南部鉄器は、岩手県が誇る伝統工芸品。
熟練の職人たちにより脈々と受け継がれてきた鉄鋳物は、芸術性と実用性を兼ね備えた逸品です。
以前は無骨な黒い鉄瓶のイメージが強かった南部鉄器ですが、最近はカラフルでデザイン性の高いものも多く、おしゃれなキッチン雑貨として世界的にも注目を集めています。
今回は、そんな南部鉄器の特徴や人気の理由をご紹介。
使い方やお手入れ方法についても詳しく解説します。
岩手の名産品・南部鉄器の魅力とは?
そもそも、南部鉄器とはどんな製品のことを指すのでしょうか?
まずは南部鉄器の歴史や作り方など、基本的な情報をチェックしてみましょう。
南部鉄器の産地と歴史
南部鉄器とは、岩手県の盛岡市と奥州市水沢地域で作られる鉄鋳物のこと。
鉄鋳物とは、鉄を高温で溶かしてから型に流し込んでつくられた製品を指します。
2ヶ所の産地は、それぞれが異なる起源と歴史を持つことでも有名です。
盛岡の南部鉄器
盛岡の南部鉄器は、17世紀中ごろ、盛岡藩主が京都から茶釜師を招き、茶の湯釜をつくらせたのが始まり。
「南部鉄器」の「南部」は、当時の盛岡藩が「南部藩」と呼ばれていたことに由来します。
鉄資源が豊富な盛岡ではその後も鋳物産業が発展し、のちに茶の湯釜を小ぶりにした鉄瓶が誕生。
鉄瓶は、現在も南部鉄器の代名詞的存在となっています。
奥州(水沢)の南部鉄器
水沢の南部鉄器は、平安時代末期に藤原清衡が滋賀から鋳物師を招き、鍋や釜、農機具などの生活用品をつくらせたのが始まり。
寺社仏閣の部品をつくって平泉文化を支えたほか、戦国時代には大砲の弾などの武器も製造されていました。
芸術色の強い盛岡の製品に比べると、水沢の南部鉄器は、大衆向けの日用品を中心に発展したといわれています。
南部鉄器の製造方法|IH調理器では使える?
南部鉄器の製造は、デザインに基づいて鋳型をつくるところからスタート。
鋳物砂で内部に製品と同じ形の空洞ができるように鋳型をつくり、完成したら1300~1500℃に溶かした鉄を流し込みます。
冷えて固まった製品を鋳型から取り出し、研磨や着色などの仕上げをして完成です。
鋳型には、つくった型を高温で焼いて固める「焼型」と、焼きの工程がない「生型」の2つの種類があります。
焼型の製品はすべての工程が手作業で行われていて、厚みが薄いことが多いため、IH調理器での使用には不向きな場合も。
生産性を重視し、一部工程に機械を用いている生型の製品には厚みがあるので、IH調理器での使用にも適しているといわれています。
外側と内側の塗装の種類
南部鉄器の表面には、サビ止めのためにさまざまな塗料が使われています。
伝統的には漆の樹液による「漆焼付け」が行われてきましたが、漆の供給不足に伴い、カシューナッツから抽出された塗料を使う「カシュー焼付け」も主流に。
製品によってはシリコンで塗装されているものもあります。
南部鉄器はなぜ人気?5つの理由
日本国内のみならず、海外でも人気を集めている南部鉄器。
その人気の理由はどこにあるのでしょうか?
長く使える一生モノ
陶器などと比べて格段に割れにくい南部鉄器は、とにかく丈夫で長持ち。
大切に扱えば何代も使い続けることができ、使い込むほどに奥深い味わいが楽しめるのも魅力です。
白湯もまろやかで優しい味に
鉄が水のカルキを吸着するので、南部鉄器で沸かしたお湯はまろやかで口あたりが良いことで有名です。
いつものお茶やコーヒーも、南部鉄器で淹れると美味しさがアップします。
鉄分溶出による健康効果
南部鉄器で調理したお湯や料理には、鉄器から溶け出した鉄分が含まれています。
身体に吸収されやすい二価鉄(ヘム鉄)なので、鉄分の効率的な摂取や貧血予防にも効果的です。
保温性が高く使いやすい
鉄は一度熱すると冷めにくく、保温性が高いのが特徴です。
厚みのある南部鉄器はとくにたくさんの熱を蓄えるので、水や食材を入れても温度が下がりにくく、調理中に温度ムラができることもありません。
上品でおしゃれ
南部鉄器といえば重厚で深みのある味わいが魅力ですが、なかには現代の暮らしに溶け込むスタイリッシュな製品も数多くあります。
定番の黒い鉄瓶がカラフルに変身したカラーポットは、欧州などでも人気。
海外向けの製品も盛んに開発されています。
南部鉄器の種類と用途
鉄瓶をはじめとする生活用品から雑貨類まで、南部鉄器にはさまざまな種類の製品があります。
ここでは、現在も広く親しまれている製品をまとめました。
鉄瓶
南部鉄器を代表する製品といえば鉄瓶。
やかんやケトルなどと同じように、直接火にかけてお湯を沸かすことができる道具です。
熱い鉄瓶を置くときに使う瓶敷きとのコーディネートも楽しめます。
急須
見た目が鉄瓶と似ていて混同されやすい急須は、内面がホーロー加工されていたり、茶こしが入っていたりと、お茶を淹れることに特化した道具です。
鉄瓶とは異なり、直接火にかけることはできません。
フライパン・鍋
南部鉄器のフライパンや鍋は、煮物から焼き物、揚げ物までさまざまな料理に大活躍。
表面の細かい凹凸のおかげで焦げ付きにくく、じっくり均一に火が入るので、「いつもの料理が美味しくなる」と評判です。
南部鉄器のたこ焼き器や卵焼き器、ホットサンドメーカー、すき焼き鍋、中華鍋、炊飯器(ご飯鍋)なども人気があります。
風鈴
「南部風鈴」と呼ばれる南部鉄器の風鈴は、ガラスの風鈴には出せない、高く澄んだ音色が特徴。
産地の水沢駅には毎年夏になるとたくさんの南部風鈴が飾られ、「風鈴駅」とも称されています。
皿やカップなどの食器類
ステーキ皿や酒器、マグカップ、タンブラーなど、南部鉄器ならではのシックな風合いを活かしたテーブルウェアも人気。
保温性が高いので、料理や飲み物を熱々のままいただくことができます。
鉄玉子
玉子型の南部鉄器・鉄玉子は、お湯を沸かすときやご飯を炊くときに入れるだけで、手軽に鉄分補給ができる製品。
なすの漬物や黒豆煮の色を鮮やかにしたいときにも役立ちます。
簡単お手入れ!南部鉄器の正しい使い方
「南部鉄器を使ってみたい」と思っていても、「お手入れが面倒臭そう」という理由でなかなか手が出ない人も多いのではないでしょうか?
実際には、一度使い方を覚えてしまえば、何も難しいことはありません。
ここでは、南部鉄器の鉄瓶、急須、フライパン・鍋の使い方やお手入れ方法をご紹介します。
【鉄瓶】使い始めは「ならし」が必要!空焚きに注意
使い始め
サビの発生を抑えるためには、できるだけ早く鉄瓶の内部に湯垢の膜を作ることが重要。
使い始めは、湯垢ができやすい硬水のミネラルウォーターでお湯を沸かす「ならし」の作業を繰り返しましょう。
毎日行うと、10日から2週間ほどで白い湯垢が付着してきます。
洗い方・手入れ方法
使い終わったら鉄瓶が熱いうちにお湯を移し、その都度余熱で内部をしっかりと乾かしましょう。
ごく弱火で空焚きして乾かしても良いですが、長時間の空焚きはサビや破損の原因になります。
鉄瓶の内部には触らないのが基本ですので、スポンジで洗ったり、たわしでこすったりするのは厳禁。
外側は乾いた布巾などで軽く拭くだけでOKです。
サビが出てきてしまったら
使用後の乾燥が不十分だったり、水を入れたまま放置したりするとサビが発生することも。
お湯の濁りやサビの臭いが気になる場合は、茶葉を入れて30分ほどお湯を沸かすと改善します。
【急須】ホーロー加工を傷つけずに洗おう
使い始め
内部を軽くすすぐだけで、すぐに使い始めることができます。
鉄瓶のような「ならし」は不要です。
洗い方・手入れ方法
使い終わったら内部を水で軽く洗い、乾いた布巾などで水分を完全に拭き取ります。
洗剤やたわしの使用は避け、内部のホーロー加工を傷つけないようにしましょう。
サビの原因になるため、お湯やお茶を長時間入れたままにしないでください。
【フライパン・鍋】まずは油を塗って空焼きを
使い始め
フライパンや鍋を使い始めるときは、焦げ付きやサビの発生を防ぐ「シーズニング」の作業が必要です。
軽く洗って水分を飛ばしてから油を塗って空焼きし、全体に油を馴染ませましょう。
そのまま野菜くずなどを炒める方法も有効です。
洗い方・手入れ方法
洗剤を使うと表面に馴染ませた油が取れてしまいますので、お湯で汚れを洗い流すだけにしましょう。
やむを得ず洗剤を使う場合は、再度シーズニングをして油を馴染ませてください。
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