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イワシ類の稚魚であるしらすは、魚の栄養を丸ごと摂取できる食材で、とくにカルシウムとビタミンDが豊富です。
生の状態から加工したものまで種類が多く、重さ当たりの水分量や栄養価にも差があります。
この記事では、しらすに含まれる栄養素とその効能を詳しく解説し、効果的な食べ方や注意点、身近なしらす製品も紹介します。
しらすの栄養素と効能

しらすは、カルシウムがとくに多く含まれるほか、ビタミンDやビタミンB12、たんぱく質、EPA・DHAなど、その他の栄養素も豊富です。
ここでは、しらすに含まれる主な栄養素とその効能について解説します。
カルシウム
しらすに多く含まれる栄養素のうち、最たるものがカルシウムです。
カルシウムは体内に最も多く存在するミネラルで、中でも骨や歯に多く含まれています。
カルシウムは、不足すると骨の形成が妨げられ、骨粗しょう症の原因になることから、積極的な摂取が推奨されています。
しらすは柔らかく骨が気になりにくいため、小魚の小骨の食感が苦手な方でも食べやすいでしょう。
ビタミンD
カルシウムと並んで、ビタミンDを多く含むこともしらすの特徴です。
ビタミンDにはカルシウムの吸収を助ける働きがあり、強い骨を作るうえで欠かせない栄養素の一つです。
ビタミンDが不足していると、カルシウムを摂っても十分に活用できません。
カルシウムもビタミンDも豊富なしらすは、骨・歯の形成や骨粗しょう症の予防に効果的です。
ビタミンB12
しらすに含まれるビタミンB12は、酵素の働きを助ける補酵素として、アミノ酸の代謝やたんぱく質の合成、赤血球の産生、DNAの生成などを助けています。
神経や血液細胞の健康を保つのに必要な栄養素です。
不足すると、疲労や体力低下、食欲不振などの原因となります。
たんぱく質
たんぱく質は、肉類や魚介類、卵、乳製品、豆類などに多く、しらすにも豊富に含まれます。
筋肉や臓器、皮膚など、体をつくる材料となる重要な栄養素です。
しらすは、高たんぱく質で低脂質なため、筋トレやスポーツなどを行う方にもおすすめです。
EPA・DHA
EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、魚の油に含まれるオメガ3脂肪酸です。
とくにイワシやサバなどの青魚に豊富で、イワシ類の稚魚であるしらすにも多く含まれます。
EPAやDHAには、血液の流れを良くする作用や、血中中性脂肪の低下作用、抗炎症作用、脳や神経の機能を保つ作用など、さまざまな働きが期待されています。
現代では、食生活の変化によりEPAやDHAが不足しがちであり、意識的に摂りたい栄養素です。
しらすの種類別の栄養成分表
下記は、記事後半でも解説する身近なしらすについて、種類別に100g当たりの主な栄養成分をまとめた表です。
栄養成分 | 生しらす | 釜揚げしらす | しらす干し | ちりめんじゃこ |
---|---|---|---|---|
カロリー(kcal) | 67 | 84 | 113 | 187 |
カルシウム(mg) | 210 | 190 | 280 | 520 |
ビタミンD(μg) | 6.7 | 4.2 | 12.0 | 61.0 |
ビタミンB12(μg) | 4.2 | 1.5 | 3.2 | 6.3 |
たんぱく質(g) | 15.0 | 17.6 | 24.5 | 40.5 |
DHA(mg) | 250.0 | 320.0 | 340.0 | 570.0 |
EPA(mg) | 90.0 | 120.0 | 150.0 | 200.0 |
しらすは、種類によって水分含有量が異なります。
生しらす、釜揚げしらす、しらす干し、ちりめんじゃこの順に水分量は減少し、ちりめんじゃこの水分量は生しらすの半分程度です。
そのため、生しらすとちりめんじゃこでは、同じ量でもカロリーや栄養価に大きな差があります。
カロリーや栄養価が気になるときは、しらすの種類に応じて調整するのがおすすめです。
参考:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
しらすの効果的な食べ方と注意点

しらすは、他の素材と組み合わせると、栄養を補えて味わいの幅も広がります。
ただし、食べ過ぎによるデメリットもあるため注意を要します。
しらすは柔らかく離乳食にも使いやすい一方、塩抜きなどが必要なため、適切な調理を行いましょう。
他の食材と組み合わせて栄養価アップ
しらすだけでは、おかずとしてのボリュームが物足りないことがあります。
相性の良い他の食材と組み合わせると、ボリュームがあり栄養価の高いおかずになります。
淡泊な味わいのしらすは、和食や洋食を問わず、さまざまな味付けに合わせやすい食材です。
サラダにしらすをトッピングする、納豆や卵にしらすを混ぜて食べるなど、おかずの栄養価を手軽にアップできます。
しらすは、ゴマや青菜と一緒にご飯のふりかけにする、パスタのソースに使うなど、主食の栄養を補えることもメリットです。
食べ過ぎに注意
しらすは、塩分やコレステロールが多めです。
塩分やコレステロールの摂取を制限している方は、食べ過ぎないようにしましょう。
目安として、しらす干しを頻繁に食べるなら、1日に大さじ1程度(約5g)までにするのがおすすめです。
塩分が気になるときには、お湯でさっと茹でるか熱湯に数分浸けて、塩抜きもできます。
離乳食への使い方
柔らかく栄養豊富な釜揚げしらすやしらす干しは、離乳食にもおすすめの食材で、初期の離乳食から利用可能です。
しかし、使う際には必ず最初に塩抜きをすることが大切です。
鍋にお湯を沸かし、しらすを1〜2分茹でて水気を切ってから使いましょう。
または、しらすを耐熱容器に入れて熱湯を注ぎ、約2分浸けた後に茶こしなどでお湯を切り、再度熱湯を回しかけても塩抜きできます。
熱湯をかける方法で塩抜きしたときは、再度、加熱調理しましょう。
離乳食の後期ではすり潰さずにそのままの形で使えますが、その際も塩抜きは忘れずに行いましょう。
また、しらす製品には小さなエビやカニなどが混入していることもあるため、アレルギーがあるお子様やアレルゲン除去が必要なときは注意が必要です。
しらすの種類

しらすは特定の魚の名前ではなく、主にイワシ類の稚魚を指しています。
シロウオやシラウオは見た目が似ていますが、しらすには含まれません。
カタクチイワシやマイワシ、ウルメイワシなどの子供で、卵からかえって1~2か月程度の、2cm~3cmの頃に市場に出回るのがしらすです。
中でも、1年を通して産卵するカタクチイワシの稚魚がよく使われます。
しらすは加工された製品の総称でもあり、生しらす、釜揚げしらす、しらす干し、ちりめんじゃこなどの種類があります。
また、しらすは成長してイワシになりますが、成長過程で3cm~5cm程度の大きさになったものは「かえり」という名前で出回ります。
生しらす
生しらすは、水揚げされたばかりの未加工のしらすです。
生しらすは鮮度が落ちやすく、水揚げした当日にしか食べられません。
他のしらす製品に比べてあまり身近ではないものの、食べるために水揚げされる場所まで足を運ぶ人もおり、新鮮な味わいが人気です。
白米や酢飯の上に生しらすを乗せて、薬味と一緒に醤油をかけて食べる「生しらす丼」は、神奈川県の郷土料理です。
釜揚げしらす
生しらすを水揚げしてすぐに、さっと窯茹でしたものです。
新鮮な生しらすを、たっぷりのお湯で茹で上げることでふっくらと仕上がり、ほど良い塩味と柔らかい食感を楽しめます。
しらす干しやちりめんじゃこと比較して水分含有量が多く、8割ほどが水分のため、あまり日持ちしません。
しらす干し
釜揚げしらすを、天日干しや乾燥機などで軽く乾燥させたものです。
天日干しでは30分〜1時間と、短時間で仕上げることもあり、微乾燥の状態です。
水分含有量は5〜7割で、比較的柔らかい食感を保っています。
ちりめんじゃこ
釜揚げしらすを、しらす干しよりもさらに乾燥させたものです。
天日干しでは、しらす干しの倍以上の時間をかけて乾燥させることもあります。
しっかり乾燥させるため、水分含有量は3〜5割に減少し、比較的硬い食感に仕上がります。
乾燥させることで旨味が凝縮し、釜揚げしらすやしらす干しより日持ちするメリットもあります。
かえり
かえりまで成長すると、しらすのように白い色はなくなり始め、銀色が濃くなるのが特徴です。
かえりは、水揚げ後に釜茹でして、天日干しや乾燥機などで乾燥させた状態でよく出回ります。
しらすよりは大きいものの食べやすいサイズで、小骨などが気になりにくく、子供のおやつやお酒のおつまみなどに好まれます。
たたみいわし
たたみいわしは、生しらすを板状に広げて天日干しで乾燥させたもので、平らでひとまとまりになっています。
江戸時代から親しまれる日本の伝統食品です。
ちりめんじゃこと似ていますが、釜揚げの手順がなく、しらすを生のまま乾燥させる点が異なります。
そのため、軽く炙ったりお吸い物に入れたりして、加熱してから食べます。
まとめ
しらすはカルシウムやビタミンDなどが豊富に含まれる、栄養価が高い食材です。
手軽に食べられるため、毎日の献立でカルシウムをプラスしたいときなどに便利です。
他の食材と組み合わせたり、異なる種類のしらすを食べ比べたりして、さまざまな味わいを楽しめます。
ただし塩分が多いため、一度にたくさん食べすぎないよう注意が必要です。
離乳食も含め、効果的な食べ方や適切な調理方法を意識して、しらすの栄養をおいしく取り入れましょう。