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貧血になると、体が重い、疲れやすいなどの症状が出て生活に支障をきたします。
鉄不足による貧血は無症状であることも多く、健康診断で指摘されて初めてわかったという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、貧血を防ぐ食べ物を、栄養素ごとに分けて詳しく紹介します。
貧血の原因や、鉄を効率よく摂取できる食べ方も紹介しますので、参考にしてみてください。
貧血の原因と、食べ物も関わる「鉄欠乏性貧血」とは?
貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量が少なくなった状態です。
この章では、貧血の主な原因と、多くみられる「鉄欠乏性貧血」について解説します。
貧血の主な原因
貧血には、主に以下のような原因があります。
- 鉄の不足
鉄不足によりヘモグロビンが減少し、体内に十分な酸素が行き渡らなくなる「鉄欠乏性貧血」を引き起こす。 - 鉄以外の栄養素の不足
造血に必要なビタミンB12や葉酸が不足して起こる。
「巨赤芽球性貧血」などの原因となる。 - 慢性疾患に伴う貧血
感染症、自己免疫疾患、腎疾患、がんなどの慢性的な疾患が原因で起こる貧血。 - 骨髄の機能低下
血液を作る器官である骨髄の機能低下により、血液を正常に作れなくなる。
「骨髄異形成症候群」「再生不良性貧血」などの原因となる。 - 赤血球が破壊される病気
さまざまな原因により赤血球が未熟なうちに破壊される。これを溶血といい、「溶血性貧血」を引き起こす。
この記事では、鉄不足による「鉄欠乏性貧血」への対策を中心に紹介します。
鉄欠乏性貧血
貧血にはさまざまな原因がありますが、もっとも多いのは鉄欠乏性貧血です。
ヘモグロビンは、鉄を含むヘムとたんぱく質のグロビンで構成され、細胞に酸素を運ぶ役割があります。
鉄が不足すると十分な量のヘモグロビンが作られず、体内への酸素供給に支障をきたす鉄欠乏性貧血を引き起こします。
症状は、息切れ、動悸、疲労感、血色不良、爪が反り返るスプーン爪などですが、無症状の場合もあるので注意が必要です。
鉄欠乏性貧血には以下のような原因があります。
- 食事で摂る鉄などの栄養素の不足
- 月経による出血
- 潰瘍、がん、痔など、疾病による消化管からの出血
- 胃の切除や薬剤の影響による消化吸収の阻害
鉄欠乏性貧血を防ぐには、バランスのよい食事が大切です。
毎日の食事から、鉄を含むさまざまな栄養素を摂るようにしましょう。
鉄の1日の摂取量は?
推奨されている1日あたりの鉄の摂取量は、以下のとおりです。
- 成人男性:7.0~7.5mg
- 成人女性(月経あり):10.5~11.0mg
- 成人女性(月経なし):6.0~6.5mg
- 妊婦:9.0~16.0mg(初期~中期・後期)
- 授乳婦:9.0mg
食品に含まれる鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄があります。
ヘム鉄は、肉や魚などの動物性食品に多く含まれ、非ヘム鉄より吸収率に優れています。
ただし、ヘム鉄が豊富だからといって肉類だけを食べたりはせずに、さまざまな食品から摂取するようにしましょう。
ヘム鉄と非ヘム鉄では吸収率が違うものの、食事から摂取した鉄はおおよそ15%ほどが吸収されるという報告があります。
※参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(PDF)
貧血を防ぐ食べ物
貧血を防ぐには、鉄、たんぱく質、ビタミンなどを含む食べ物が有効です。
この章では、貧血防止に役立つ食べ物を紹介します。
なお本記事では、食品の栄養価を日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より引用しています。
ヘム鉄を含む食品(肉類):レバー・赤身肉など
ヘム鉄はたんぱく質に結合した状態で存在し、体内に吸収されやすいのが特徴です。
肉や魚などの動物性食品に多く含まれ、吸収率は10〜30%とされています。
下表に、肉類の可食部100g当たりの鉄含有量をまとめます。
また、1食分の目安量と、目安量当たりの鉄含有量も示します。
食品名 | 加工状態 など | 1食分の 目安量 (g) | 可食部の 鉄含有量 (mg) | |
---|---|---|---|---|
目安量 当たり | 100g 当たり | |||
豚レバー | 生 | 80 | 10.4 | 13.0 |
鶏レバー | 生 | 80 | 7.2 | 9.0 |
牛レバー | 生 | 80 | 3.2 | 4.0 |
牛もも肉 | 赤身・生 | 100 | 2.7 | 2.7 |
牛肩ロース | 赤身・生 | 100 | 2.4 | 2.4 |
牛ひき肉 | 生 | 100 | 2.4 | 2.4 |
ヘム鉄は、肉類の中でも、レバーや牛肉の赤身にとくに多く含まれます。
表中の食品よりは少ないですが、ヘム鉄は豚肉や鶏肉など他の肉類にも含まれます。
貧血が気になる人は、ぜひ毎日の食事に肉類を取り入れましょう。
ヘム鉄を含む食品(魚介類):まぐろ・かつお・あさりなど
魚類では、まぐろやいわしなど、赤身や青背の魚にヘム鉄が多く含まれます。
下表に、魚介類の可食部100g当たりの鉄含有量をまとめます。
また、1食分の目安量と、目安量当たりの鉄含有量も示します。
食品名 | 加工状態 など | 1食分の 目安量 (g) | 可食部の 鉄含有量 (mg) | |
---|---|---|---|---|
目安量 当たり | 100g 当たり | |||
きはだまぐろ | 生 | 100 | 2.0 | 2.0 |
かつお | 生 | 100 | 1.9 | 1.9 |
いわし | 缶詰・水煮 | 70 | 1.8 | 2.6 |
さんま | 皮つき・焼き | 80 | 1.4 | 1.7 |
あさり | 缶詰・水煮 | 30 | 9.0 | 30.0 |
しじみ | 生 | 20 | 1.7 | 8.3 |
なお、あさりなどの貝類には、ヘム鉄と非ヘム鉄の両方が含まれ、最近の研究では非ヘム鉄の方が多く含まれるとされています。
非ヘム鉄を含む食品:納豆・厚揚げ・小松菜など
非ヘム鉄は、たんぱく質と結合していない無機鉄のことです。
植物性食品に含まれるのは非ヘム鉄で、体内に吸収されにくく、吸収率は1〜8%とされています。
非ヘム鉄は、ヘム鉄と一緒に摂ったり、動物性たんぱく質やビタミンCを一緒に摂ったりすると、吸収率が上がります。
下表に、食品の可食部100g当たりの鉄含有量をまとめます。
また、1食分の目安量と、目安量当たりの鉄含有量も示します。
食品名 | 加工状態 など | 1食分の 目安量 (g) | 可食部の 鉄含有量 (mg) | |
---|---|---|---|---|
目安量 当たり | 100g 当たり | |||
豆乳 | – | 200 | 2.4 | 1.2 |
厚揚げ | – | 80 | 2.1 | 2.6 |
納豆 | – | 50 | 1.7 | 3.3 |
小松菜 | ゆで | 60 | 1.3 | 2.1 |
水菜 | ゆで | 60 | 1.2 | 2.0 |
ブロッコリー | 油炒め | 60 | 1.0 | 1.7 |
ほうれん草 | ゆで | 60 | 0.5 | 0.9 |
野菜類に含まれる鉄は、ゆでるとお湯に流出しやすいため、油炒めや電子レンジ調理がおすすめです。
ただし、鉄を含む野菜としてほうれん草が挙げられることがありますが、ほうれん草にはシュウ酸が多く含まれます。
シュウ酸には、鉄の吸収を阻害する作用があります。
シュウ酸は水に溶けやすいため、ほうれん草を調理するときは、たっぷりのお湯でゆでてシュウ酸を減らすようにしましょう。
良質なたんぱく質を含む食品:肉・魚・卵・大豆製品・乳製品
貧血予防のためには、良質なたんぱく質の摂取も大切です。
たんぱく質はヘモグロビンの材料となる重要な栄養素です。
また、動物性たんぱく質は、植物性食品に含まれる非ヘム鉄の吸収を助けます。
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など、さまざまな食材からバランスよく摂取しましょう。
1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかは、厚生労働省と農林水産省が策定した「食事バランスガイド」がわかりやすく、便利です。
ビタミンC・有機酸を含む食品:野菜・果物・お酢など
ビタミンCや有機酸(クエン酸、酢酸など)は、非ヘム鉄の吸収を高めるのに効果的です。
植物性食品に含まれる非ヘム鉄は、腸管において、酵素によって吸収されやすい形に変換されてから吸収されます。
ビタミンCやクエン酸には、この酵素を活性化させる働きがあることがわかっています。
- ビタミンCが豊富な食品
パプリカ、ブロッコリー、ゴーヤ、カリフラワーなどの野菜類。
キウイフルーツ、オレンジなどの果物類。 - クエン酸が豊富な食品
レモン、梅干しなど。
ビタミンCは水溶性なので、炒める、電子レンジを使用するなど、ゆでない調理法がおすすめです。
レモンは、クエン酸だけでなくビタミンCも含まれるため、非ヘム鉄を含む食品と一緒に摂取すると効果的です。
また、お酢にも非ヘム鉄の吸収をよくする効果があるとされています。
これは、お酢に含まれる酢酸が、鉄を吸収しやすい形に変える胃酸の分泌を促進するためと考えられています。
ビタミンB12・葉酸を含む食品
貧血予防には、ビタミンB12と葉酸を含む食品の摂取も大切です。
これらは細胞内のDNA合成に必須の栄養素で、赤血球の生成にも関わり、造血を促します。
ビタミンB12や葉酸が不足すると、赤血球細胞の成長がうまくいかず、巨赤芽球性貧血を引き起こすことがあります。
- ビタミンB12が豊富な食品
レバー、あさり、しじみ、チーズなど。
肉類や魚介類など、動物性の食品に含まれる。 - 葉酸が豊富な食品
レバー、アスパラガス、ブロッコリー、ほうれん草、えだまめ、オクラ、春菊、ニラなど。
貧血を防ぐ食生活のポイント
貧血は、ダイエットによる食事制限や、女性の生理、妊娠、授乳などで栄養素が不足すると起こりやすいです。
この章では、貧血を防ぐ食生活のポイントを紹介します。
バランスのよい食事を心がける
貧血予防には、バランスのよい食事が大切です。
ダイエットで食事を抜いたり、極端な食事制限をしたりしている場合は改善しましょう。
とくに朝食はしっかりと摂るようにし、ミネラルやビタミン、たんぱく質を補うことが大切です。
インスタント食品を摂りすぎている場合も、ミネラルやビタミンなどの栄養素が不足するので貧血になりやすく、注意が必要です。
食材から調理するのが難しい場合は、シリアルや飲料など、栄養成分を強化した製品の利用も検討してみましょう。
タンニンの過剰摂取に注意する
鉄欠乏性貧血の人は、タンニンの過剰摂取に注意が必要です。
タンニンとは、茶葉や赤ワインなどに含まれる渋み成分で、ポリフェノールの一種です。
タンニンには非ヘム鉄の吸収を妨げる作用があるため、緑茶、紅茶、コーヒーなどを食事中や食事前後に飲むのは避けた方がよいでしょう。
食事中や食事前後は、水や麦茶などのタンニンを含まない飲み物がおすすめです。
鉄製の調理器具を利用する
鉄製の調理器具の利用は、食事からの鉄分補給に役立ちます。
たとえば乾燥ひじき100g当たりの鉄含有量は、ステンレス釜で加工したものは6.2mg、鉄釜では58.0mgです。
また、鉄は酸性で溶けやすいため、調理に酢を使うと多く摂取できます。
鉄製の調理器具には、フライパンや中華鍋、スキレット、鉄瓶など、さまざまな種類があります。
きちんと手入れをすると長持ちするという利点もあるので、使いやすい調理器具を選ぶとよいでしょう。
まとめ
貧血予防には、鉄を含む食品や良質なたんぱく質、ビタミンやお酢などの摂取が有効です。
ダイエットでの極端な食事制限や、インスタント食品を多く摂る食生活は、栄養素が不足し貧血をまねきやすくなります。
ダイエット中でも、朝食をしっかりと摂るようにしましょう。
貧血を防ぐには、肉や魚、大豆製品や野菜、果物などを食事に取り入れ、バランスのよい食事を心がけることが大切です。