爽やかな甘味とジューシーな果汁に、軽やかな食感が魅力の梨。
梨の産地といえば何県が思い浮かぶでしょうか?
本記事では梨の産地として有名な都道府県および国とその理由や人気の品種、おいしい梨の選び方、正しい保存方法などを解説します。
梨の産地といえば?日本と世界の主な名産地&各県の特徴

梨は各地で栽培されていますが、生産量では特定の県・国が多くの割合を占めています。
参考:
農林水産省 / 令和5年産日本なし、ぶどうの結果樹面積、収穫量及び出荷量
農林水産省 / 福島県産日本梨の出荷量の推移
農林水産省 / 特産果樹生産動態等調査(令和4年度)
FAOSTAT / Crops and livestock products(2023)
【全国版】梨の名産地5県
日本国内で梨(日本梨)の収穫量が多い都道府県は以下の5県で、国内全体の収穫量の45%を占めています。
- 1位:千葉県
- 2位:茨城県
- 3位:栃木県
- 4位:福島県
- 5位:鳥取県
梨の種類は日本梨・洋梨・中国梨に分けられますが、日本で生産されている梨はほとんどが日本梨(和梨)です。
【東京・大阪版】それぞれの梨の名産地5県
東京と大阪の各卸売市場での取扱量は、以下のように各市場に近い産地の取扱量が多い傾向にあります。
【主要中央卸売市場における青果物取扱量上位5都道府県】
| 市場名 | 取扱量上位5都道府県 |
|---|---|
| 東京都中央卸売市場 | 1位:栃木県 2位:福島県 3位:茨城県 4位:千葉県 5位:新潟県 |
| 大阪市中央卸売市場 | 1位:徳島県 2位:鳥取県 3位:福島県 4位:新潟県 5位:長野県 |
東京と大阪での主な産地の違いは、産地からの鮮度や輸送のしやすさなどから来ていると考えられます。
【世界版】海外の梨の名産地5ヶ国
日本以外の国では生産量順に中国、インド、イタリア、トルコ、アルゼンチンと続きます。
とくに、中国は世界的に見ても梨の一大産地で、世界の梨の約70%が中国で生産されているほどです。
ちなみに、中国梨は見た目は洋梨に近く、味は日本梨に近い特徴を持っています。
千葉県
千葉県の温暖な気候と火山灰土壌が梨の栽培に適しており、全国の収穫量のうち12%を千葉県産が占めています。
温かい気候のおかげで開花時期が早く、収穫時期も早まるため、他の地域に先駆けて収穫できるのも強みです。
茨城県
茨城県は昼夜の寒暖差が大きい気候条件と、豊かな水資源が梨の栽培に向いています。
昼と夜の温度差が大きいと梨の甘味が増し、糖度の高い梨になります。
茨城県で生まれたオリジナル品種の「恵水(けいすい)」は、大玉で豊かな甘味と芳醇な香りが特長の新品種です。
栃木県
栃木県は、「肥沃な土壌」「日照時間の長さ」「夏と冬の温度差が大きい」という好条件で梨の栽培が盛んです。
栃木県のオリジナル品種「にっこり」は重さが約1kgととても大きく、食べごたえがあるだけでなく高い糖度も大きな特長のひとつとなっています。
福島県
奥羽山脈より東側の、温暖な気候で排水性の良い土壌を持つ地域で梨が多く生産されています。
福島市の萱場地区では古くから梨が栽培され、「萱場梨」と呼ばれるほどの知名度を誇ります。
鳥取県
鳥取砂丘のある砂丘地帯は水はけが良く、夏と冬の寒暖差が大きい気候と日照条件の良さが梨の栽培にうってつけです。
鳥取県は梅雨の降水量が比較的少ないために、梨が病気にかかりにくいのも有利に働きます。
鳥取県を代表する品種である二十世紀梨の生産量では、鳥取県が全国でも圧倒的なシェアを獲得しています。
梨の生産に適した土地の条件

特定の県で梨の生産量が多い理由として、各県が梨の栽培に適した土地であることが挙げられます。
日照時間が長く水はけが良い
年間を通して太陽がでている時間が長く、かつ排水性に優れた土地が、梨栽培に適している条件です。
日照時間が長いと光合成が盛んに行われ、梨の木と実の生育に良い影響を与えます。
温暖な気候
日本梨の生育は、4月から10月の平均気温が19℃~21℃と暖かい地域が適地です。
温暖な地域であるほど糖度が高くなり、甘くておいしい梨に成長します。
一方、洋梨は年間平均気温が7℃~15℃と、涼しい土地の方が向いています。
春に適度に雨が降る
3月から4月に適度な降水量があると発根や発芽の条件が良くなり、梨の生育に有利になります。
晴れ間が多く日照時間が長いことも重要ですが、十分な雨が降ることも良い梨が育つ条件として欠かせません。
梨の人気の品種5選

古くから栽培されている梨にはたくさんの品種がありますが、中でも人気の5品種を紹介します。
赤梨と青梨
日本梨は品種とは別に、赤梨と青梨に分けられます。
赤梨は果皮が赤みがかっており、表面にザラザラとした斑点があるのが特徴です。
一方、青梨は果皮が黄緑色で表面はすべすべとしています。
味わいにも違いがあり、赤梨はしっかりとした甘味と豊かな果汁、青梨はスッキリとした甘さと爽やかな酸味を持ちます。
幸水(こうすい)
幸水は日本梨の中でも、最も生産量の多い赤梨のひとつです。
甘味と酸味のバランスが良く、果汁も豊かでさっぱりとしたおいしさが特徴です。
幸水の主な産地は千葉県、茨城県、栃木県などが挙げられます。
豊水(ほうすい)
豊水は、幸水に次いで生産量の多い赤梨の品種です。
果肉はやや柔らかく、豊かな甘味と程良い酸味で濃厚なおいしさを味わえます。
豊水は千葉県、福島県、栃木県などで多く生産されています。
二十世紀
青梨に分類される二十世紀は、さっぱりとした甘味と適度な酸味、果汁のジューシーさが特徴です。
現在は鳥取県が特産地の二十世紀梨ですが、もともとは1888年に千葉県で発見された品種です。
1904年になって二十世紀を代表する品種になるようにとの願いで、「二十世紀」と命名されました。
二十世紀は、鳥取県以外だと山口県と京都府での生産量が多いです。
新高(にいたか)
新高は実が大ぶりで食べごたえがあるだけでなく、甘味に対して酸味が控えめなため、実際の糖度よりも甘く感じられる赤梨です。
果肉は柔らかめでジューシー、軽い食感も楽しめる点が特徴で、熊本県、千葉県、新潟県が主な産地です。
ラ・フランス
ラ・フランスは、日本で最も生産量が多い洋梨の一品種です。
しっとりとした柔らかな果肉と高い糖度、そして芳醇な香りを持ち、日本梨とは全く異なる魅力を感じられます。
ラ・フランスは、圧倒的なシェアを誇る山形県以外にも青森県、長野県で作られています。
おいしい梨の選び方

日本梨と洋梨では良い梨の基準が少し異なります。
日本梨を選ぶポイント
良い日本梨を選ぶポイントとして、以下の3点をチェックするのがおすすめです。
- ずっしりと重い
- 皮にハリがあり、傷がない
- 軸が太く、果皮に色ムラがない
なお、赤梨と青梨で完熟度を見るポイントにも違いがあります。
赤梨の果皮にはザラザラとした斑点がありますが、熟すにつれて滑らかになっていきます。
熟した赤梨を選びたい場合は、果皮のざらつきが少ないものを選びましょう。
一方、青梨の完熟度が高くなるほど果皮が黄色っぽくなるため、緑色よりも黄色が強いものを選ぶのがおすすめです。
洋梨を選ぶポイント
良い洋梨を選ぶポイントとして、以下の3点をチェックしましょう。
- 柔らかすぎない
- 重くてハリがあり、傷や変色がない
- 軸がしぼんで枯れてきている
洋梨は買ってから追熟させて食べるケースも多く、完熟度を見ることがおいしい洋梨を食べるコツです。
軸が枯れてきている場合は熟しているサインであるため、すぐに食べられます。
一方、柔らかくなりすぎている洋梨は、熟しすぎて傷んできているサインなので避けましょう。
梨の保存方法

日本梨・洋梨ともに適切な方法で保存すると、よりおいしく食べられます。
日本梨の保存方法
日本梨のおいしさ・鮮度を保つためには、以下の手順で保存してください。
- キッチンペーパーか新聞紙で梨を包み、ポリ袋に入れる
- 軸のあるヘタを下にして、冷蔵庫の野菜室で保存
梨の水分が飛んでいかないよう紙とポリ袋で包み、冷えすぎないよう野菜室で保存しましょう。
ヘタを下にすると梨の呼吸をおさえられ、鮮度をより保ちやすくなりますが、保存期間は1週間ほどであるため早目に食しましょう。
洋梨の保存方法
洋梨の場合は、完熟前後で以下のように適切な保存方法が異なります。
【完熟していない場合】
- 洋梨をキッチンペーパーか新聞紙で包む
- 直射日光の当たらない常温の場所に置き、1日~2日ごとに完熟度をチェックする
- 適度に柔らかくなり、甘い香りがするまたは果皮が黄色くなったら完熟したサイン
【完熟している場合】
- 洋梨をキッチンペーパーか新聞紙で梨を包んでポリ袋に入る
- 冷蔵庫の野菜室で保存
完熟するまでの日数は買ったときの完熟度や保存温度によって変わるため、洋梨の状態をこまめにチェックしてください。
完熟した洋梨の保存期間は約3日~7日であるため、日本梨と同様に早目に食しましょう。
まとめ
梨の有名な産地は千葉県、茨城県、栃木県、福島県、鳥取県などが挙げられるほか、大阪の市場では徳島県、新潟県、長野県からも多く仕入れられています。
上記の県に共通するのは、梨の栽培に適した気候や土壌の条件がそろっている点です。
次に梨を買うときは、産地の違いを意識して味わってみてはいかがでしょうか。












