 翌年の非課税投資枠に移管(ロールオーバー)する
- 課税口座に移管する
- 売却する
のいずれかを選択します。
NISAのロールオーバー可能金額に上限はありません。
その時の時価が120万円を超えている場合でも、全額を翌年の非課税投資枠に移せます。
2023年以降は新NISAへのロールオーバーとなる
現在の一般NISAの制度は2023年までと決まっています。そのため、金融商品を購入できるのは2023年までですが、2023年中に購入した金融商品についても5年間、つまり2027年までロールオーバーすることができます。
2024年以降は非課税対象および非課税投資枠が見直された、新NISAの制度に変更しますので、新しい制度のNISAへのロールオーバーになります。
新NISA でのロールオーバー制度
現在の一般NISAでは、非課税期間が終了した際に、その時点で保有している金額を全て非課税投資枠に移換できます。
しかし、新NISAでは、ロールオーバーの仕組みが若干異なりますので、注意が必要です。
一般NISAから新しいNISAへのロールオーバー
一般NISAで保有している株式や投資信託などについては、5年間の非課税期間終了後、新NISAの2階部分の非課税投資枠へロールオーバーすることが可能です。
ロールオーバー可能金額に上限はありませんが、2階部分の非課税投資枠である102万円を超える場合は、1階部分の20万円の非課税投資枠を使うことになります。
また、保有している株式や投資信託のうち、一定のものについては新NISAにロールオーバーできない点に注意が必要です。
さらに、新NISAの制度では、1階部分で購入した投資信託を、5年後(非課税期間終了後)につみたてNISAにロールオーバーできるようになりました。
ただし、その場合は、新NISAでの購入価格でロールオーバーされます。
NISAのロールオーバーのメリット
NISAのロールオーバーを行うメリットには、下記のようなものがあります。
- 非課税のまま運用できる金額が増える
- 最大10年非課税で運用可能
このメリットの内容について、以下で詳しく説明します。
非課税のまま運用できる金額が増える
保有している運用商品を新たに非課税枠で投資することで、非課税のまま運用できる金額が増える点がロールオーバーの1番のメリットです。さらに、非課税枠で運用中に売却益を得ても、課税されることはありません。
ロールオーバーを行うポイントは、「ロールオーバーできる金額に上限がない」ことです。
つまり、年間の非課税枠である120万円分を購入し、その商品の価格が120万円を超えて200万円に上がっていたとしても、超えた部分も合わせた200万円分全てロールオーバーでき、非課税で運用できます。
最大10年非課税で運用可能
NISAの非課税期間は最大5年間です。それをロールオーバーすることにより、さらに5年間非課税で運用でき、最大10年間非課税で運用できることになります。
もちろん、その間に保有している株式から配当金を受ける場合も、非課税で受け取れます。
NISAはつみたてNISAと異なり、株式をはじめさまざまな商品を購入できます。
もちろん安定運用を目指す商品も購入できますので、それらを組み合わせ、自分の好きな配分割合で運用を行えます。
運用商品の選択肢が多く、最大10年間非課税で運用できる制度は、ぜひ活用するべきでしょう。
NISAのロールオーバーのデメリット
NISAのロールオーバーを行うにあたり、デメリットもあります。
主に下記のようなものがありますので、メリットと合わせて内容をしっかりと理解しておきましょう。
- ロールオーバー分は翌年に新規投資ができない
- 値下がりしている場合は非課税の意味がない
- 別の金融機関のNISA口座へのロールオーバーは不可
ロールオーバー分は翌年に新規投資ができない
まず、ロールオーバーを行うと、翌年に利用できる非課税枠がその分少なくなります。
結果として、翌年の新規投資可能額が減ってしまいます。
上でロールオーバー可能金額に上限はないと述べましたが、年間の投資額である120万円とその利益分50万円の合計170万円をロールオーバーすると、翌年は一般NISA枠で投資商品を購入できません。
また、100万円をロールオーバーした場合は、翌年の非課税投資額が20万円までに下がってしまいます。
とりあえず保有しておくだけ、という考えならいいのですが、翌年も新たに商品を購入しようと思っているなら、その枠を確保しておく必要があります。
値下がりしている場合は非課税の意味がない
ロールオーバーすることでメリットを受けられるのは、現在保有している運用商品が値上がりしている場合です。
逆に値下がりしているなら、非課税投資枠で保有している意味がありませんので、課税口座に移して様子をみるなど、別の方法を考えましょう。
NISA口座における損失は、ほかの口座との損益通算および繰越控除の対象外です。
つまり、「損失が出ているものをロールオーバーしても、何のメリットも得られない」という点はしっかりと覚えておく必要があります。
別の金融機関のNISA口座へのロールオーバーは不可
ロールオーバーは同じ金融機関において、翌年のNISA口座が開設されていなければ行えません。
NISA口座は年の途中で別の金融機関に変更できますが、ロールオーバーできるのは同じ金融機関で購入した部分についてのみです。
変更前の口座で購入した分については、変更後のNISA口座でロールオーバーできない点に注意が必要です。
ロールオーバーをする?しない?迷ったときのポイント
ロールオーバーした方がいいのかどうか迷ったときには、以下のポイントを押さえながら検討してみましょう。
ロールオーバーした方がいいケース
- 保有している運用商品の成果がよく、これからの値上がりも期待できる場合
- 保有している運用商品に損失がでているものの、一時的なもので、今後回復し値上がりが期待できる場合
今後の値上がりが期待できる場合は、非課税枠を活用することで、運用益を非課税で受け取れる可能性が大きくなります。
このようなケースでは、ロールオーバーした方がいいといえるでしょう。
ロールオーバーしない方がいいケース
- 5年間の非課税期間満了後に値下がりが予想される場合
- 翌年、購入したい運用商品がある場合
逆に値下がりが予想される場合や、翌年購入したい運用商品がある場合は、ロールオーバーしない方がいいでしょう。課税口座に移すなどの方法を考えましょう。
NISAのロールオーバーのやり方
現行のNISAのロールオーバーのやり方は以下の通り。それぞれの期日は金融機関によって異なります。
いつまでに書類を取り寄せ、いつまでに提出するのか、事前に確認しておきましょう。
- 移換依頼書を入手する:NISA口座を解説している金融機関に対し、インターネットや電話で申し込みましょう。入手の目安は9月頃です。
- 翌年のNISA口座開設状況を確認する:今と同じ金融機関で翌年のNISA口座が開設されているか確認します。サイトにログインすることで簡単に確認できますので、11月くらいまでには確認しておきましょう。
- 移換依頼書の提出:取り寄せた移換依頼書に必要書類を添付して金融機関に提出します。金融機関によって提出期限が異なりますので、期限がいつまでなのかを確認し、余裕を持って提出しましょう。
中には、手続きが全てインターネットで行える金融機関もありますが、それぞれに申込期日が設定されていますので、早目に確認し、取り掛かるようにしてください。
新NISAへロールオーバーする手順については、まだ公表されていません。ただ、ロールオーバーができることは決まっているので、来年の9月までには手続きの内容が公表されることが予想されます。
NISAのロールオーバーを忘れた場合
NISAのロールオーバーをしなかった場合、自動的に課税口座に移されます。そして、いったん課税口座に移されてしまうと、NISA口座に戻すことはできません。
ロールオーバーしようと思っているなら、必ず期限内に手続きを行いましょう。
まとめ
NISAには、非課税期間終了後も非課税で運用できる「ロールオーバー」という仕組みが設けられています。
保有している運用商品に利益が出ており、追加で購入する予定がなければロールオーバーを利用し、非課税での運用を続ける方がいいでしょう。
現行のNISA制度は、2024年に新しい新NISA制度に変更し、内容も少し変わります。
ロールオーバーの仕組みも変わりますので、内容をしっかりと理解し、非課税制度を利用しながら運用を行っていきましょう。