深海魚として知られる「あんこう」は、インパクトのある見た目とは裏腹に、古くから美食家たちを唸らせてきた高級魚です。
「西のふぐ、東のあんこう」と称されるほど、その美味しさはお墨付き。
定番のあんこう鍋は、あんこうの各部位の食感と味が存分に楽しめる絶品です。
今回は、そんなあんこうの知られざる生態や旬、産地などについて解説。
おなじみの和食からイタリアンまで、あんこうの美味しい食べ方もご紹介します。
あんこうってどんな魚?特徴を徹底解説
平べったいシルエットで海底に潜み、頭についた突起でエサとなる生物をおびき寄せるあんこう。
まずは、あんこうのユニークな特徴をチェックしてみましょう。
オスがメスに寄生!驚きの生態
あんこうの大きな特徴のひとつが、オスとメスの大きさの違い。
メスは体長1~2mにまで成長するのに対し、オスの体長は大きくても10~20cmほどといわれています。
食用にされるのは基本的にメスのみです。
また、一部のあんこうは珍しい産卵方法をとることでも有名。
小さなオスは、巨大なメスの体に融合して、そのまま目や内臓など大部分の組織を失ってしまいます。
オスはメスから栄養を受け取る代わりに、産卵のタイミングにあわせて精子を供給するという独特の繁殖スタイルです。
食用あんこうは主に2種類
世界に約300種類いるあんこうのうち、日本で主に食用とされるのは「アンコウ」と「キアンコウ」という標準和名のもの。
市場などでは、「アンコウ」を「くつあんこう」、「キアンコウ」を「あんこう」や「ほんあんこう」と呼んで区別しています。
単に「あんこう」というときは、より流通量の多い「キアンコウ」を指すのが一般的です。
「ちょうちんあんこう」は食べられる?
頭の上についた突起が発光する「ちょうちんあんこう」は、基本的に食用にされることはありません。
食用となる「アンコウ」や「キアンコウ」が「アンコウ目アンコウ科」なのに対し、ちょうちんあんこうは「アンコウ目チョウチンアンコウ科」で、分類上も異なるグループに属しています。
あんこうは「捨てるところがない魚」
あんこうは、骨・あご・眼球以外のすべての部位を食べることができる、捨てるところがない魚です。
食べられる「身(柳肉)」、「皮」、「水袋(胃)」、「肝」、「ヌノ(卵巣)」、「エラ」、「ヒレ(とも)」は、まとめて「あんこうの七つ道具」と呼ばれています。
あんこうの旬といえば冬
あんこうの旬は11月~3月ごろの冬の時期です。
なかでも美味しいとされるのが、産卵直前の1~2月。
春の産卵に備えて栄養を蓄えていて、肝もこの時期に最も大きく育つといわれています。
コラーゲンたっぷり!あんこうの栄養と効果
85%以上が水分でできているあんこうの身は、100gあたり54kcalと低カロリーです。
一方、あんこうの肝は100gあたり401kcal。
脂質が多く高カロリーですが、ビタミンAやビタミンEなどが豊富で滋養強壮に効果的です。
肝に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)には血中の中性脂肪やコレステロール値を下げる効果も期待できるほか、皮やヒレに含まれるコラーゲンは抜群の美肌効果を発揮します。
あんこうの産地はどこ?
あんこうの名産地で開催されるお祭りとは、一体どんなものなのでしょうか?
ここでは、あんこうの分布や産地について解説します。
各地で水揚げあり!全国で食べられるあんこう
あんこうは、北海道から九州にかけて、日本海側・太平洋側の広い範囲で水揚げされています。
漁獲量が多いのは、山口県の下関漁港、島根県の浜田漁港、青森県の八戸漁港など。
以前は主に常磐~関東エリアで好んで食べられる魚でしたが、現在は全国で食べられるようになりました。
あんこうの名産地・茨城県
とくに有名なあんこうの産地といえば、福島県から茨城県にかけての常磐沖。
昔からあんこう漁が盛んなエリアで、このあたりで水揚げされたものは「常磐路のあんこう」として知られています。
なかでも質が高いとされる茨城県のあんこうは、江戸時代に水戸藩から将軍家への献上品として使われていたほど。
現在も茨城県には各地にあんこう専門店があり、鮮度が良くなければ食べられないあんこうの刺身がいただける店や、季節外れの夏にあんこう鍋が食べられる店も有名です。
吊るし切りも見られる!大洗の「あんこう祭り」とは?
茨城県の中央部に位置する大洗町(おおあらいまち)では、毎年11月に「大洗あんこう祭り」が開催されています。
イベントの名物は、あんこうの顎をフックにかけ、吊るした状態で捌いていく「吊るし切り」の実演。
巨大でぶよぶよしたあんこうを効率よく捌いていく様子は、一種のエンターテインメントになっています。
会場で販売される名物のあんこう鍋やあんこう汁も大人気です。
簡単おすすめ!あんこう鍋のレシピ
あんこうの王道の食べ方といえば、なんといってもあんこう鍋。
あんこうの七つ道具を一度に味わうことができる贅沢な逸品です。
ここでは、あんこう鍋の作り方を解説。
臭み取りなどの下処理方法から、味わいの異なる3種の出汁の魅力もご紹介します。
あんこうの下処理
スーパーなどで販売されているあんこうは、すでに食べやすい大きさにカットされているものがほとんど。
「そのまま料理に使えるのでは?」と思いがちですが、実際にはぬめりや臭みを取り除くためのひと手間が必要です。
肝以外の部分はしっかりと洗い、30秒~1分ほど熱湯で茹でて冷水に取りましょう。
肝は流水でよく洗って血抜きをした後、全体に塩を振りかけて10分ほど置き、えぐみを取り除きます。
まれに寄生虫のアニサキスが潜んでいる場合がありますので、必ず目視でチェックするようにしてください。
あっさり食べやすい【醤油仕立て】
全国的にポピュラーなあんこう鍋は、だし汁に醤油・みりん・酒・塩・砂糖などを加えた醤油ベースのもの。
クセが少なく食べやすいので、あんこうを食べ慣れていない人にもおすすめです。
肝は具材として食べても、潰してスープに溶かしても美味しくいただけます。
濃厚コク旨【味噌仕立て】
茨城県で主流なのは、地元の漁師料理である「どぶ汁」をもとにした味噌ベースのあんこう鍋。
ペースト状にした肝を直接鍋に炒りつけてから出汁に溶かし、好みの味噌で味付けしていただきます。
凝縮されたあんこうの旨味を思う存分堪能できる逸品です。
ポン酢でさっぱり【水炊き】
あんこうや野菜を昆布出汁で煮込み、シンプルにポン酢にくぐらせていただく水炊きもおすすめ。
ねぎやもみじおろし、柑橘類などの薬味と一緒にいただきましょう。
肝なしでも大丈夫
「海のフォアグラ」とも呼ばれるあんこうの肝は、具材として鍋に入れたり、スープに溶かしたりすることで味にコクを出す重要な役割を果たしています。
できれば一緒に煮込みたいところですが、手に入らなかった場合は肝なしでも大丈夫。
あっさりした仕上がりになりますが、飽きのこない美味しさを楽しむことができます。
あんこう鍋以外の美味しい食べ方
あんこうは鍋以外にもさまざまな調理法で楽しめる魚です。
ここでは、多彩な食べ方の中からおすすめの料理をご紹介します。
あん肝
居酒屋メニューの定番・あん肝は、口の中でとろけるクリーミーな味わいが人気。
軽く下味をつけた肝を成型して蒸すだけで、家庭でも簡単に作ることができます。
共酢(ともず)・共和え(ともあえ)
茹でたあんこうの身や皮を、肝入りの酢味噌につけて食べる「共酢(友酢)」や、肝入りの味噌と和えた「共和え(友和え)」は、茨城県や青森県などで食べられている郷土料理です。
どちらもお酒によく合います。
唐揚げ
醤油や酒、生姜などに漬け込んだあんこうの切り身に、衣を付けて揚げた唐揚げ。
あんこうの身のふわっとした食感を存分に味わえます。
ソテー
淡泊な味わいのあんこうの身は、イタリアンやフレンチとの相性もばっちり。
ソテーやムニエル、アクアパッツァ、ブイヤベースなどでいただくのもおすすめです。
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