目次
緑黄色野菜に豊富に含まれるβ-カロテンは、体内でビタミンAとして働き、目や肌の健康維持に役立つ栄養素のひとつです。
さらに、強い抗酸化作用により、生活習慣病を予防する効果も期待されています。
この記事では、β-カロテンの効果をはじめ、多く含まれる野菜や果物、効果的な摂取方法を詳しく解説します。
β-カロテンの主な効果

β-カロテンとは、とくに緑黄色野菜に多く含まれる、植物が作り出す赤橙色のカロテノイド色素です。
体内で必要に応じてビタミンAに変換されるうえ、β-カロテン自体も抗酸化作用を持ちます。
そのため、レバーやウナギなどの動物性食品に豊富なビタミンAと同様の働きに加え、抗酸化作用による健康効果も期待できる栄養素です。
この章では、とくに注目すべきβ-カロテンの4つの効果を解説します。
効果①抗酸化作用
β-カロテンには、体内で過剰に発生した活性酸素の影響を抑える抗酸化作用があります。
活性酸素は、紫外線・喫煙・ストレス・疲労などによって増加し、老化や動脈硬化といった生活習慣病を引き起こすと考えられています。
β-カロテンは、この活性酸素の働きを抑える働きがあり、老化を防ぎ、肌や血管などの健康維持に役立つ成分です。
β-カロテンを積極的に摂ることで、若々しく長生きするためのアンチエイジングに役立ちます。
効果②肌の健康維持
β-カロテンは、体内でビタミンAに変換されることで、肌の健康を保つ働きがある栄養素です。
肌のターンオーバーを整え、乾燥・肌荒れ・ニキビ・シミなどの肌トラブルを予防する効果が期待できます。
β-カロテンには先述した抗酸化作用もあるため、美肌作りを多方向からサポートします。
紫外線が気になる夏や、乾燥が気になる冬には、とくに積極的に摂りたい栄養素です。
効果③目の健康維持
β-カロテンは体内でビタミンAとして働き、目の健康を支えます。
ビタミンAは、網膜で光を感じる「ロドプシン」という物質の合成に必要で、視力を保つために欠かせません。
ビタミンAが不足すると、暗い場所で見えにくくなる夜盲症になることがあります。
また、ビタミンAは涙の分泌を促進し、角膜の表面を保護するため、ドライアイや目のかすみ、疲れ目の予防にも有効です。
β-カロテンは、ビタミンAとして働くことで、目を酷使する人にもうれしい効果をもつ栄養素です。
効果④免疫機能の維持
ビタミンAとして働くβ-カロテンには、免疫機能を維持する働きもあります。
ビタミンAは、喉や腸などの粘膜を健康に保ち、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ免疫機能に関わっているためです。
ビタミンAが不足すると、免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすくなってしまいます。
風邪を予防するには、緑黄色野菜や果物からβ-カロテンを摂り、ビタミンAの不足を防ぐとよいでしょう。
β-カロテンが豊富に含まれる食べ物

β-カロテンは植物性食品に含まれる栄養素で、にんじん・ほうれん草・小松菜などの緑黄色野菜や、赤肉メロン・あんずなどの果物に豊富です。
この章では、β-カロテンを多く含む野菜や果物を紹介します。
なお、β-カロテンは体内でビタミンAとして働くため、1日に摂取すべき量は、β-カロテン単独では定められていません。
代わりに、ビタミンAとしての効力で換算した「レチノール活性当量(μgRAE)」が用いられ、ビタミンA(レチノール)などと合算した摂取量として扱われます。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、30~64歳の場合、男性で1日に900μgRAE、女性で700μgRAEの摂取が推奨されています。
この記事の表では、β-カロテンの含有量とレチノール活性当量を併記しています。
緑黄色野菜
野菜は、β-カロテンの含有量に応じて、原則として100gあたり600μg以上のものが緑黄色野菜に、その他が淡色野菜に分類されています。
そのため、緑黄色野菜はいずれもβ-カロテンが豊富です。
代表的な緑黄色野菜と、生野菜100gあたりの含有量を表にまとめます。
野菜 | β-カロテン (μg/100g) | レチノール活性当量 (μgRAE/100g) |
---|---|---|
しそ(葉) | 11000 | 880 |
モロヘイヤ | 10000 | 840 |
にんじん (皮つき) | 6900 | 720 |
春菊 | 4500 | 380 |
ほうれん草 | 4200 | 350 |
にら | 3500 | 290 |
小松菜 | 3100 | 260 |
かぼちゃ (西洋かぼちゃ) | 2500 | 210 |
ミニトマト | 960 | 80 |
赤ピーマン | 940 | 88 |
ブロッコリー | 900 | 75 |
トマト | 540 | 45 |
青ピーマン | 400 | 33 |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
なお、トマトや青ピーマンは、β-カロテン含有量が分類基準より少ないものの、摂取量の多さから例外的に緑黄色野菜に分類されています。
また、レチノール活性当量は、β-カロテン・α-カロテン・β-クリプトキサンチンの3成分の含有量に基づき算出されるため、必ずしもβ-カロテンの含有量には比例しません。
果物
果物は、緑黄色野菜に比べるとβ-カロテンが少ない傾向がありますが、一部の果物には豊富です。
とくにβ-カロテンが多い果物について、100gあたりの含有量を表にまとめます。
果物 | β-カロテン (μg/100g) | レチノール活性当量 (μgRAE/100g) |
---|---|---|
メロン (赤肉種) | 3600 | 300 |
あんず | 1400 | 120 |
スイカ | 830 | 69 |
マンゴー | 610 | 51 |
びわ | 510 | 68 |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
とくに赤肉メロンは、果物の中ではトップクラスのβ-カロテン含有量を誇ります。
ただし、橙赤色の色素であるβ-カロテンは、緑肉のメロンにはあまり含まれない(140μg/100g)ことに注意しましょう。
果物は手軽に摂取しやすく、ビタミンCや食物繊維を一緒に補える点も魅力です。
β-カロテンを効果的に摂取する方法

β-カロテンは、脂質と一緒に摂取すると吸収率が高まり、ビタミンCやEと一緒に摂るとより高い抗酸化作用を発揮します。
この章では、β-カロテンの効果を高める摂取方法を解説します。
脂質と一緒に摂取する
β-カロテンは、非常に水に溶けにくいため、腸での吸収率が低い栄養素です。
しかし、脂質には溶けやすい性質があり、植物油や肉類の脂などと一緒に摂取すると、吸収率が向上します。
そのため、β-カロテンが豊富な食材を食べるときは、油を含むドレッシングで和えたり、脂質の多い食材や料理と組み合わせたりするのが効果的です。
また、β-カロテンは加熱に強いため、揚げ物や炒め物といった油を使った調理法にも適しています。
ビタミンC・Eと一緒に摂取する
β-カロテンには、強い抗酸化作用があります。
同じく抗酸化作用を持つビタミンCやEと一緒に摂取すると、より高い抗酸化作用を発揮し、老化や生活習慣病の予防効果が高まります。
ビタミンCやEは、以下のような食べ物に多く含まれています。
- ビタミンC
パプリカ、ブロッコリー、キウイ、いちごなど - ビタミンE
アーモンド、アボカド、かぼちゃなど
ビタミンEは、β-カロテンと同じく脂溶性の物質で、細胞膜などで脂質の酸化を防ぐ働きがあります。
一方、ビタミンCは水溶性のため、β-カロテンやビタミンEが働きにくい細胞内や血液中で抗酸化作用を発揮します。
まとめ
β-カロテンは、体内でビタミンAとして働き、肌・目・免疫機能などの健康維持に関わっている栄養素です。
強い抗酸化作用もあるため、肌や血管の健康維持を助け、アンチエイジングにも役立ちます。
にんじんやほうれん草などの緑黄色野菜や、赤肉メロンなど一部の果物に豊富で、脂質と一緒に摂ると吸収率を高めることができます。