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ハッシュドビーフとハヤシライスは、見た目や味がよく似ていて、違いがわかりにくい料理です。
どちらも、細切りにした牛肉と野菜をソースで煮るという共通点があるため、混同されることもあります。
しかし、ベースになるソースや料理の発祥、煮込み時間など、いくつかの違いがあります。
この記事では、2つの料理の違いを詳しく説明します。
ハッシュドビーフとハヤシライスの違いと共通点

ハッシュドビーフとハヤシライスの一番の違いは、何といってもルーの味わいです。
煮込む際のベースとなるソースが違うため、味わいにも差が出るのです。
以下に、ハッシュドビーフとハヤシライスの主な違いをまとめます。
料理 | ハッシュドビーフ | ハヤシライス |
---|---|---|
ルーのベース | デミグラスソース | トマトソース・ケチャップ |
煮込み時間 | 比較的長い | 比較的短い |
味 | 濃厚でコクがある味わい | 甘めで親しみやすい味わい |
ハッシュドビーフは、トマトソースを使う場合もありますが、一般的にはデミグラスソースがベースです。長い時間をかけて煮込まれ、濃厚でコクがある、やや大人向けの味わいになります。
ハヤシライスは、トマトソースやケチャップを使った甘めのルーで、子どもをはじめ、どんな年代でも親しみやすい味です。
このようにベースとなるソースが違う一方、以下のような点は、ハッシュドビーフとハヤシライスで共通しています。
- 薄切りの牛肉や玉ねぎなどが主な材料。
- 煮込む調理法で作る。
- ご飯にかけて食べるのが一般的。
ハッシュドビーフとは?

ハッシュドビーフは、薄切りにした牛肉を、デミグラスソースをベースにして煮込んだ料理です。
濃厚な味わいで日本人に親しまれており、家庭やレストランでよく食べられている洋食のひとつです。
主にご飯と相性が良いですが、パンやパスタ、マッシュポテトと合わせることもあります。
赤ワインやデミグラスソース缶を使って本格的に作る人もいますが、市販のルーを使うと手軽に作れます。
西洋発祥の日本で独自に発展した料理
ハッシュドビーフは西洋で発祥し、日本で独自のスタイルへと発展しました。
料理名にある「ハッシュ(hash)」とは、細かく切るという意味で、ハッシュドビーフは元々、細かく切った牛肉を使う料理であることを示しています。
西洋のハッシュドビーフは、刻んだ野菜と肉を煮込んだ素朴な料理であり、デミグラスソースを使用した料理ではありません。
そのため、西洋から伝わったハッシュドビーフが、日本でデミグラスソースを使うようにアレンジされたものと考えられています。
現在の日本のハッシュドビーフに近い料理として、ローストビーフとデミグラスソースを使ったシチューが、明治時代中期の1888年の料理書に記されています。
一般的にはデミグラスソースがベース
ハッシュドビーフは、一般的にデミグラスソースを使って煮込んで作る料理です。
デミグラスソースは、小麦粉とバターを炒めたブラウンルーに、フォンドヴォー(牛の骨付き肉と野菜を煮込んで作るだし)や赤ワインを加え、長時間かけて煮込んで作られます。
本格的な洋食に欠かせないソースで、コクの強さが特徴です。
そのデミグラスソースをベースに使うハッシュドビーフも、濃厚でやや大人向けの味わいになります。
ハッシュドビーフは、ご飯にかけることがほとんどですが、オムライスのソースやドリアにアレンジもできます。
ハヤシライスとは?

ハヤシライスは、牛肉や玉ねぎ、マッシュルームなどの具材をトマトベースのソースで煮込み、ご飯にかけて食べる洋食です。
少し甘酸っぱい味わいが特徴で、コクが強く濃厚なハッシュドビーフに比べ、親しみやすい料理といえます。
家庭でも、市販のルーを使えば手軽に調理できます。
日本(東京)発祥の洋食
ハヤシライスは、洋食文化が広まった明治時代以降の日本で生まれました。
ハヤシライスの発祥や名前の由来には、いくつかの説があります。
書店「丸善」の創業者である早矢仕有的氏が考案したとする説が、とくに有名です。
ほかに、東京の「上野精養軒」の林シェフが、従業員のまかない用に考案したのが始まりとする説などもあります。
また、「ハヤシライス」という名前は人名には由来せず、「ハッシュドビーフ・ウィズ・ライス」がなまったものとする説もあります。
いずれの説も決定的な証拠はなく、ハヤシライスの正確な起源は明らかになっていません。
一般的にはトマトソースがベース
ハヤシライスは、一般的にトマトソースやケチャップをベースとしたルーで作られます。
具材には、牛肉と玉ねぎのほかに、マッシュルームを加えることも多いのが特徴です。
濃厚な味わいのハッシュドビーフに比べると、甘みのある親しみやすい味わいで、煮込み時間もやや短い傾向があります。
ただし、老舗洋食店などでは、より深いコクを出すために、ハヤシライスにもデミグラスソースを使うことがあります。
ハッシュドビーフと同じように、ご飯にかけて食べるのが定番で、オムライスのソースやドリアなどへのアレンジも可能です。
その他のよく似た料理との違い

ハッシュドビーフやハヤシライスに似た料理として、レストランのメニューでもよく目にする、「ビーフシチュー」や「ビーフストロガノフ」があります。
これらの料理には、どのような違いがあるのか順番に見ていきましょう。
ビーフシチューとは?
ビーフシチューは、イギリスで発展したとされる、角切りの牛肉や野菜をブイヨン・トマト・赤ワインでじっくり煮込んで作る料理です。日本では、デミグラスソースもよく使われます。
19世紀に日本に伝わり、明治初期からレストランで提供されていたといわれています。
ハッシュドビーフやハヤシライスと違い、角切りの牛肉や大きめの野菜を長時間煮込んで作るのが特徴です。
ボリューム感があり、柔らかくなった牛肉や野菜のとろけるような食感が楽しめます。
ビーフストロガノフとは?
ビーフストロガノフはロシア発祥の料理で、牛肉・玉ねぎ・マッシュルームなどの材料をスープで煮込み、仕上げにサワークリームを加えるレシピが一般的です。
サワークリームを加えることで、白っぽい見た目とほのかな酸味が生まれます。この点が、これまで紹介してきたほかの料理との大きな違いです。
ただし、日本ではデミグラスソースなどを加えてアレンジされることも多く、本来の特徴が薄れていることもあります。
料理名の由来は、ロシアの名家「ストロガノフ家」にちなんでいるというのが通説です。
まとめ
ハッシュドビーフとハヤシライスは、どちらも牛肉や野菜を細切りにして、煮込んで作る洋食です。
しかし、ベースとなるソースが異なり、味わいにも違いが生まれます。
- ハッシュドビーフ
主にデミグラスソースを使用し、コクが強く濃厚な、やや大人向きの味わい。 - ハヤシライス
主にトマトソースやケチャップを使用し、甘みのある親しみやすい味わい。
西洋から伝わったハッシュドビーフは、日本でデミグラスソースを使う発展を遂げました。一方、ハヤシライスは、洋食文化が広まった日本で生まれた料理です。
よく似た料理では、「ビーフシチュー」は大きめの具材を長時間煮込むことが、「ビーフストロガノフ」はサワークリームによる白っぽさと酸味が特徴です。
紹介した違いを参考に、ぜひ気分やシーンに合わせた洋食を楽しんでみてください。