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タウリンはアミノ酸の一種で、イカやタコ、貝などの魚介類にとくに多く含まれている食品成分です。
疲労の回復に効果的な成分として知られるタウリンですが、じつは、それ以外にもさまざまな効果・効能があります。
この記事では、タウリンに期待できる効果を詳しく解説し、多く含む食品や食べる際の注意点も紹介します。
タウリンに期待できる主な効果
タウリンは、体内で多彩な作用を示します。
よく知られた疲労回復のほか、生活習慣病の予防につながる効果なども期待できるのです。
この章では、タウリンの摂取により期待できる効果を詳しく紹介します。
疲労回復
タウリンは、酷使した体の回復に役立ち、筋肉のダメージを軽減することで、身体的な疲労感を和らげます。
多くの栄養ドリンクにタウリンが配合されているのも、疲労回復に効果的と考えられているためです。
また、脂質をエネルギーに変換する手助けもしており、ダイエットにも役立ちます。
肝臓の機能向上
タウリンには、肝臓の機能を向上させる働きがあります。
肝臓は、体にとって毒性のあるものを解毒して排出しますが、タウリンはその排出経路となる胆汁の分泌を促すのです。
さらに、タウリンには肝細胞を保護する作用があることも明らかになっています。
タウリンはこうした働きにより、肝臓の機能を正常に保ったり、向上させたりすることに役立ちます。
心臓の機能向上
カルシウムイオンは、心臓で収縮機能をつかさどっています。しかし、何らかの異常でこの機能がうまく働かなくなれば、心不全に繋がりなりかねません。
タウリンは、心臓にあるアミノ酸のおよそ半分を占め、カルシウムイオンが正常に働く手助けをしていて、日本では心不全の治療薬としても承認されています。
また、タウリンは血管の弾力性改善・降圧・炎症の軽減・血流改善などの働きをする一酸化窒素の生成を促すため、心血管の健康に繋がるのです。
血中コレステロール・中性脂肪の減少
タウリンは、血中のコレステロールや中性脂肪の量を減少させる働きがあります。
コレステロールや中性脂肪は、人間の体にとって必要不可欠な物質ですが、血中で過剰になると動脈硬化などの血管疾患が引き起こされます。
タウリンによって分泌が促進される胆汁の材料には、コレステロールが欠かせません。胆汁の合成はコレステロールの消費を促します。
また、タウリンは中性脂肪をエネルギーに変換する手伝いもします。
このようにタウリンは、コレステロールや中性脂肪の過多が原因で起こる動脈硬化などの血管疾患の予防効果も期待できるのです。
血糖値を下げる
タウリンには、血糖値を下げる効果が期待できます。
タウリンは、血糖値を下げるホルモンである「インスリン」を分泌する膵臓の機能低下を防ぐと考えられているためです。
健康診断などで血糖値が気になる方にも、タウリンはおすすめの成分です。
網膜を守る・目の疲れを癒す
タウリンは、目の健康にとって非常に重要な成分で、とくに網膜を保護し目の疲労を軽減する効果があります。
疲れ目の原因は、長時間目を使うことや、強い光や酸素にさらされることです。
これらの状況下では、網膜が酸化され傷つきやすいですが、タウリンの抗酸化作用や抗炎症作用は網膜を守ってくれるでしょう。
その効果から、眼精疲労対策の目薬にタウリンが入っていることもあります。
胎児・乳児の発育を手助けする
タウリンは、胎児・乳児の発育を手助けし、とくに脳の成長にとって重要な栄養素です。
胎児・乳児はタウリンを合成する能力が未発達なため、胎盤や母乳を通じて母親からタウリンをもらわなければなりません。
母親からもらうタウリン量が低下すると脳の成長が遅れ、将来において発達の遅滞があることが認められています。
また、母親に肥満・妊娠高血圧腎症の症状があると、タウリンが胎盤から胎児に運ばれにくくなり、脳発達に異常が生じる可能性があります。
アンチエイジング
体内のタウリン量は、年を重ねるごとに低下します。
マウスを用いた実験では、タウリンを与えると通常の食事を摂取するマウスと比較して、約10%寿命が延びただけでなく、筋肉の持久力や筋力が向上したという報告もあります。
また、細胞の老化に深く関係する「テロメア」の長さは、マウスの血中タウリン濃度が高いほど維持されるとの報告があります。
テロメアは、染色体の末端に存在する構造で、短くなると細胞の増殖能力も低下します。
さらにタウリンは、加齢による長寿遺伝子の減少を抑制している可能性も示されています。
中高年者における筋力維持
中高年者を対象とした調査では、食事からのタウリン摂取量が、筋力維持と関連しているという結果が報告されています。
この調査では、被験者を食事からのタウリン推定摂取量で高・中・低の3グループに分け、8年後の膝伸展筋力(膝を伸ばす筋力)の変化量との関係が調べられました。
40歳以上では、食事からのタウリン摂取量が多いグループほど、膝伸展筋力が増加していました。
65歳以上では、タウリンの摂取量にかかわらず膝伸展筋力は減っていくものの、タウリン推定摂取量が多いグループは減少幅が小さく筋力が維持される傾向にありました。
タウリンは、中高年の筋力維持にも効果が期待できる成分といえるでしょう。
出典:国立長寿医療研究センター「中高年者の筋力維持にタウリンの摂取が関連することを初めて報告」
タウリンを摂るときの注意点
多くの効果が期待できるタウリンですが、摂る際は注意点もあります。
ここでは、タウリン摂取の上限量や栄養ドリンクの注意点を紹介します。
タウリン摂取の目安量
食事からのタウリン摂取量は、目安や上限などはとくに定められていません。
健康効果を得るには、1日あたり500mg、できれば3000〜6000mgのタウリン摂取を目安にしてください。
しかし、食事からの平均摂取量は成人で1日あたり約40〜400mg程度といわれており、食事だけで全てをまかなうのは容易ではありません。
食事と併せて、栄養ドリンクやサプリメントなどの服用も検討しましょう。
なお、タウリンは水溶性なので体内にため込めず、一度にたくさん摂っても余剰分は尿と一緒に体外に排出されます。可能なら、複数回に分けて摂るとよいでしょう。
栄養ドリンクを飲むときの注意点
タウリン入りの栄養ドリンクを飲むときは、カフェインや糖類の過剰摂取に注意しましょう。
栄養ドリンクには、多量のカフェインが入っている場合があります。
栄養ドリンクを飲み過ぎると、急性カフェイン中毒や不眠・精神不安などの症状を引き起こす可能性があります。
また、糖類が多量に入っている点も見逃せません。
糖類が血糖値を上げることで体のパフォーマンスを高めますが、血糖値が下がるのも早く、そんな血糖値の乱高下は後に体のだるさをもたらします。
さらに、血糖値の乱高下が何度も続くと、血糖値を調節するインスリンの効きが悪くなり、将来において糖尿病を発症する恐れもあるのです。
栄養ドリンクは、飲みすぎるとこうした悪影響もあるため、製品の用法・用量を守りましょう。
タウリンが多い食品と摂取のコツ
さまざまな効果を持つタウリンを効率的に摂取するには、どうすればよいのでしょうか。
ここでは、タウリン含有量が多い食品と、摂取のコツを紹介します。
イカ・タコなどの魚介類に豊富
タウリンは肉・魚・乳製品・卵など、ほとんどの動物性食品に含まれており、とくに魚介類に豊富です。
また、魚介類の中でも、イカやタコ、貝類などの軟体動物にとくに多く含まれている傾向があります。
タウリンを多く含む食品
- イカ
- タコ
- カキ(牡蛎)
- あさり
- しじみ
- ほたて
- はまぐり
- かに
タウリンは、野菜・果物などの植物性食品にはあまり含まれていないので、ベジタリアンだと不足しがちです。
タウリンを上手に摂取する調理のコツ
タウリンは水に溶けやすいので、洗う時に流水につけっぱなしにしたり、茹でたお湯を捨てたりすると、食品に残る量が減ってしまいます。
タウリンを一番効率よく摂れるのは、刺身などの生食です。ただし、生食ならばきちんと処理された刺身用を購入するなど、衛生管理には気を付けましょう。
加熱調理をする場合、煮汁やスープの中には、流出したタウリンが溶け込んでいるので一緒に飲むと効果的です。また、焼く・揚げるなど、水をあまり使わない調理法だと流出が抑えられます。
食材は小さく切ると、表面積が広がりタウリンの流出も増えます。
しかし、大きいままだとイカやタコ・貝類は弾力があるため、高齢者や噛むのが苦手な方には食べにくかったり喉に詰まらせたりする原因になったりするので注意してください。
タウリンとは
食品に含まれるタウリンとは、そもそもどんな成分なのでしょうか。ここでは、タウリンについての基礎知識を紹介します。
ラテン語の雄牛タウルスが名前の由来
「タウリン」という名前は、ラテン語の「雄牛」を意味する「タウロス」に由来しています。1827年にドイツの科学者により、牛の胆汁から発見されたため、この名前が付けられました。
タウリンは、胆汁に限らず動物のさまざまな組織に存在し、とくに脳・心臓・骨格筋などに多く存在します。
ヒトも体内で一定量のタウリンを合成できますが、最適量を維持するには食事からの摂取が必要です。
タウリンはアミノ酸の一種
タウリンは、特殊なアミノ酸の一種で、無味無臭であり体重の約0.1%を占めます。
通常のアミノ酸とは異なり、体内では、たんぱく質の構成成分となるのではなく、大部分が遊離の(他の物質とくっついていない)状態で存在する点が特徴的です。
目薬や栄養ドリンクなど、医薬品や医薬部外品に含まれているタウリンは、化学合成されたものです。医薬品のタウリンは、肝機能改善やうっ血性心不全の治療薬として使われます。
まとめ
タウリンは、血管疾患をはじめさまざまな効果がありますが、体内で合成される量は少なく、食品から摂取する必要があります。
魚介類に多く含まれるものの、通常の食事での摂取量には限度があります。不足する分は、栄養ドリンクやサプリメントで補うとよいでしょう。
また、水溶性で体内にため込めないタウリンは、1日のうち複数回に分けて摂ると効果的です。
タウリンを取り入れて、健やかな食生活を目指しましょう。