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近年、「腸活」や「美肌」といった健康・美容意識の高まりとともに、注目を集めているのが乳酸菌です。
ヨーグルトなどの発酵食品に多く含まれる乳酸菌は、腸内環境を整えるだけでなく、免疫力アップや肌トラブルの改善にも効果が期待されています。
本記事では、乳酸菌が持つ効果をわかりやすく解説し、乳酸菌が豊富な食べ物、乳酸菌の効果を引き出す食べ方も紹介します。
毎日の生活に乳酸菌を取り入れて、内側から健やかでキレイな体づくりを目指しましょう。
乳酸菌の驚くべき効果とは?

乳酸菌とは、糖を分解して乳酸を作り出す細菌の総称です。
自然界に広く分布し、発酵食品に利用されるものや、腸内で善玉菌として働くものも存在します。
400種以上ある乳酸菌のうち、代表的なものと特徴を一覧表にまとめます。
乳酸菌 | 特徴 |
---|---|
ビフィズス菌 (Bifidobacterium 属の総称) | 腸内環境の改善、 便通を整える、 免疫力を高める |
ラクトバチルス・カゼイ (L. casei) | 胃酸に強く、生きて腸に届きやすい、 免疫調整効果 |
ラクトバチルス・アシドフィルス (L. acidophilus) | 腸内の悪玉菌を抑える、 消化を助ける |
ラクトバチルス・ラムノサス (L. rhamnosus) | アレルギー対策や感染症予防に効果 |
ラクトバチルス・ブルガリクス (L. bulgaricus) | 発酵力が強く、ヨーグルトの酸味と 風味を生み出す |
ラクトバチルス・ガセリ (L. gasseri) | 内臓脂肪の減少に効果的とされる |
ラクトコッカス・ラクティス (L. lactis) | チーズやバターの発酵に利用、 整腸作用 |
ストレプトコッカス・サーモフィルス (S. thermophilus) | ヨーグルトの発酵菌、 L.ブルガリクスと一緒に使われる |
ペディオコッカス・ペントサセウス (P. pentosaceus) | 食品の腐敗防止、 整腸作用 |
さまざまな乳酸菌が存在するため、その効果も多様です。
この章では、乳酸菌のもつ、とくに有用な4つの効果を解説します。
効果①腸内環境の改善
乳酸菌の代表的な効果の一つが、腸内環境の改善です。
腸内細菌は、大きく善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3つに分けられ、これらのバランスが健康に大きく関わっています。
乳酸菌は善玉菌に分類され、悪玉菌の増殖を抑えて、腸内フローラ(腸内細菌のバランス)を整える働きがあります。
こうした乳酸菌の働きは、便秘や下痢などの予防につながります。
さらに、乳酸菌は栄養状態の改善にも役立ち、全身の健康や美容にも良い影響を与えてくれます。
腸内環境が整うと食べ物の消化・吸収がよくなるうえに、乳酸菌はビタミンB群のうちいくつかを合成してその供給源となるためです。
効果②免疫力の向上
乳酸菌は免疫力を高める効果も期待されています。
私たちの体の免疫細胞の多くは腸に集中しており、「腸は第二の脳」とも呼ばれるほど重要な器官です。
乳酸菌による腸内環境の改善は、免疫細胞の働きも活性化させます。
その結果、風邪やインフルエンザなどの感染症への抵抗力を高め、過剰な炎症を抑える効果も期待されています。
体調を崩しやすい季節の変わり目などでも、乳酸菌を継続して摂ることで、体調管理に役立ちます。
効果③美容効果
乳酸菌には、美容の面でもうれしい効果があります。
腸内環境が乱れて悪玉菌が増えると、便秘や老廃物の蓄積が起こりやすくなり、ニキビや肌荒れなどの肌トラブルの原因になりかねません。
乳酸菌は、腸内環境のバランスを整えることで、老廃物の排出を促し、体の内側から美肌をサポートします。
さらに、乳酸菌が抗酸化物質を作ることも、多くの研究で報告されています。
参考:農研機構「乳酸菌由来の芳香族乳酸は紫外線照射による角化細胞の炎症反応を抑制する」
抗酸化物質による酸化ストレスの軽減は、肌のシミやくすみの予防、ハリやツヤの維持にもつながります。
美肌を目指すなら、スキンケアだけでなく、腸内環境へのアプローチも有効です。
効果④アレルギー症状の緩和
乳酸菌には、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を緩和する効果も期待されています。
アレルギーは、体の免疫システムが過剰に反応してしまうことが原因です。
乳酸菌は、その免疫システムのバランスを正常に保つ効果があります。
とくに一部の乳酸菌には、アレルギー反応を引き起こす物質の産生を抑える作用があるとされています。
薬だけに頼らず、日々の食生活などを通じてアレルギーと向き合う手段のひとつとしても、乳酸菌の効果が注目されています。
乳酸菌の効果が期待できる食べ物

乳酸菌は、主に発酵食品から手軽に摂取できます。
ここでは、腸活や美肌をサポートする、乳酸菌が豊富な食べ物を紹介します。
ヨーグルト
ヨーグルトは、乳酸菌が作り出す「乳酸」の働きを利用して作られる発酵食品です。
近年では、メーカー独自の健康効果を持つ菌株が使われることも多く、国から認可された特定保健用食品や、一定の科学的根拠がある機能性表示食品になっている製品もあります。
「生きて腸まで届く」「内臓脂肪を減らす」など、表示されている健康効果をもとに、体質や目的に合った製品を選ぶのもよいでしょう。
チーズ
チーズも、乳酸菌を活用して作られる発酵食品です。
チーズ作りでは、酵素の働きで牛乳の成分を凝固させますが、乳酸菌もその過程を助けて、さらに独特の風味も生み出します。
「ナチュラルチーズ」には、生きた乳酸菌が含まれているものもあり、腸内環境の改善にも役立ちます。
ただし、日本で主流の「プロセスチーズ」では、加熱処理の工程があり、乳酸菌は死滅します。腸内環境の改善には、ナチュラルチーズの方が、より効果が期待できるでしょう。
また、チーズはたんぱく質やカルシウムも豊富で、筋力アップや骨の健康維持にも効果的です。
乳酸菌飲料
乳酸菌飲料は、手軽に乳酸菌を摂取できる便利なドリンクです。
ヤクルトやカルピスなどに代表される製品は、それぞれ独自の乳酸菌を配合しており、腸内環境の改善や免疫のサポートをうたった製品もあります。
飲みやすい味に調整されているため、子どもから大人まで続けやすいのも魅力です。
製品によっては「生きた乳酸菌」や「加熱処理乳酸菌」など、乳酸菌の含まれ方が異なるため、目的に合わせて選ぶこともポイントです。
なお、乳酸菌飲料は糖分が多い製品もあります。成分表示を確認して、摂取量に注意しましょう。
キムチ・ぬか漬け
キムチやぬか漬けには、植物に由来する乳酸菌が豊富に含まれています。
植物由来の乳酸菌は、胃酸に強く生きて腸まで届きやすいのが特徴で、腸内の善玉菌を増やす効果があります。
さらに、食物繊維が豊富な野菜と一緒に乳酸菌を摂れるので、腸内環境を整える相乗効果が期待できます。
キムチは、唐辛子やにんにくが使われていて、代謝の促進や冷え対策にもおすすめです。
ぬか漬けは、発酵の過程でビタミンB群の一部が増加するため、ビタミン補給にも効果的な食べ物です。
味噌
味噌は、大豆と麹菌を利用して作られる、日本の代表的な発酵食品です。
味噌に含まれる麹菌由来の酵素は、消化を助けて栄養素の吸収効率を高めるといわれています。
また、味噌には麹菌以外にも、酵母や乳酸菌が含まれています。
味噌の乳酸菌は高塩濃度環境(5~22%の食塩濃度)でも生育可能で、これは他の乳酸菌には見られない特徴です。
味噌由来の耐塩性乳酸菌である「MN45株」は、アレルギー症状の原因となる免疫グロブリンE(IgE)の産生を抑制するという研究があり、アトピー性皮膚炎などの症状を軽減する効果が期待されています。
参考:北川 学「変化し続ける味噌 これまでの変遷とこれからの展望」
乳酸菌の効果を高める食べ方

乳酸菌は、一緒に摂る栄養素やタイミングなどを意識すると、より効果を高めることができます。
ここでは、3つのポイントを紹介します。
食物繊維と一緒に摂取する
乳酸菌の効果を引き出すには、「プレバイオティクス」と呼ばれる、腸内細菌のエサとなる成分を一緒に摂ることが重要です。
食物繊維やオリゴ糖などが代表的なプレバイオティクスで、とくに注目されているのが水溶性食物繊維です。
水溶性食物繊維は、腸内で水を吸ってゲル状になるため、腸内細菌により発酵されやすい特性があります。
この発酵により短鎖脂肪酸(酪酸・酢酸・プロピオン酸など)が生成され、腸内の酸性度が高まり、乳酸菌を含む善玉菌の定着や増殖を助けます。
水溶性食物繊維は、以下のような食品に豊富です。
- 果物(バナナ、リンゴなど)
- 野菜(ごぼう、オクラなど)
- 海藻類(わかめ、昆布など)
- 豆類(大豆、インゲン豆など)
- きのこ類(なめこ、しいたけなど)
これらの食品は、腸内フローラを整え、乳酸菌の持つ効果を高めます。
ヨーグルトに、バナナ・きな粉・オートミールなどを加えれば、乳酸菌とプレバイオティクスの組み合わせとなり、より高い効果が期待できます。
食後に摂取する
乳酸菌を摂取するならタイミングも重要です。
「食後」に摂ると、乳酸菌が生きたまま腸に届きやすくなり、その効果がより高まると考えられています。
その理由は、胃の中の環境にあります。
空腹時の胃は、胃酸によりpHが1〜2程度の強い酸性になっており、細菌やウイルスなどの侵入を防いでいます。しかし、乳酸菌も例外ではなく、多くが死滅してしまいます。
一方、食後は胃酸が薄まっており、pHが3〜5程度と酸性が弱くなります。乳酸菌の生存率もやや高まり、腸へ到達しやすくなるのです。
乳酸菌の中には「胃酸耐性」が高い種や菌株もありますが、多くの乳酸菌はそうではありません。
摂取タイミングの影響も大きいため、食後のデザートなどで乳酸菌を取り入れるのが理想的です。
昼食や夕食後にプレーンヨーグルトを摂るだけでも、効果的な腸活につながります。
継続的に摂取する
乳酸菌の効果を十分に得るには、「継続的な摂取」が欠かせません。摂取した乳酸菌が腸内に定着することは、容易ではないためです。
腸内フローラは、常に変化している一方、既存の腸内細菌が絶妙なバランスを保っています。
そのため、摂取した乳酸菌が腸に到達しても、簡単には定着せず、元の状態に戻ってしまいやすいのです。
毎日の継続的な乳酸菌の摂取が、腸内フローラによい影響を与える鍵となります。
まとめ
乳酸菌には、腸内環境の改善や免疫力アップ、美肌効果、アレルギー症状の緩和など、健康と美容に役立つ多くの効果があります。
こうした効果を活かすには、継続して摂取することが大切です。
ヨーグルト、チーズ、味噌、キムチなど、乳酸菌を含む食品をバランスよく取り入れることで、腸内フローラを整えやすくなります。
空腹時を避けて、食物繊維と一緒に摂ると理想的です。
毎日の食事に乳酸菌を取り入れて、体の内側から調子を整え、健康維持に役立てましょう。