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スーパーでよく見かける「すじこ」と「いくら」。
どちらも鮮やかな魚卵で似たような見た目をしていますが、その違いを説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、すじこといくらの違いを詳しく解説します。
すじこといくらの違いを知って、それぞれを今まで以上においしくいただきましょう!
すじこといくらの1番の違いは卵の成熟度!
すじこといくらの最も大きな違いは、卵の成熟度です。
それでは、この2つの卵について詳しく見ていきましょう。
すじこもいくらも同じ魚の卵
すじこもいくらも、じつはどちらもサケ科魚類(サケやマス)の卵です。
同じ魚の卵ですが、卵の成熟度や加工方法が異なることで、違う食べ物として楽しめます。
すじこは未熟な卵
すじこはサケやマスの未熟な卵で、卵巣膜に包まれた状態で流通しています。
卵が成熟しきっていないため、ぷりっとした粒状の食感というよりも、柔らかくしっとりとした味わいが特徴です。
もともと柔らかいすじこですが、漬け込む過程でねっとりとした独特の食感が生まれ、とろけるような滑らかな口当たりが楽しめます。
いくらは成熟した卵
いくらは、産卵間近のサケやマスから採れる成熟した卵です。
すじこは卵巣膜でつながった状態ですが、いくらは卵巣膜からはがしてバラバラにした状態です。
成熟した卵であるいくらは、皮が硬く弾力があり、プチッと弾けるような食感を楽しめます。
その他のすじこといくらの違い
卵の成熟度以外にも、すじこといくらには次のような違いがあります。
- 大きさ
- 味
- 価格
それぞれの特徴を比べてみましょう。
大きさの違い
すじこといくらは、粒の大きさが異なります。
すじこは未成熟な卵を使っているため、いくらに比べて粒は小さめです。
一方、いくらはすじこより成長した卵なので、すじこよりも粒が大きく、見た目が華やかです。
ただし、サケの卵かマスの卵かによっても大きさは違うので注意してください。
味の違い
一般的に、すじこは塩漬け加工、いくらは醤油漬け加工のため、調味料による味の違いがあります。
柔らかな食感で、塩辛さと濃厚なうまみを感じられるのがすじこ。
一方いくらは、弾ける皮からあふれ出るトロリとした舌触りに、まろやかな甘みを感じられます。
なお、それぞれ別の味付けも一部販売されています。
値段の違い
すじこといくらの値段は、単純には比較できません。
なぜなら、メーカーや小売店によって値段の決め方が異なるからです。
どちらかというと、いくらのほうが高価なイメージを持つ人は多いでしょう。
実際に、いくらは加工に手間がかかることや卵を成熟させる必要があることなどから、すじこよりも高価とされています。
しかし、すじこの塩漬けには熟練の技術が必要であるため、いくらと同等、またはそれ以上の価格設定になっている場合もあります。
ただ、塩漬けしていない「生すじこ」は、一般的には安価に購入できます。
そのため、生すじこを購入し、自分でいくらを手作りする人もいます。
生すじこからいくらを作る方法は後述しますので、参考にしてください。
「すじこ」「いくら」名前の由来は?
同じ魚の卵なのに、名称が違うすじこといくら。
それぞれの名前の由来についても触れておきましょう。
「すじこ」は卵の状態から
「すじこ」の名前は、卵が筋のようにつながっていることに由来しています。
だから、漢字で書くと「筋子」なのです。
「はらこ」という言葉もありますが、「はらこ」は加工前の生のすじこを指す場合や、地方によって秋鮭の卵を指す場合があります。
「いくら」はロシア語から
「いくら」はロシア語の「икра:ikra(イクラ)」が語源で、「魚卵」「粒々したもの」という意味があります。
ロシアから「いくら」という言葉が入って来たのは大正〜昭和時代といわれていますが、それ以前は、すじこ・いくら両方を「すじこ」と呼んでいたそうです。
なお、ロシアではキャビアやたらこも「イクラ」と呼びますが、日本ではサケ・マスの卵だけを「いくら」と呼びます。
すじこの種類と特徴
すじこには、じつはさまざま種類があります。
それは、原料となる親魚が異なるからです。
すじこの種類や特徴について、おおまかには以下の通りです。
すじこの種類 | 親魚 | 色 | 味わい |
---|---|---|---|
紅子 (べにこ) | 紅鮭 | 赤黒 | 甘口~辛口まで幅広い味付けで濃厚 |
鮭子 (さけこ、はらこ) | 秋鮭 | 赤黒 | 甘口が多く、親しみやすい味 |
銀子 (ぎんこ) | 銀鮭 | 赤黒 | 甘口~辛口まで幅広く加工、皮が硬め |
キング子 | キングサーモン | オレンジ | 中辛の味付けが多く、 皮が硬くモチモチの食感 |
トラウト子 | トラウトサーモン | オレンジ | 最高クラスの甘口で、 1番のコクを味わえる |
鱒子 (ますこ) | 鱒 | オレンジ~黒オレンジ | 塩辛い味付けが多い |
すじこにも、親魚の種類によってそれぞれ特徴があり、味付け方も異なります。
また、メーカーによっても味わいが異なりますので、いろいろと試してみるのも楽しみ方の1つです。
いくらの種類と特徴
いくらには、「秋鮭(アキザケ)いくら」と「鱒(マス)いくら」がありますが、大きく3つの違いがあります。
- 粒の大きさ:秋鮭いくらのほうが鱒いくらより大きい
- 価格:秋鮭いくらのほうが鱒いくらより高い
- 味わい:秋鮭いくらのほうが鱒いくらより脂質が多く濃厚
秋鮭いくらと鱒いくらでは、サイズも価格も異なります。
秋鮭いくらの大きさは、鱒いくらに比べると一回り大きく、価格は3割ほど高いといわれています。
秋鮭いくらは、鱒いくらより脂質が豊富で、皮が弾けた後のトロリとした味わいがおいしく感じられるでしょう。
なお、水産業界では「いくら」というと「秋鮭いくら」のことで、「鱒いくら」と区別して呼んでいます。
すじこといくらのおいしい食べ方
塩漬けすじこ、醤油漬けいくら、それぞれの魅力を活かした食べ方をご紹介します。
どちらもご飯のお供に
すじこもいくらも、白ご飯と一緒に食べるのが定番中の定番。
塩気の強いすじこと、ほかほかの温かい白米の組み合わせは絶品です。
また、いくらの醤油漬けは、硬めに炊いて人肌程度に冷ました白米の上にたっぷりとかけて食べましょう。
どちらも手が止まらないおいしさです。
すじこはそのままおにぎりの具に
すじこの塩漬けはおにぎりの具材としてもぴったり。
適当な大きさに切った塩漬けのすじこを、そのままご飯に包んで握るだけで完成です。
冷えたご飯でもおいしく食べられるので、ぜひ持ち歩き用としても作ってみてください。
いくらは親子丼やパスタに
いくらでも簡単に作れる親子丼とパスタを紹介します。
親子丼
白米といくらの醤油漬けだけでも十分おいしいですが、そこにサーモンの刺身を加えて親子丼にする食べ方もおすすめです。
刺身ではなく、焼き鮭の身をほぐして作った親子丼も人気の一品。
刻み海苔や大葉をトッピングすれば、大満足間違いなしです。
たらこといくらのパスタ
普段食べるたらこパスタにいくらをトッピングすれば、贅沢で上品な一品に仕上がります。
たらこ、バター、茹でたパスタを混ぜ合わせ、万能ねぎや刻み海苔と一緒にいくらを載せれば完成です。
たらこパスタは、市販のパスタソースを使えばさらに簡単。
いくらが華やかなので、ちょっとした来客時にもおすすめの料理です。
生すじこを使ったいくらの作り方
高価なイメージのあるいくらですが、比較的安価で買える「生すじこ」を使えば、自宅でいくらを作ることができます。
生すじこを使っていくらの醤油漬けを作る方法を見ていきましょう。
材料
- 薄口醤油 大さじ1.5
- 酒 大さじ1
- みりん 小さじ1
- 水 小さじ2
上記は、生すじこ1本に対してのめやす量です。調味料はお好みで調整してください。
作り方
- 混ぜた調味料を火にかけてひと煮立ちさせ、漬けだれを作る。
- ボウルにぬるま湯を注ぎ、お湯につけながらすじこの膜をはがしていく。
- 何度かお湯を取り替えながら、膜をすべて取り除く。
- 膜を取ったすじこをザルにあげ、水気をしっかりと切る。
- 冷ました漬けだれに、数時間漬け込めば完成。
すじこやいくらにアニサキスはいる?
生きたまま食べると、激しい腹痛を起こすことで知られるアニサキス。
すじこやいくらは内臓なので、アニサキスが寄生している可能性はあります。
とはいえ、過度に心配する必要はありません。
理由は、多くの卵は冷凍されているからです。
アニサキスは、寄生していても加熱や冷凍で死滅します。
季節外のものや海外産のものは冷凍保存されるので、アニサキスが付着していたとしても食中毒を起こす心配はありません。
また、販売されているいくらの場合は、加工する過程で除去されます。
注意が必要なのは「生すじこ」です。
生すじこを使って自分でいくらを作る際は、アニサキスを目視で除去しましょう。
まとめ
すじこといくら、どちらも同じサケやマスの卵ですが、その違いは卵の成熟度や加工法だけでなく、味わいや楽しみ方にも表れています。
すじこの濃厚でねっとりとした食感と強い塩味、いくらのプチッと弾ける贅沢でまろやかな口当たり。
どちらも、白米との相性は抜群です。
同じ魚の卵でも異なる魅力が楽しめる「すじこ」と「いくら」、シーンに合わせそれぞれ楽しんでみてください。