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税金は給与から自動的に差し引かれるため、会社員には節税の選択肢がないと思いがちですが、実はそうではありません。
会社員でも利用できる税金対策の方法や仕組みを知ることで、少しでも税金の負担を軽くできる可能性があります。
この記事では、会社員や個人事業主が実践できる節税対策や注意点をご紹介します。
実際に取り入れられる方法がないか確認しながら、読み進めてみてください。賢く活用し、より豊かな生活を手に入れましょう。
節税対策・税金対策とは
税金の手続きや支払いは、勤務先の会社が代行しているため、納税しているという実感がないという人も多いのではないかもしれません。
会社員は給料から所得税、住民税が毎月差し引かれています。
- 所得税:国に支払う税金。収入に応じて変わる
- 住民税:地方自治体に支払う税金。前年の所得に基づいて計算する。
基本的に納税額は会社から支払われる給料から、所得控除を差し引いた額(課税所得)を元に計算します。
そのため会社員が節税するためには、該当する所得控除を活用することが大切です。
所得控除は自動的に適用されないため、年末調整や確定申告により申請する必要があります。
これにより払いすぎた税金を還付金として受け取れるようになっています。
会社員などの個人ができる節税対策
上記で紹介した所得控除にはいくつか種類があるため、それぞれの要件に該当しているかを確認しましょう。
所得控除のほかに、税金対策として有利な制度を利用することも重要ですが、これらも自動的に適用されるわけではないため、情報を知っているかが大切です。
会社員などの個人ができる節税対策には以下のようなものがあります。
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 医療費控除
- 生命保険控除
- 地震保険料控除
- 特定支出控除
- 住宅ローン控除
- iDeCo(確定拠出年金)
- NISA(少額投資非課税制度)
それぞれの控除や制度の概要や利用時の注意点を紹介します。
扶養控除
扶養控除は、親や子供など家族を養っている人に対して、税金の負担を軽くすることを目的の制度です。
ただし、本人と生計を同一にする16歳以上の親族であるなど、扶養控除が適用される家族の条件が定められています。
扶養家族の要件は以下の通りです。
扶養親族の条件
- その年の12月31日の時点で16歳以上であること
- 配偶者以外の親族であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 扶養親族の年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は103万円以下)であること
- 青色申告者の事業専従者としてその年給料を受け取っていないこと、または、白色申告者の事業専従者でないこと
また扶養している家族の年齢によって、控除される額は以下のように定められています。
区分 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族 | 63万円 | |
老人扶養親族 | 同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
参照元:国税庁|No.1180 扶養控除
老人扶養親族の場合、病気で入院しているなどの理由で長期に渡り納税者と別居している場合は、同居扱いとなりますが、老人ホームなどに入所している場合は同居扱いにはならないため注意しましょう。
扶養控除を適用するには、扶養家族の収入証明書や扶養状況を正確に把握し、必要な書類を整えることが重要です。
虚偽の申告や誤った情報で控除を受けると、税務署からの指摘や追徴課税のリスクがあります。
配偶者控除
配偶者控除は、配偶者を養っている家計の負担を軽減するための制度です。配偶者控除の対象者は以下の条件を満たしている必要があります。
配偶者控除の対象者
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係は対象外)
- 納税者本人と生計を同一にしていること
- 配偶者の年間合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は年間103万円以下)であること
※配偶者が年収がこの額を超えた場合は、配偶者特別控除が適用される可能性があります。 - 青色申告者の事業専従者としてその年給料を受け取っていないこと、または、白色申告者の事業専従者でないこと
納税者本人の年収や配偶者の年齢によって、控除額は以下のとおり異なります。
控除を受ける納税者本人の 合計所得金額 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 (配偶者が70歳以上) | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
配偶者控除を受ける際には、配偶者が上記の要件を満たしていることに加え、納税者本人の年収が1,000万円以下である必要があります。
医療費控除
医療費控除は、本人や生計を一にしている配偶者やその他の親族が支払った年間の医療費が10万円(年収200万円未満の場合は所得の5%)を超えた場合に、その超過分を所得から差し引ける制度です。
医療費控除額の計算は以下のとおりです。
医療費控除の金額=実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円
※最高200万円
参照元:国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
医療費控除の対象となる費用とならないものがあるため、以下の表を参考にしてください。
控除を受けるには、領収書や明細書などの書類を揃えておく必要があるため、保管しておくようにしましょう。
医療費控除の対象となるもの・ならないもの
対象になる費用 | ・医師・歯科医師による診察費、治療費 ・治療・療養に必要な医薬品の購入費 ・通院にかかる交通費 ・松葉杖や義肢の購入費 ・出産費用 |
---|---|
対象にならない費用 | ・医師や看護師への謝礼 ・未払保険料 ・自家用車のガソリン・駐車場代 ・差額ベッド代 ・美容整形の費用 ・健康増進のための費用 ・コンタクトやメガネにかかる費用 |
医療費控除の対象にならない健康の保持増進および疾病予防のために医薬品を購入した場合、購入費の1万2,000円を超える金額を所得から控除できる「セルフメディケーション税制」もあります。
対象となる医薬品は定められているため、パッケージ表示やレシート、厚生労働省のホームページから確認しましょう。
ただし、セルフメディケーション税制と医療費控除の併用はできないため、控除額が大きくなる方を利用すると税金対策として効果的です。
生命保険控除
生命保険料控除は、生命保険や医療保険、個人年金保険に加入している場合に、支払った保険料の一部を所得から差し引ける制度です。
控除には上限額が以下のように設定されており、全額が控除されるわけではありません。
新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超、40,000円以下 | 支払保険料等×1/2 +10,000円 |
40,000円超、80,000円以下 | 支払保険料等×1/4 +20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超、50,000円以下 | 支払保険料等×1/2 +12,500円 |
50,000円超、100,000円以下 | 支払保険料等×1/4 +25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
保険会社から送付される生命保険料控除証明書を年末調整の際に提出することで、保険料に応じた控除が受けられます。
保険契約の種類や支払額に応じて、控除額が変動するため、保険内容をよく確認しましょう。
地震保険料控除
地震保険料控除とは、住居用の建物や家財に対する火災保険に加入している場合、地震保険に支払っている保険料の全額(最大5万円)を所得から差し引くことができる制度です。
地震保険料控除の控除額は、保険の種類によって以下のように設定されています。
区分 | 年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
---|---|---|
(1)地震保険料 | 50,000円以下 | 支払金額の全額 |
50,000円超 | 一律50,000円 | |
(2)旧長期損害保険料 | 10,000円以下 | 支払金額の全額 |
10,000円超、20,000円以下 | 支払金額×1/2+5,000円 | |
20,000円超 | 15,000円 | |
(1)・(2)両方が ある場合 | ― | (1)、(2)で計算した金額の合計額 (最高50,000円) |
地震保険料控除を受ける場合には、年末調整時に保険会社に発送される地震保険料控除証明書が必要です。
特定支出控除
会社員は申告すべき経費などないと思われがちですが、業務に必要な支出を自己負担で支払った場合には、特定支出控除により、所得より差し引くことができます。
特定支出控除として申告できる費用には、以下のようなものがあります。
- 交通費:業務上必要な移動にかかる交通費(例:出張や顧客訪問の電車代やガソリン代)
- 研修費:職務に関連するセミナーや研修の受講料
- 必要な教材費:業務に必要な書籍や資料の購入費用
- 資格取得費:業務に必要な資格の取得にかかった教材費や受験費用
- ユニフォームや作業服:業務で必要な特定の衣類や作業服の購入費
- 通信費:業務用の電話やインターネットの通信費
- 事務用品:仕事で使用する文房具やパソコン周辺機器の購入費
- 会議費用:業務に関連する会議の参加費や会場費
- 業務関連の備品:業務に必要な機材や器具の購入費
ただし、特定支出控除を受けるためには、給与支払者の証明が必要です。
上記に当てはまる費用を自己負担で支払っている場合には勤務先の担当者に確認し、領収者やレシートを提出しましょう。
住宅ローン控除(減税)
住宅ローン控除(減税)の正式名称は、住宅借入金等特別控除といいます。
住宅ローン控除とは、マイホームの購入やリフォームなどで住宅ローンを利用した場合に、所得税から控除される制度です。
所得税から控除しきれない場合には、翌年の住民税から控除される仕組みになっています。
毎年の住宅ローン残高の0.7%を最大13年間にわたって控除を受けることができます。
住宅ローン控除の対象となる要件は以下のとおりです。
- 購入する物件の床面積が50平米以上
- 借入金の返済期間が10年以上
- 引渡しまたは工事完了から6ヵ月以内に入居していること
- 居住用割合が1/2以上あること
- 自身が入居していること
- 住宅ローン利用者の年収が3,000万円以下であること
住宅ローン控除の控除額は、住宅の性能や居住を開始した年によって以下のように、細かく設定されています。
住宅の種類 | 居住開始年 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 | 年間最大控除額 | |
---|---|---|---|---|---|---|
新築 | 長期優良住宅 低炭素住宅 | 2022~2023 | 5,000万円 | 13年 | 0.7% | 35万円 |
2024~2025 | 4,500万円 | 31.5万円 | ||||
ZEH水準省エネ住宅 | 2022~2023 | 4,500万円 | 31.5万円 | |||
2024~2025 | 3,500万円 | 24.5万円 | ||||
省エネ基準適合住宅 | 2022~2023 | 4,000万円 | 28万円 | |||
2024~2025 | 3,000万円 | 21万円 | ||||
その他の住宅 | 2022~2023 | 3,000万円 | 21万円 | |||
2024~2025 | 控除されません | |||||
既存住宅 | 長期優良住宅 低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 | 2022〜2025 | 3,000万円 | 10年 | 0.7% | 21万円 |
その他の住宅 | 2,000万円 | 14万円 | ||||
リフォーム | 2,000万円 | 14万円 |
上記の最大控除額の合計はあくまでも目安として確認してください。
実際は、ローン残高が毎年減っていくため、控除額も年々減少していきます。
所得税で控除しきれなかった金額は翌年の住民税から控除されますが、住民税の控除額には上限がある(最大9.75万円)ため、控除可能額全額をすべて利用できないこともあることを理解しておきましょう。
iDeCo(確定拠出年金)
iDeCo(確定拠出年金)は老後の資産形成を目的とした制度で、自分で選んだ金融商品に対して毎月積み立て、60歳まで運用する仕組みです。
iDeCoを運用している場合、毎月の掛金は全額所得控除の対象になります。
さらには、運用によって得られた運用益は課税対象にならないため、税的なメリットが大きいと言えるでしょう。
60歳までは引き出すことができないため、将来の退職金や年金として着実に積み立てることができます。
60歳以降に積み立てた金額を受け取る際も、税制優遇措置が用意されているため節税効果が大きいことが特徴です。
iDeCoの掛け金を所得控除する際には、年末調整の書類(給与所得者の保険料控除申告書)に、その年に支払ったiDeCoの掛金の合計金額を記入しましょう。
毎年10月に送付される小規模企業共済等掛金払込証明書を添付する必要があるため、捨てずに大切に保管しておいてください。
NISA(少額投資非課税制度)
ここまでは年末調整時に申告することで、所得控除ができる制度を紹介しました。
NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託などの運用益や配当金などが非課税になる制度です。
NISAは最低運用金額が設定されていないため、投資初心者でも始めやすいことが特徴です。
通常の株式投資であれば運用によって得られた利益は課税対象ですが、NISAの場合は年間上限120万円まで非課税で運用ができます。
このような制度を活用することで、節税しながら貯蓄を増やすことができるので、将来のために資産形成を考えている会社員の方にもメリットの大きい制度と言えるでしょう。
個人事業主におすすめの節税対策
個人事業主やフリーランスの場合、毎年必ず自身で納税額を計算し、確定申告を行う必要があります。
確定申告時に必要な項目を申請することで、会社員と同じように各種控除を受けることができます。
さらに個人事業主の場合、以下のような対策を講じることで節税効果を得ることができるため、確認しておきましょう。
個人事業主におすすめの節税対策
- 青色申告
- 経費計上
- 共済制度の利用
- 事業の法人化
青色申告
確定申告には、白色申告と青色申告の2種類の方法がありますが、青色申告を行うことで、最大65万円の所得控除や経費計上に関する特例を受けることができます。
所得控除以外にも、赤字を翌年に繰り越せるので翌年度の税金を軽減させることも可能です。
ただし青色申告には正確な帳簿記帳が求められ、事前に税務署への申請が必要です。
帳簿記帳や届け出の手間はかかりますが、税金対策としては大きな効果があるため、白色申告を行なっている事業主の方は、青色申告への切り替えを検討しましょう。
経費計上
個人事業主は、その1年の売り上げから経費を差し引いた額が課税所得となるため、事業に使用した経費を漏れなく計上することが大切です。
レシートや領収書の保管ができておらずに計上漏れしていたり、経費として計上できる費用の認識を誤っていて正しく計上できていない場合、非常にもったいないため一度経費の見直しを行うといいでしょう。
ただし、何でも経費に計上すればいいというわけではありません。
事業活動に必要な支出であることが条件となります。
都度、税務署の許可が必要というわけではありませんが、確定申告後に税務調査が入る可能性があり、その際に妥当性が説明できるように用意しておきましょう。
共済制度の利用
個人事業主が活用できる節税対策の一つに共済制度があります。
共済制度に加入すると、掛金を経費として計上できるため、課税所得を減らし、税金の負担を軽減できます。
共済制度には、例えば「国民健康保険組合の共済」や「中小企業退職金共済」などがありますが、税金対策以外にも健康保険や退職金の準備も同時に行えるため、共済制度への加入は個人事業主にとってはメリットが大きいでしょう。
掛金の上限や制度の詳細条件を確認し、自分の事業に最適な共済を選ぶことが重要です。
事業の法人化
個人事業主の節税対策として、事業の法人化も選択肢の一つです。
法人化することで法人税率が適用され、個人事業主の所得税率よりも低く抑えられる可能性が高いです。
また経費として計上できる費用の幅も広がるため、税金対策として有効でしょう。
事業を法人化するためには、法人設立登記を行い、法人税や社会保険の手続きを済ませる必要があります。
法人化には設立費用や維持管理の手間がかかる以外にも、税務上・法務上のルールも理解する必要があり、場合によっては専門家に依頼する必要が出てきます。
こうした労力と税的なメリットを比較しながら、長期的な視点で検討しましょう。
ふるさと納税を利用した場合
ふるさと納税は、自分が応援したい自治体を選んで寄附することで、その地域の特産品や体験を返礼品として受け取れる制度です。
寄附額のうち一定額は、住民税や所得税から控除されるため、実質的に少ない負担で地域支援ができます。
とくに会社員や個人事業主の方にとっては、税金の負担を軽くしつつ、地域振興に参加する絶好の機会です。
地域とのつながりを深め、自分自身にも嬉しいリターンがあるふるさと納税を検討してみるといいでしょう。
まとめ
会社員には節税の方法があまりないと思われがちですが、知らなかった対策もあったのではないでしょうか。
利用できる節税対策を理解し、しっかりと申告を行うことで会社員でも効果的に節税を行うことができます。
また控除以外にもNISAやふるさと納税など税的なメリットのある制度を賢く活用することで、将来のための資金として備えることができます。
一度、税金について利用できる制度や控除がないか、振り返ってみてはいかがでしょうか。