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牛乳は栄養バランスが優れており、準完全栄養食品の1つです。
牛乳には三大栄養素であるたんぱく質、脂質、炭水化物に加えて、カルシウムなどのミネラルやビタミン類などが含まれています。
しかし、牛乳には「低脂肪牛乳」や「成分調整牛乳」などがあり、それぞれの栄養成分や選び方がわからないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では牛乳の栄養成分や効能について詳しく解説します。
牛乳の栄養に関するQ&Aも掲載していますので、ぜひ最後までご一読ください。
【栄養バランスがよい】牛乳の主な成分と種類
まず、牛乳の基本的な成分とタイプごとの特徴について押さえておきましょう。
牛乳の主な成分
牛の乳から絞ったままの乳汁を生乳といいます。
この生乳の成分を調整せず、加熱殺菌したものが牛乳です。
牛乳の組成(含まれている成分やその量)は87.4%の水分と12.6%の乳固形分で、乳固形分はさらに3.8%の乳脂肪、8.8%の無脂乳固形分に分かれます。
文部科学省の栄養成分表によると、牛乳100g当たりの主な成分は以下の通りです。
栄養素など | 牛乳100g当たり の含有量 |
---|---|
エネルギー | 61kcal |
水分 | 87.4g |
たんぱく質 | 3.3g |
脂質 | 3.8g |
炭水化物 | 4.8g |
灰分 (カルシウムやマグネシウムなどの ミネラル) | 0.7g |
食塩相当量 | 0.1g |
【牛乳の6分類】主な成分と特徴
生乳を原料とする製品は、乳脂肪分の含有量や添加原料の有無などの違いに応じて、省令でいくつかのタイプに分類されています(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)。
店頭でもおなじみの6タイプの牛乳について、主な成分と特徴を見てみましょう。
牛乳
生乳を原料とする製品のうち、牛乳は成分を調整せず、加熱殺菌しただけのものです。
牛乳の乳脂肪分は3.0%以上、無脂乳固形分は8.0%以上とされます。
「~以上」と表示されるのは、季節や飼育環境、牛の個体差などによって牛乳の成分が変わるためです。
なお、牛乳のパッケージに「成分無調整」と表示する義務はありませんが、多くの製品ではほかの種類と区別しやすいよう表示されています。
成分調整牛乳
成分調整牛乳は、生乳から水分、乳脂肪分、ミネラルといった成分の一部を除去して調整したものです。
成分調整牛乳の乳脂肪分は1.5%以上、無脂乳固形分は8.0%以上とされます。
調整の方法や除去する成分はメーカーや商品によって異なるため、味もさまざまです。
低脂肪牛乳
低脂肪牛乳は、生乳から乳脂肪分の一部を除去したものです。
乳脂肪分以外の成分は牛乳と変わりません。
低脂肪牛乳の乳脂肪分は0.5%以上1.5%以下、無脂乳固形分は8.0%以上とされます。
乳脂肪分が少ないため、味や風味は牛乳よりも淡白です。
無脂肪牛乳
無脂肪牛乳は、生乳からほとんどの乳脂肪分を除去したものです。
無脂肪牛乳の乳脂肪分は0.5%未満、無脂乳固形分は8.0%以上とされます。
低脂肪牛乳よりもさらにあっさりとした、淡白な味・風味が特徴です。
加工乳
加工乳は、生乳に脱脂乳や脱脂粉乳、クリームやバターなどの乳製品を加えて成分を調整したものです。
原料が生乳のみではないため、牛乳とは区別されます。
加工乳の無脂乳固形分は8.0%以上で、脂肪分については規定されていません。
加える乳製品の種類や加工方法によって、味や風味のバリエーションも豊富です。
乳脂肪分が4.0%を超える「特濃」や「濃厚」タイプも、加工乳や乳飲料に分類されます。
乳飲料
加工乳に加えられるのは乳製品に限定されていますが、乳飲料は牛乳の成分以外の原料を使用できます。
省令では乳固形分のみ3.0%以上と規定されていますが、加えるものや加工の仕方によってバリエーションが豊富です。
カルシウムや鉄を加えて栄養を強化したタイプや、コーヒーや果汁で味や風味をプラスしたタイプなどがあります。
牛乳に含まれる栄養成分と効能
牛乳に含まれる代表的な栄養成分と効能について詳しく見てみましょう。
吸収効率のよいカルシウム
牛乳100g当たりには約110mgのカルシウムが含まれています。
カルシウムは丈夫な骨や歯をつくるのに欠かせず、不足状態が続くと骨粗しょう症になりやすいため、子どもから高齢者まで積極的に摂りたいミネラルです。
また、カルシウムには神経の興奮を抑制して落ち着かせる効果や、血液を凝固させたり筋肉を収縮させて動かしたりする作用があります。
牛乳より含有量が多い食品もありますが、カルシウムは体内で吸収されにくいため、量とともに吸収率の高さが重要です。
カルシウムの吸収率は小魚が約33%、野菜類が19%であるのに対し、牛乳・乳製品は約40%と最も高く、優れています。
カルシウムは意識的に摂らないと不足しがちですが、牛乳であれば1日にコップ1杯(200ml)で目標摂取量の約3分の1を効率よく摂ることが可能です。
良質なたんぱく質
牛乳のたんぱく質の約80%は、アミノ酸を豊富に含むカゼインです。
体内では合成されない必須アミノ酸9種類もバランスよく含むため、完全栄養食の卵に次ぐ良質なたんぱく質といわれます。
カゼインは不溶性で固まりやすく、体内でゆっくり吸収されるのが特徴です。
カゼインが消化される過程で生成される物質には、小腸でカルシウムの吸収を助けたり、免疫反応を調節したりする働きがあります。
牛乳コップ1杯(200ml)当たりのたんぱく質(7.2g)は卵1個当たりの含有量(Mサイズで約6g)よりも多いため、牛乳はたんぱく質の供給源としても優秀です。
消化・吸収効率のよい乳脂肪
乳脂肪は小さな脂肪球の状態で含まれており、飲みやすく消化・吸収されやすいよう、製造工程で均質化されています。
牛乳の乳脂肪は少量でも多くのエネルギーを効率よく生産できるため、子どもや高齢者にとって重要なエネルギー源です。
また、乳脂肪は脂溶性ビタミンA、D、E、Kが溶け込んでおり、不足しがちなビタミンの供給源でもあります。
腸を整えカルシウムの吸収を促す乳糖
牛乳に含まれる炭水化物のほとんどが乳糖です。
乳糖は腸で善玉乳酸菌のエサとなって腸内環境を整えるほか、体内で吸収されにくいカルシウムや鉄の吸収を促す作用があります。
また、乳糖の構成成分であるグルコース(ブドウ糖)やガラクトースは、脳や神経の成長と発達にとっても欠かせない成分です。
牛乳の栄養に関するQ&A
牛乳の栄養に関する疑問をQ&Aで解説します。
健康な体づくりや美容のために牛乳の栄養を効率よく摂りたい人、飲みたいけれどお腹がゴロゴロする人はぜひチェックしてみてください。
Q1|牛乳のカルシウムを効率よく摂れる食べ方は?
牛乳のカルシウムをさらに効率よく摂りたい場合は、ビタミンDを含む食材を合わせるとよいでしょう。
ビタミンDはきのこや魚介類に豊富に含まれており、小腸でカルシウムを吸収させる作用があります。
たとえばムニエルにクリームソースを添えるだけで、カルシウムをより効率よく摂れるでしょう。
クラムチャウダーやきのこたっぷりのミルクスープもおすすめです。
Q2|牛乳は太りやすい?
牛乳コップ1杯(200ml)のカロリーは126kcalで、成人女性が1日に必要とするエネルギーの7%弱です。
飲み過ぎるとカロリーオーバーの恐れもありますが、適量であれば牛乳を飲んだからといって太るわけではありません。
前述の通り、乳脂肪は消化・吸収に優れたエネルギー源であるため、ほかの食材とのバランスを考えながら普段の食事やおやつに取り入れるのがおすすめです。
ダイエット中や健康上の理由で制限がある場合は、低脂肪牛乳や無脂肪牛乳を選ぶとよいでしょう。
Q3|牛乳を温めると栄養成分は減る?
牛乳は冷たいままでも温めても、栄養の変化はほとんどありません。
ただし、温めたときに表面にできる膜を取り除いてしまうと、栄養分が減ってしまいます。
この膜は脂肪とたんぱく質(カゼイン)が熱で凝固してできるものです。
膜の口当たりが苦手な場合は、牛乳を混ぜながら温めると膜ができにくくなるため、試してみてください。
Q4|牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする理由と対策は?
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしたりゆるくなったりする「乳糖不耐」の症状が気になる人も多いでしょう。
原因は、乳糖を分解する「ラクターゼ」という体内の酵素が少ないか、働きが低下しているためです。
古くから酪農を行っていた欧米諸国の人と比べて、日本人は乳糖不耐症が多いといわれます。
対策として、数回に分けて少しずつ飲んだり、温めてから飲んだりする方法が有効です。
また、最近では乳糖を分解して量を抑えた乳飲料も販売されています。
気になる人は店頭やメーカーのホームページなどで探してみるとよいでしょう。
まとめ
牛乳の魅力は、コップ1杯でさまざまな栄養素がバランスよく摂れることです。
この記事では牛乳の代表的な栄養成分とその効能について解説しました。
また、成分調整牛乳や低脂肪牛乳など、6つに分類された牛乳の特徴や栄養についても詳しくご紹介しました。
違いや特徴を押さえることで、好みや目的に合う牛乳を選びやすくなります。
記事を参考に、牛乳で手軽に効率よく栄養を摂りましょう。