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牡丹(ぼたん)は「百花の王」と称されるほど華やかで気品のある花として親しまれています。
その豪華絢爛な姿は古くから日本画や和歌に繰り返し登場し、私たちの文化と深く結びついてきました。
牡丹には、春に咲く「春牡丹」だけではなく、冬に咲く「冬牡丹」「寒牡丹」もあることをご存知でしょうか?
この記事では、牡丹の季節や種類、文化的な意味、そして知っておきたい名所についてもわかりやすく解説します。
牡丹ってどんな花?

牡丹とはどのような花なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
牡丹が「百花の王」と呼ばれる理由
牡丹は、中国原産のボタン科ボタン属の低木です。
大輪でふんわりと重なる花びらはとても美しく、堂々と咲き誇る姿に自然と目が奪われます。
その豊かな佇まいは、まさに「冨貴」を想像させる存在で、古来より王侯貴族をはじめ多くの人々に親しまれてきた美と品格を兼ね備えた花といえそうです。
牡丹と日本文化との関わり
牡丹は薬用植物として中国から伝来され、牡丹の根は「牡丹皮(ボタンピ)」として、駆瘀血や清熱作用があり、古くから重宝されていました。
奈良時代にはすでに日本の寺院で栽培されていた記録が残っています。
やがてその美しさは、文学や絵画・着物の文様など、多くの文化表現に取り入れられるようになりました。
和歌に詠まれたり、浮世絵や屏風絵の題材になったり、牡丹は日本文化の中で、大切なモチーフとして扱われています。
牡丹の季節や見頃はいつ?

牡丹には、春に咲く「春牡丹」だけではなく、冬に咲く「冬牡丹」「寒牡丹」もあります。
牡丹の季節や見頃について、ご紹介します。
牡丹の季節
牡丹の開花時期は、一般的に4月下旬〜5月中旬です。
春の暖かさとともに開花し、全国の牡丹園や庭園寺院を鮮やかに彩ります。
ただし、地域や品種によって多少のずれがあるため、事前に見頃を確認してから訪れることをおすすめします。
冬牡丹と寒牡丹の違い
冬牡丹
冬牡丹とは、本来は春に咲く品種の牡丹を、人工的に冬に咲かせたものです。
温室などを利用し、開花期を調整しています。
冬でも青々とした葉がついていることが特徴で、寒さに弱いため「わらぼっち」と呼ばれる藁囲いで守られています。
雪景色の中、藁囲いの中から牡丹の花が咲く姿は風情があり、冬の風物詩として親しまれています。
寒牡丹
一方、寒牡丹とは、年に二回咲く「二季咲き」の品種で、自然な状態で春と冬に開花します。
葉がほとんどついておらず、枝は冬枯れのような状態で、黒ずんでいます。
寒さに耐えて大輪の花を咲かせる姿は、凛とした美しさを味わうことができます。
参考:ボタンとは|育て方がわかる植物図鑑|みんなの趣味の園芸(NHK出版)
参考:冬の花を守るための知恵~冬牡丹・わらぼっち~ | 日本文化を探る | いろり – 人と語らうコミュニティサイト –
牡丹と芍薬の違いは?気になる見分け方も解説

牡丹と並び称される花に、芍薬(しゃくやく)があります。
牡丹も芍薬もボタン科ボタン属の植物で、見た目が似ているため混同されやすいといえます。
違いを見ていきましょう。
牡丹とは?
牡丹は木本(もくほん)性の樹木で、枝分かれして横に広がる点が特徴です。
牡丹の開花時期は4〜5 月です。
芍薬とは?
芍薬は草本(そうほん)性の草花で、枝分かれせず真っ直ぐ上に伸びる点が特徴です。
芍薬の開花時期は、牡丹より少し遅れて5〜6月です。
牡丹と芍薬の見分け方
牡丹と芍薬の見分け方のポイントは、葉の形にあります。
牡丹の葉は切れ込みがありマットな質感、芍薬は切れ込みがなくツヤツヤですので、一目で見分けられます。
牡丹のつぼみは丸く、花はほとんど香りがしません。
対して、芍薬のつぼみは少し尖り、花はバラのような香りがあります。
“立てば芍薬、座れば牡丹”の意味
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉もよく耳にします。
枝ぶりの違いから、その美しさをとらえた表現の一つといえるでしょう。
この言葉は、芍薬の上へと伸びるすらりとした立ち姿と、牡丹の横へとふんわり広がる姿から、美しい女性の容姿を花にたとえた日本の言い回しです。
参考:これからの季節を彩る名花、牡丹と芍薬の見分け方|ウェザーニュース
牡丹の花言葉と文化的な意味を知りたい

牡丹の花には、多くの意味が込められています。詳しく見ていきましょう。
牡丹の花言葉
牡丹には、「王者の風格」「富貴」「恥じらい」などの花言葉が込められています。
これらの花言葉から、牡丹の品格の良さが伝わります。
着物や美術、文学作品などに見る牡丹の魅力
日本画
牡丹は、浮世絵や屏風絵、水墨画などに頻繁に登場します。
葛飾北斎や歌川国芳などの浮世絵師たちは、牡丹を題材とした作品を数多く残しています。
牡丹は美人画に描かれる女性の着物の柄としても人気があり、女性の美しさを際立たせています。
和歌
俳句では、「牡丹」は初夏の季語として親しまれています。
松尾芭蕉や与謝野蕪村、小林一茶、正岡子規など多くの俳人の作品に詠まれています。
文学作品
牡丹は、清少納言の随筆『枕草子』や紫式部の小説『源氏物語』にも登場し、美しさの象徴として大きな役目を果たしています。
着物の文様
牡丹は縁起の良い文様として、友禅染や訪問着などに広く用いられています。
母から娘へと受け継がれる晴れ着の柄としても定番で、人生の節目に寄り添ってくれます。
日本各地の牡丹の名所と見頃

牡丹は日本各地の庭園や寺院で鑑賞することができます。
ここでは、一度は訪れてみたい牡丹の名所をご紹介します。
牡丹園
須賀川牡丹園(福島県須賀川市)
須賀川牡丹園は、日本で唯一、牡丹園として国の名勝に指定された庭園です。
花の見頃は5月で、10ヘクタールの広大な園内で約290種・7,000株の牡丹が咲き誇ります。
作家・吉川英治や歌人・北原白秋、日本画家・横山大観ら多くの文人墨客が訪れた名所として知られています。
由志園(島根県松江市大根島)
由志園は、一年中牡丹の花を楽しめる牡丹園です。
ゴールデンウィーク期間中には園内の池に数万輪の牡丹を浮かべた「池泉(ちせん)牡丹」や、歩道の両脇を絨毯のように牡丹を敷き詰めた「牡丹苑路」などの演出を楽しめます。
2025年1月〜3月には「假屋崎省吾 × 牡丹Collaboration Season14」も開催され、冬の牡丹も見応えがあります。
寺院庭園
長谷寺(奈良県桜井市)
長谷寺は、「花の御寺」として有名で、古くから牡丹の名所として知られています。
牡丹の見頃は4月上旬から5月中旬。
ゴールデンウィーク期間中には、参道の登廊及び嵐の坂を彩る牡丹の鉢植えが参拝者を迎える「ぼたん回廊」が人気です。
西新井大師(東京都足立区)
西新井薬師は、「西の長谷寺・東の西新井」とも称される関東有数の牡丹園です。
花の見頃は4月上旬から5月です。
総本山長谷寺の株を移植された牡丹は見事に咲き誇り、春の満開の頃に「花まつり」が開催されます。
上野東照宮ぼたん苑(東京都上野区)
上野東照宮ぼたん苑は日中友好を記念して開苑した回遊形式の日本庭園で、春には110品種500株、冬は40品種160株が栽培されています。
4月上旬から5月上旬には「春のぼたん祭」、1月1日から2月下旬には「上野・東照宮冬ぼたん」が開催され、寒牡丹(冬牡丹)も鑑賞できる牡丹の名所です。
まとめ
春の光に咲き誇る春牡丹や、雪の中で静かに咲く寒牡丹など、季節の移ろいによって、豪華絢爛で牡丹の花は、その美しさを楽しむことができます。
見頃の時期になったら、そんな牡丹の品格ある美しさを味わってみませんか。
日本に古くから伝わる花の姿が、ひとときの癒やしとなるかもしれません。
季節の花としての牡丹を楽しみ、文化との結びつきに触れてみてはいかがでしょうか?
参考:ボタンとは|育て方がわかる植物図鑑|みんなの趣味の園芸(NHK出版)
参考:冬の花を守るための知恵~冬牡丹・わらぼっち~ | 日本文化を探る | 人と語らうコミュニティサイト 「いろり」|伝教大師最澄1200年魅力交流委員会
参考:富貴の譜|牡丹が彩る日本の文化譚|日本花卉文化株式会社
















