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牛乳は、カルシウムやたんぱく質をはじめとする豊富な栄養が含まれていて、健康を支えるさまざまな効果がある食品です。
骨や筋肉の健康維持、安眠のサポート、腸内環境の調整などの働きが期待できます。
この記事では、牛乳がもつ効果を詳しく解説し、含まれる栄養素や飲むときの注意点も紹介します。
牛乳に含まれる栄養素

牛乳には、とくにカルシウムやたんぱく質が豊富ですが、それ以外にもさまざまな栄養素が含まれます。
栄養素など | 100g当たりの含有量 |
---|---|
エネルギー | 61 kcal |
たんぱく質 | 3.3 g |
脂質 | 3.8 g |
炭水化物 | 4.8 g |
カリウム | 150 mg |
カルシウム | 110 mg |
マグネシウム | 10 mg |
リン | 93 mg |
ビタミンB1 | 0.04 mg |
ビタミンB2 | 0.15 mg |
ビタミンD | 0.3 μg |
普通牛乳(乳脂肪分3.8%)の場合
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
牛乳には、カルシウム以外にも、マグネシウム・カリウム・リンなどのミネラルも含まれます。
三大栄養素の中では、脂質も多めです。カロリーなどが気になる人は、低脂肪牛乳や無脂肪牛乳を選んでもよいでしょう。
市販の牛乳には、カルシウムや鉄を強化したものもあり、目的の効果や栄養素に合わせて選ぶことができます。
牛乳に期待できる効果

牛乳には、豊富に含まれる栄養素により、さまざまな効果が期待できます。
この章では、健康維持に深く関わる5つの効果を紹介します。
骨を丈夫にする
牛乳には、骨を丈夫にするカルシウムが豊富に含まれています。
カルシウムは、私たちの体に最も多く存在するミネラルで、骨や歯の形成や健康維持に欠かせません。
また、カルシウムはそれほど吸収率が高くない栄養素ですが、牛乳のカルシウムは比較的高い吸収率を誇ります。
牛乳には、乳糖やカゼインホスホペプチド、ラクトフェリンなどの、カルシウムの吸収を助ける成分が含まれていることが大きな要因です。
ある研究では、食品ごとのカルシウム吸収率が調べられ、小魚で約33%、野菜で約19%に対し、牛乳では約40%という結果が得られています。
参考:上西 一弘ほか「日本人若年成人女性における牛乳, 小魚 (ワカサギ, イワシ), 野菜 (コマツナ, モロヘイヤ, オカヒジキ) のカルシウム吸収率」
牛乳には、カルシウムとともに骨を構成するリンや、カルシウムが骨に沈着する手助けをするビタミンDも含まれています。
牛乳をこまめに摂取すると、骨が丈夫になり、骨折のリスクを減らすことが期待できるでしょう。
筋肉の成長や維持を助ける
牛乳に含まれるたんぱく質・アミノ酸は、筋肉の成長や維持に役立ちます。
牛乳のたんぱく質には、BCAAと呼ばれる分岐鎖アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン)が多く含まれることも特徴です。
BCAAは、筋肉の合成を助け、筋肉痛や運動による疲労を軽減する効果もあります。
若い世代では、運動後すぐに牛乳を摂取することで、筋肉の合成を促しやすくなります。
一方、高齢者では効果が出るまでに時間がかかる傾向もあるので、運動前に牛乳を摂っておくとよいでしょう。
安眠をサポートする
牛乳には、安眠をサポートするトリプトファンというアミノ酸と、カルシウムが豊富です。
トリプトファンは、セロトニンというホルモンを経て、体内で睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」に変換されます。
カルシウムは、神経をリラックスさせ、ストレスの軽減に役立ちます。
寝つきが悪いときは、牛乳をホットミルクにして飲むと、穏やかに眠りにつきやすくなるでしょう。
熱中症対策に効果的
牛乳は、熱中症対策にも効果的な食品です。水分やミネラルを補給できるだけでなく、汗をかきやすい体づくりをサポートする働きもあるためです。
牛乳には、発汗で失われやすいナトリウムが含まれています。水分と一緒にミネラルが補給できる点は、スポーツドリンクに似ています。
さらに、牛乳には血液量を増やす効果もあり、これが暑さに負けない体づくりにつながるとされています。
牛乳には、「ホエイプロテイン」などのたんぱく質が豊富で、血液中の「アルブミン」というたんぱく質の材料にもなります。
このアルブミンには、水分を血管内に集めて保持する働きがあり、血液量を維持・増加させる役割があるのです。
血液量が増えると、汗をかきやすくなり、体内の熱を効率よく逃がせるようになります。
このように、牛乳は水分・ミネラル補給に加えて、暑さに適応した体をつくる助けにもなる飲み物です。
腸内環境を整える
牛乳に含まれる乳糖は、腸内細菌の栄養源となり、腸内環境を整える効果があります。
腸内の善玉菌が乳糖を分解すると、乳酸や酢酸などの有機酸が生成します。
有機酸には、腸のぜん動運動を活発にする働きがあり、便秘の予防や改善に効果的です。
さらに、有機酸によって腸内環境が酸性に傾くと、善玉菌が増えやすくなる一方、悪玉菌の増殖が抑えられます。
便秘や悪玉菌の増殖を防ぐことで、有害物質の蓄積や生成を抑え、より良好な腸内環境が保たれます。
ただし、体質や牛乳の摂取量によっては、後述する「乳糖不耐症」によりお腹が緩くなることもあるため気を付けましょう。
牛乳を飲むときの注意点

牛乳を飲むときには、いくつかの注意点があります。
不調を引き起こすことがある要因としては、「アレルギー」と「乳糖不耐症」があります。両者は症状が似ていることもありますが、原因は大きく異なります。
また、牛乳はリンやカリウムが多いことにも注意が必要です。
この章では、それぞれの注意点を順に解説します。
牛乳アレルギー
牛乳アレルギーは、牛乳に含まれるカゼインやβ-ラクトグロブリンなどのたんぱく質が原因で起こるアレルギーです。
乳幼児によくみられますが、成長とともに改善されることが多く、就学前に自然に改善するケースが多いです。
アレルギー反応は、牛乳の摂取から数分後に現れることが一般的ですが、数時間かかることもあります。子どもに初めて牛乳を与えるときは、慎重に見守ることが大切です。
以下のようなアレルギー症状が出た場合は、速やかに医師の診断を受けてください。
- 胃痛・吐き気・下痢などの消化器症状
- 発疹やかゆみなどの皮膚症状
- 喉・唇・舌の腫れ、呼吸困難などの重篤なアレルギー症状(アナフィラキシー)
なお、牛乳と牛肉では含まれるたんぱく質の種類が異なるため、牛乳アレルギーの人でも牛肉は問題なく食べられる場合が多いとされています。
乳糖不耐症
乳糖不耐症とは、牛乳に含まれる乳糖を分解する消化酵素「ラクターゼ」が、小腸で不足している状態を指します。
牛乳を飲んだあとに、消化不良や腹部の不快感、腹痛、下痢などの症状が現れるのが特徴です。
腸での乳糖の消化吸収が追いつかず、浸透圧の影響で腸内に水分が引き込まれたり、腸内細菌が多量の乳糖を分解してガスが発生したりすることが、不快な症状の原因になります。
ラクターゼの分泌は年齢とともに減少するため、子どものころは平気でも、大人になると症状が現れるケースもあります。
乳糖不耐症の程度には個人差があり、少量ずつ飲む、温かくして飲むなどの工夫で、症状が緩和されることも多いです。
必要に応じて乳糖をカットした製品を選ぶなど、体質に合わせた飲み方をするとよいでしょう。
リン・カリウムの摂取量
牛乳には、リンやカリウムなどのミネラルが豊富に含まれています。
これらは、重要な栄養素である一方、腎臓の機能に障害がある方など、摂取制限が必要な場合は注意が必要です。
リンを摂りすぎると、血中でカルシウムとのバランスが崩れて、骨が弱くなったり、血管や腱が石灰化したりすることがあります。
カリウムを摂りすぎると、心臓の機能に影響が生じ、最悪の場合は致死性の不整脈につながる可能性もあります。
一般的に、リン制限がある場合は800mg/日以下、カリウム制限がある場合は1500mg/日以下が摂取基準とされることが多く、牛乳1本(1L)でも超えてしまいやすい量です。
医療機関などから摂取制限を受けている人は、牛乳を飲む量に注意しましょう。
まとめ
牛乳は、カルシウムやたんぱく質をはじめとする栄養素が豊富な食品です。
骨を丈夫にしたり、筋肉の成長や維持を助けたりするだけでなく、熱中症対策にも効果が期待できます。
牛乳を飲む際は、アレルギーや乳糖不耐症などに注意して、体質に合った量を飲むように心がけましょう。