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ふるさと納税と一緒に活用できる制度として、住宅ローン控除があります。
併用することで税額控除額のアップも見込まれる一方、申請方法によっては控除額が変わる可能性もあります。
2つの制度を併用する上でのポイントなどをシミュレーションも交えて紹介するので、参考にしてください。
ふるさと納税と住宅ローン控除
ふるさと納税と住宅ローン控除はともに税額控除が受けられる制度のため、併用することで控除額のアップを図れます。
ふるさと納税は居住地以外の自治体に寄附として納税できる仕組みで、自己負担金を除く寄附金が所得税や住民税の控除対象になります。
最低自己負担金として2000円かかるほか、控除額は年収などに応じて上限があります。
住宅ローン控除は床面積50平米以上の住宅を購入した際に所得税または住民税から10年間の税額控除が受けられる仕組みで、年間所得3000万円以下の人に対象が限られます。
2つの制度は併用可能で、税額控除の幅を広げる有効な手段になります。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は地域活性化のための支援をしたいと思う自治体に対して寄附する仕組みで、自己負担分2000円を除く寄附金が税額控除の対象になります。
寄附を贈った自治体から返礼品がもらえるというメリットも付いてくるため、人気が高いです。
ただし「寄附した金額が税額控除で戻ってくる」という仕組みのため、そもそも減税や節税になっているわけではありません。
また年収などに応じて控除額には上限があるほか、年間の寄附先が6自治体以上になると確定申告が必要になります。
住宅ローン控除の仕組み
住宅ローン控除は10年以上のローンを組んで住宅を購入した際に受けられる税額控除の制度で、正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。
税額控除されるのはその年のローン残高の1%で、最大40万円を上限に所得税から控除されます。
所得税から控除しきれない場合、所得税の課税総所得金額の7%を限度に最大13万6500円が住民税から控除可能です。
なお、住宅取得の対価や費用に含まれる消費税率が10%である場合は「住宅の取得等が特別特定取得に該当」するため、控除期間は13年になります。
また新築後20年以内や大規模修繕などの条件を満たしていれば中古住宅の購入や増築・リフォームをする場合にも、住宅ローン控除が適用されます。
住宅購入には高額な費用がかかるため、約10年も税額控除が受けられるという面からも活用しておきたい制度となっています。
ただし住宅ローン控除を受ける場合、1年目は確定申告をしなければいけません。
No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用ポイント
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する際には、申請方法に着目することが重要です。
具体的には確定申告をする場合と、確定申告をせずにふるさと納税の寄附金控除を受ける「ワンストップ特例制度」を利用する手段があります。
併用活用するために、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 申請方法で控除額が変わる場合がある
- ワンストップ特例制度の利用は住宅ローン控除2年目から
申請方法で控除額が変化するケースも
確定申告をする場合、ふるさと納税の控除額の影響で所得税額が変わってしまい、想定される控除額に変化が出るケースもあります。
確定申告をする場合、所得から基礎控除のほか、ふるさと納税の自己負担分を除く寄附金も控除されます。
そのためふるさと納税の控除額の分だけ所得が低くなり、所得税も減額されます。
所得税が住宅ローン控除よりも少なくなれば、その分控除しきれなくなります。
例えば所得税が8万円、住宅ローン控除額が25万円の場合17万円分控除できなくなります。
所得税が控除しきれなかった場合、前述した通り住民税から控除可能です。
ただし上限(所得税の課税総所得金額の7%、最大13万6500円)があるため、結果的に住宅ローン控除が満額引かれなくなる可能性も出てきます。
一方ワンストップ特例制度を利用する場合、ふるさと納税の控除額は所得税には影響しません。
同じく住宅ローン控除額が25万円だったとしても所得税が15万円以上あれば、控除しきれなくなる額も10万円以下で済みます。
その分住民税から引くことになりますが、上限額に引っかからず満額控除できる可能性が高くなります。
ワンストップ特例制度の利用は住宅ローン控除2年目から
ワンストップ特例制度は前述した通り有利な点がありますが、住宅ローン控除を受ける際に初年度は確定申告が必要なため、1年目は利用できません。
ワンストップ特例制度は確定申告に向けての煩雑な手続きをせずに、寄附金控除を受けられる便利なシステムです。
確定申告が不要な給与所得者であれば、年間のふるさと納税寄附先が5自治体におさまっている場合は利用できます。
しかし住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合は、利用は2年目からになります。
ふるさと納税と住宅ローン控除併用のシミュレーション
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合、「住宅ローンを満額控除できるかどうか」シミュレーションしておいた方が良いです。
前述した通り、満額控除ができなくなるケースもあるためです。
以下の事例は、確定申告を行うケースとワンストップ特例制度を使って確定申告しないケースがあります。
それぞれのケースごとに、想定される控除額を割り出してみましょう。
- 年収400万円/共働き/住宅ローン控除20万円(1年目)
- 年収600万円/配偶者あり/住宅ローン控除30万円
- 年収800万円/配偶者・子(16~18歳)あり/住宅ローン控除40万円
年収400万円/共働き/住宅ローン控除20万円(1年目)
住宅ローン控除1年目のため、確定申告をする必要があります。シミュレーションにより、ふるさと納税の上限控除額は4万2100円が想定されます。
まず、年収からふるさと納税の上限控除額や基礎控除などを引いて課税所得金額を割り出し、所得税を9万円程度に想定します。
住宅ローン控除20万円は所得税9万円程度から控除しますが、控除しきれなかった11万円程度は住民税からも引くことになります。
ただし、住民税からの控除には上限(所得税の課税総所得金額の7%、最大13万6500円)があるため満額控除できるかどうか、微妙なケースになります。
住民税からはさらに、ふるさと納税の上限控除額4万2100円も控除されます。
年収600万円/配偶者あり/住宅ローン控除30万円
ワンストップ特例制度を利用できるケースに当たります。想定されるふるさと納税の上限控除額は、6万9000円。
前述した通り、ふるさと納税の控除額は所得税額に影響しません。
年収から配偶者控除などを引いた課税所得金額から算定される所得税は、18万円程度。
住宅ローン控除30万円を所得税から控除し、控除しきれなかった12万円程度を住民税から引きます。
先の事例と同じく、上限(所得税の課税総所得金額の7%、最大13万6500円)に引っかかった場合は満額控除できなくなる可能性はあります。
住民税からはさらに、ふるさと納税の上限控除額6万9000円が控除されます。
年収800万円/配偶者・子(16~18歳)あり/住宅ローン控除40万円
こちらもワンストップ特例制度を利用できます。想定されるふるさと納税の上限控除額は12万200円で、所得税額には影響しません。
年収から配偶者控除などを引いた課税所得金額から算定される所得税は36万円程度。
住宅ローン控除40万円分を所得税から控除し、控除し切れなかった4万円程度は住民税から引かれます。
上限額よりも少額となるため、住宅ローンは満額控除されます。
また住民税からさらに、ふるさと納税の上限控除額12万200円が控除されます。
ふるさと納税と住宅ローン控除併用時の計算方法
前述した通り、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合は以下のやり方があり、計算方法も異なります。
ワンストップ特例制度を利用した場合、ふるさと納税と住宅ローン控除いずれの控除額も減少せずに済みます。
確定申告をする場合
- 1. 所得からふるさと納税の自己負担分を除く寄附金や基礎控除などを引く
- 2. 1で導き出された課税所得金額から、所得税を割り出す
- 3. 所得税から住宅ローン控除額を引く。控除しきれなかった場合、課税総得金額の7%(最大13万6500円)を上限に住民税からも控除
- 4. 住民税からふるさと納税の自己負担分を除く寄附金を控除
ワンストップ特例制度を利用
- 所得税から住宅ローン控除額を控除
- 所得税から控除しきれなかった場合、課税総所得金額の7%(最大13万6500円)を上限に住民税からも控除
- 住民税からふるさと納税の自己負担分を除く寄附金を控除
まとめ
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用するとダブルの税額控除を受けることができます。
確定申告をする必要のない人はワンストップ特例制度を利用すれば、控除額に漏れが発生する可能性も低くなります。
ふるさと納税や住宅購入を検討している方は、2つの制度の併用も視野にシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。