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トラネキサム酸は、のどの痛みや腫れ、肌荒れ、美白など、健康と美容の双方に効果がある物質です。
市販の風邪薬にも含まれているため、普段の生活で意識せずにトラネキサム酸の効果を得ていることもあるでしょう。
この記事では、トラネキサム酸の特徴や、健康や美容面での効果、利用時の注意点などを解説します。
トラネキサム酸とは
トラネキサム酸は、人工的に作られたアミノ酸の一種で、日本で開発された医薬品です。
開発後は、従来の止血剤とは違う総合的止血作用があることで注目され、出血を伴う疾患だけでなく、皮膚の炎症などにも幅広く活用されるようになりました。
近年では、シミや美白など美容への効果でも注目されています。
最初に、トラネキサム酸の具体的な働きや摂取方法などを解説します。
トラネキサム酸の主な働きと効果
トラネキサム酸の主な働きは、たんぱく質分解酵素の一種である「プラスミン」の働きを抑えることです。
プラスミンは、血液中にあるプラスミノーゲンという物質が変化したもので、血栓を溶かす作用があります。
例えば、ケガなどで血管が破れて出血すると、体は血栓を作って止血しますが、血管が修復されれば血栓は不要になります。
プラスミンはこの血栓を取り除く過程で役立っています。
ケガをした際は、まず血小板が集まり破れた部分をふさぎ、「フィブリン」という物質がさらに頑丈な膜を作り保護することで、血栓ができます。
プラスミンは、このフィブリンを分解して血栓を溶かし、血管の詰まりを防いでいるのです。
しかし、プラスミンが過剰に働くと、止血の妨げや、炎症・アレルギー反応の原因になることもあり、シミの原因にも影響を与えると考えられています。
プラスミンの働きを抑えるトラネキサム酸は、こうしたトラブルに効果的です。
トラネキサム酸の主な効果
- 抗プラスミン作用
- 抗プラスミン作用に伴う止血作用
- 抗炎症作用
- 抗アレルギー作用
- シミの予防
トラネキサム酸が含まれるもの
トラネキサム酸は人工的に作られた物質であり、野菜や果物などの一般的な食品には含まれていません。
医薬品や化粧品の成分として使用が認められており、内服薬や、医薬部外品として販売されている美容液などに使われています。
また、化粧品の原料としてもトラネキサム酸が市販されているため、水に溶かして化粧水などを自作することもできます。
トラネキサム酸が含まれる市販薬の種類
トラネキサム酸は効果が幅広いため、さまざまな目的の市販薬に含まれています。
主な効能・効果は、以下のとおりです。
トラネキサム酸配合の市販薬の効能・効果
- 口内炎
- のどの痛みや腫れ
- のどの痛みを伴う風邪
- 肌荒れ
- 肝斑
- シミ・そばかす・くすみ・ニキビ跡などの色素沈着
トラネキサム酸はこれらの市販薬において、炎症を抑える抗炎症成分やメラニンの生成を抑える成分として配合されています。
また、一口にトラネキサム酸配合の医薬品といっても、製品により効能・効果は異なるため、よく確認して選びましょう。
トラネキサム酸の健康や美容への効果
トラネキサム酸は病院で行われる治療においても、出血を伴う病気の治療のほか、肝斑やニキビ跡、じんましんのようなアレルギー症状を伴う湿疹などに幅広く活用されています。
一方でトラネキサム酸は、市販薬や、医薬部外品である薬用化粧品にも用いられており、日常的な健康や美容の悩みにも役立ちます。
ここでは、市販薬や化粧品に配合されているトラネキサム酸の効果を中心に解説します。
口内炎やのどの痛み
トラネキサム酸は、口内炎の薬や、咽頭炎・扁桃炎によるのどの痛みを抑える薬によく配合されています。
トラネキサム酸には、抗プラスミン作用により炎症を抑える働きがあるためです。
トラネキサム酸を含むこれらの市販薬には、主に口内炎向けの薬と、主にのどの痛み向けの薬があります。
しかし、口内炎向けの薬でも咽頭炎・扁桃炎に効く製品があるなど、効果・効能は共通していることが多いです。
歯茎の腫れや出血
トラネキサム酸は、歯茎の腫れや歯槽膿漏、歯茎からの出血などのトラブルにも効果があります。
トラネキサム酸に、抗炎症作用や止血作用があるためです。
医薬部外品である薬用歯磨き粉には、トラネキサム酸を配合した製品が数多く存在します。
トラネキサム酸が含まれる歯磨き粉を使うことで、歯茎の腫れなどの予防に役立ちます。
風邪
総合感冒薬(風邪薬)にも、トラネキサム酸が含まれているものがあります。
とくに、のどの痛みや腫れに効果的な風邪薬にはよく、抗炎症作用を目的に配合されています。
トラネキサム酸の抗炎症作用は、のどだけでなく、風邪の炎症によるせきや鼻水、発熱などの複合的な症状の緩和にも効果的です。
風邪薬は、トラネキサム酸だけでなく、その他の成分と合わせて複合的に働いていることも特徴です。
肝斑やシミ
肝斑は、顔の頬骨や口の付近などに、左右対称に現れるシミです。
境界線がはっきりせずモヤモヤと広がっている、色が抜けたように見えるなどの特徴があります。
肝斑の原因は複数あり、紫外線や皮膚への刺激、服用した薬の影響、女性ホルモンのバランスの乱れなどが考えられます。
直接的な原因は、シミができる原因となる「メラノサイト」にプラスミンなどが刺激を与えることです。
トラネキサム酸の抗プラスミン作用は、肝斑の治療にも効果的とされ、市販薬にも配合されています。
シミの原因となるプラスミンの働きをトラネキサム酸が抑えることで、シミを防ぐ効果が期待できます。
美白や肌荒れ
トラネキサム酸の抗プラスミン作用は、肌荒れの対処や美白にも効果的です。
薬用化粧品(医薬部外品)のクリームや化粧水には、美白の有効成分や肌荒れを防ぐ成分として、トラネキサム酸を配合している製品もあります。
トラネキサム酸を利用する際のQ&A
トラネキサム酸は、注意点や副作用に気を付けて、トラブルが起きないように自身の体に合わせて利用することが大切です。
ここでは、よく挙げられる疑問点をもとに、トラネキサム酸に関する注意事項などを解説します。
トラネキサム酸の効果が出るまでの期間は?
トラネキサム酸の効果が出るまでの期間は、使用目的や製品によって異なります。
トラネキサム酸による肝斑や美白などの肌への効果を実感できるまでには、一般的に数週間から数か月の期間がかかるといわれています。
また、肝斑やシミへの効果では、使用をやめると元に戻る可能性もあります。
一方、風邪薬など、のどの痛みや腫れをトラネキサム酸で抑える薬は比較的即効性があり、数回または数日の服用で効果が出やすいです。
風邪薬などでは、数日で効果がなければ服用をやめて、医師や薬剤師などに相談しましょう。
トラネキサム酸は飲み続けて大丈夫?
トラネキサム酸は、一般的に副作用が少ないとされている薬ですが、副作用が起きる可能性もあります。
個人差などもあるため、一概に飲み続けても安全とはいえません。
美白やシミへの効果を目指すなら、使い続けることで効果が出やすくもなるため判断は難しいところですが、心配なときには医師や薬剤師などの専門家に相談しましょう。
風邪薬のように一時的な症状に対処する薬は、普段から飲み続けるように作られていないため、製品の説明をよく読むことも大切です。
トラネキサム酸の副作用や注意点は?
トラネキサム酸で起こりうる副作用には、下記のような症状があります。
- 食欲不振
- 胸やけ
- 腹痛
- 下痢
- 嘔吐
- 悪心
- 発疹
- かゆみ
- 動悸
- 頭痛
- めまい
- 眠気
まれに呼吸困難などの重い症状が出る場合もあるため、少しでも異変を感じたら無理に使用せず、医師や薬剤師に相談しましょう。
人工透析が必要な方など、抱えている疾患によっては痙攣などの重大な副作用が出ることもあります。持病がある方は、あらかじめ医師に相談することが大切です。
妊娠中や授乳中も、トラネキサム酸の摂取前には医師や薬剤師に相談が必要です。
また、トラネキサム酸が配合された製品の利用時は、血液を固める作用のある薬やトラネキサム酸を含むほかの薬など、併用できない薬もあるため注意しましょう。
トラネキサム酸には止血作用があるため、止血作用のあるほかの薬を飲むと血栓ができやすくなることが理由のひとつです。
また、元々血栓ができやすい体質の方も気を付ける必要があります。
さらに、美容目的でトラネキサム酸配合の製品を使用中に、トラネキサム酸配合の風邪薬を飲んでしまうなど、見落としやすい過剰摂取にも注意が必要です。
まとめ
トラネキサム酸は、医薬品や医薬部外品の成分として用いられており、炎症の抑制や止血効果、肝斑やシミへの効果などがある物質です。
市販薬や薬用化粧品にも含まれており手軽に使えますが、使用上の注意点もあるため、知識を身に付けて上手に活用しましょう。
トラネキサム酸を利用する際には、医師や薬剤師の指示を守ったり、添付の説明書をよく読んだりすることが大切です。