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2022年度の税制改正により、住宅ローン控除の概要が大きく変りました。
2022年に入ってから住宅を購入した人の中には、自分はどの控除枠に該当するのか分からない人もいるのではないでしょうか。
今回は、2022年度の税制改正後の住宅ローン控除の概要を解説するとともに、2022年以降に住宅を購入する人が知っておきたいポイントについても紹介します。
住宅ローン控除の仕組み
住宅ローン控除とは、正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、自分が居住する住宅を、住宅ローンを利用して購入した場合に受けることができる税額控除の制度です。
対象となる住宅は新築だけでなく、中古も含まれますし、増改築の場合は、2020年の11月末までに住宅の取得などにかかる契約を締結していれば対象です。
控除額は、年末の借入残高の0.7%で、所得税額から差し引かれます。
所得税額から差し引いても控除額が余る場合は、住民税から差し引かれます。
2022年度の税制改正では、所得制限の緩和や、環境へ配慮した住宅への優遇措置のほか、中古住宅への条件緩和などが行われました。
新築か中古かで住宅ローン控除の内容が異なる
新築住宅とは、「建設されてから1年未満で、誰も入居したことがない住宅」を指します。
そのため、不動産会社がオーナーとなり、建築したばかりの住宅や、買取再販住宅も新築住宅に該当します。
中古住宅とは、新築住宅に該当しない全ての住宅を指します。
オーナーが個人で、不動産会社が仲介して販売している住宅などが当てはまります。
そして、中古住宅と新築住宅では、住宅ローン控除の内容や適用条件が、以下の表のように異なる点に注意が必要です。
新築住宅(法人売主) | 中古住宅(個人売主) | |
---|---|---|
控除率 | 0.7% | |
控除期間 | 13年 | 10年 |
控除上限額 | 最大35万円(年間) | 最大21万円(年間) |
控除率と控除期間
住宅ローン控除の控除率は、新築および中古に関係なく0.7%です。
なお、以前の控除率は1%でしたが、改正によって2022年度以降0.7%に縮小されました。
また、これまで控除期間は一律10年でしたが、改正後は、新築の場合は13年、中古の場合は10年となりました。
控除限度額
控除額は毎年の年末時点のローン残高に0.7%を乗じて求めます。そのため、返済が進んでいくにつれ、控除額も減ることになります。
控除対象となるローン残高には、2,000万円~5,000万円までの上限が設けられています。これは入居年や、新築か中古か等の条件によって決まります。
新築住宅でも、住宅の種類によって限度額が異なる点に注意が必要です。
住宅の種類 | 年末のローン残高の限度額 | ||
---|---|---|---|
2022〜2023年入居 | 2023〜2024年入居 | ||
新築住宅 | 長期有料住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |
その他の住宅 | 3,000万円(2023年までの建築確認が取れる場合、2,000万円) | ||
中古住宅 | 認定住宅 | 3,000万円 | |
その他の住宅 | 2,000万円 |
この表のとおり、中古住宅で認定住宅なら年間最大で21万円、その他の住宅なら14万円の控除が受けられます。新築だと、最大35万円の控除が適用されます。
住宅ローン控除が適用される条件
住宅ローン控除が適用される条件は、新築と中古で異なる場合があります。
控除の適用要件をしっかりと理解しておきましょう。
住宅ローン控除の共通条件
住宅ローン控除が適用される共通の要件は以下の通りです。
新築・中古の共通条件
- マイホームであること
- 合計所得金額2,000万円以下(ただし、床面積が40平米以上50平米未満の場合は1,000万円以下)
- 住宅の登記簿面積が50平米以上
- 住宅ローンの借入期間が10年以上あること
- 贈与で取得した住宅ではない
- 住宅の取得にかかる借り入れを親族から受けていない
中古住宅特有の条件
そして、中古住宅特有の条件として以下のものがあります。
中古住宅特有の条件
- 1982年以降に建設された住宅であること
2022年度の改正により、中古住宅の場合、1982年以降に建設された住宅であれば、住宅ローン控除の適用対象となりました。
従来は耐震性を考慮し、築年数が25年以内(木造だと20年以内)という条件が設けられており、築25年を超える場合は、建築士などの検査を行い「耐震基準適合証明書」や「既存住宅性能評価書」などの証明書を用意しなければなりませんでした。
改正によって築年数の条件が廃止されたことにより、これらの手続きは不要になったため、中古住宅で築年数が古いものであっても住宅ローン控除が適用されやすくなりました。
住宅ローン控除を利用する方法
住宅ローン控除は自動的に適用されるものではありません。
控除を受けるためには、申請を行う必要があります。控除適用期間は、忘れずに申請しましょう。
申請方法は、給与所得者と事業所得者で異なります。
また給与所得者の場合は、初年度と2年目以降で異なりますので、注意してください。
住宅ローン控除の申請方法
- 給与所得者:初年度は確定申告、2年目以降は年末調整
- 事業所得者:確定申告
確定申告の時期は、入居した翌年の2月16日~3月15日であることも覚えておきましょう。
確定申告で必要な書類
初年度に住宅ローン控除の適用を受ける場合は、必ず確定申告で行います。
その際には、多くの書類が必要になりますので、事前の準備を怠らないようにしておきましょう。
初年度の確定申告時に必要な書類には、以下のものがあります。
初年度の確定申告で必要な書類
- 確定申告書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 取得した不動産の登記簿謄本
- 不動産の売買契約書または工事請負契約書
- マイナンバーカードまたは通知カードと本人確認書類
- 源泉徴収票
年末調整で必要な書類
給与所得者であれば、2年目以降は勤務先での年末調整で控除を受けられます。
その際に必要になる書類は以下のとおりです。
年末調整で必要な書類
- 住宅借入金等特別控除申告書(税務署より送付)
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関より送付)
この2種類の書類を年末調整の書類と合わせて会社に提出するだけで申請が終了します。
2022年以降に住宅購入する人が知っておきたいポイント
2022年度の改正により、住宅ローン控除の内容に関してもいくつか変更されました。
そこで、2022年以降に住宅の購入を考えている人に向け、知っておいてもらいたいポイントを紹介します。
大まかにまとめると以下の通りです。
2022年以降に住宅購入予定がある人が知っておきたいポイント
- 環境に配慮した住宅は優遇される
- 住宅ローン控除の変更点
- 火災保険料の値上げ・契約期間短縮
住宅ローン控除の変更点
改正後の住宅ローン控除は、長期優良住宅や低炭素住宅など、環境に配慮した住宅が優遇される内容になっています。
今後、住宅を購入する際には、長期優良住宅や省エネ住宅などを選ぶことがポイントです。
さらに、控除率が変更になったことや、住宅の種類によっては控除期間が13年ではなく10年になる点も覚えておきましょう。
火災保険料の値上げ・契約期間短縮
火災保険とは、火災を始め、落雷・爆発・風災・雪災・雹災や水漏れなど、火災によって建物や家財に損害が発生した場合に保険金が支払われる、損害保険の1つです。
火災保険料については見直しが行われ、2022年10月以降、全国平均で10.9%引き上げられました。
さらに、長期的なリスク評価が難しくなっていることに対応するため、それまで最長10年だった契約期間が5年に短縮されています。
保険料値上げの主な背景には、自然災害の増加があります。
2019年から2020年においても、大規模な自然災害は発生しており、このことが保険料の引き上げの要因となっています。
今回の保険料見直しや契約期間の短縮を踏まえ、2022年10月以前から継続で同じ火災保険に加入している人は、一度見直しや確認を行っておくことをおすすめします。
まとめ
住宅ローン控除の内容は、2022年度の制度改正により大きく変りました。
控除の条件が変更されたほか、環境に配慮した住宅が優遇されるようになりました。
控除が適用される住宅ローンの借入限度額も、住宅の種類や入居した年によって異なるほか、控除が適用される期間も新築と中古で異なるなど細かく決められていますので、今後住宅の購入を考えている人は、住宅ローン控除の適用条件も踏まえながら、物件を決める必要があります。
また、住宅ローン控除の適用を受けるには、毎年申請が必要です。
特に初回の申請は、給与所得者か事業所得者かにかかわらず確定申告で行う必要がありますが、提出する書類が多いため、事前にもれなく準備しておくようにしましょう。