目次
所得税とは

所得税とは、所得に対してかかる税金です。所得税の課税対象となる所得には、様々な種類があります。
また、税率は所得金額により異なり、所得が増えるほど所得税の税率は高くなると覚えておきましょう。
課税される所得の種類
課税される所得には様々な種類があり、所得税の種類によって総合課税になるか分離課税になるかが決まります。
総合課税はその他の所得と合算しますが、分離課税はその他の所得と分けて計算しなくてはいけません。
また、分離課税の中には申告分離課税と源泉分離課税があります。
申告分離課税はその他の所得と分離して計算し、確定申告をします。
源泉分離課税は、所得を支払う者が支払い時に一定の税率で源泉徴収することで納税が終了する仕組みです。
所得の種類は下記の10種類です。
利子所得
利子払いの際に所得税・住民税が源泉徴収される。
配当所得
原則として総合課税。
不動産所得
総合課税。
事業所得
原則として総合課税。
給与所得
総合課税の対象だが、給与の支払いが発生する都度、源泉徴収される。
退職所得
分離課税。
山林所得
分離課税。
譲渡所得(土地・建物等以外)
総合課税。短期譲渡所得は全額、長期譲渡所得は2分の1の金額を合計する。
一時所得
総合課税。2分の1が他の所得と総合される。
雑所得
原則として相互課税。
参照:国税庁|所得税のしくみ
上述の通り、個人事業主の事業所得やサラリーマンの給与所得などは総合課税となります。
税率は所得によって違う
所得税は超過累進税率となっており、所得が増えるほど税率が高くなります。
<所得税の速算表>
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、課税される所得が8,000,000円の場合、税率は23%と控除額636,000円が適用されます。
8,000,000円×23%-636,000円=1,204,000円
したがって、所得税の額は1,204,000円です。
所得税の計算方法 【給与所得の場合】

所得税を計算する場合には、下記の流れで行います。
- 1.所得を計算
- 2.課税所得金額を計算
- 3.基準所得税額を計算
- 4.復興特別所得税額を計算
- 5.納税額を計算
以下の章では、所得、課税所得金額、基準所得額などの算出方法について、具体的な例を交えながら解説します。
①所得を計算
所得額を計算する際の計算式は以下の通りです。
総収入金額-必要経費=所得
この計算は、自ら事業をしている個人事業主が利用します。
必要経費は、売上原価、総収入を得るために直接要した費用、販売費・一般管理費などのことです。
総収入金額から必要経費を差し引いた額が所得となります。
また、給与所得者の所得を計算する方法は以下の通りです。
給与所得の金額=収入金額-給与所得控除
給与所得者は個人事業主のように必要経費を差し引くことができないので代わりに給与控除を差し引きます。
給与所得控除の額は収入金額により異なりますので、以下の表で確認してください。
給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | |
1,625,001円から 1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から 3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から 6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から 8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
例えば、給与等の収入金額が5,000,000円の場合で計算すると以下の通りです。
【給与所得控除額】
5,000,000円×20%+440,000円=1,440,000円
【給与所得の金額】
5,000,000円-1,440,000円=3,560,000円
このケースでは、給与所得として算出された3,560,000円が課税対象になります。
②課税所得金額を計算
課税所得金額とは、総所得金額から所得控除の合計額を差し引いた金額です。
課税所得金額を求めるために必要な総所得金額とは、次の①と②の合計額に、退職所得金額と山林所得金額をプラスした金額となります。
①事業所得、不動産所得、利子所得、給与所得、総合課税の配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
②総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の2分の1の金額
ここに純損失や雑損失の繰越控除などを調整することで総所得金額が算出できます。
総所得金額が確定したら課税所得金額を計算できるようになりますが、計算式は以下の通りです。
課税総所得金額= 総所得金額-所得控除
具体的には以下の控除が受けられます。
- 雑損控除
- 医療控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄付金控除
- 障害者控除
- 寡婦(寡夫)控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 基礎控除 など
以前は一律だった基礎控除は、納税者本人の合計所得の金額で控除額が変わるようになりました。
基礎控除額については下記の表を参照してください。
納税者本人の合計所得金額 | 控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
③基準所得税額を計算
基準所得税額は、課税所得税額から税額控除を行った額のことです。
基準所得額を求める計算式は以下の通りで、所得額ではなく所得税額から差し引く点に注意しましょう。
基準所得税額=所得税額-税額控除
税額控除としては以下のようなものがあります。
- 配当控除
- 外国税額控除
- 住宅借入金等特別控除
- 住宅特定改修特別税額控除
④復興特別所得税額を計算
復興特別所得税額とは、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が公布されたことにより設けられました。
「復興特別所得税」及び「復興特別法人税」として徴収されます。
復興特別所得税を求める計算式は下記の通りです。
復興特別所得税額 = 基準所得税額 × 2.1%
⑤納税額を計算
最終的に納税する所得税額は、基準所得税額と復興特別所得税額を足し合わせた金額になります。
納税額=基準所得税額+復興特別所得税額
所得税の納付が必要になる場合、事業年度の翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告書の提出及び所得税の納付が必要です。
所得税額を減らすためのポイント

節税によって所得税額の負担を減らせる可能性があることをご存じでしょうか。
ここでは、所得税額をできるだけ抑えるためのポイントを下記のパターンに分けてご紹介します。
- サラリーマンなどの給与所得の場合
- 個人事業主の場合
サラリーマンなどの給与所得の場合
サラリーマンなどの給与所得者が所得税額を抑える方法は、以下の通りです。
- ふるさと納税
- 医療費控除
- 住宅ローン控除
- 生命保険控除
- 地震保険控除
- iDeCo (個人型確定拠出年金) など
サラリーマンなどの給与所得者にとって、一番メジャーな節税対策がふるさと納税でしょう。
ふるさと納税を行った場合、自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となり、確定申告を行った場合は所得税から還付されます。
また、サラリーマンは確定申告ではなく「ワンストップ特例制度」を利用することが可能。
ワンストップ特例制度は、所得税分の還付ではなく、所得税分も含めた控除額全額が翌年度の住民税から控除される仕組みです。
ふるさと納税は前払いで税金を支払うことになるので厳密には節税といえません。
しかし、農産物や工芸品などの返礼品をもらえることを考えると普通に納付するよりふるさと納税を推奨します。
また、自分や家族の医療費を10万円超支払った場合、確定申告をすることで医療費控除を受けることができます。
自分だけではなく家族も含めることができ、出産費用や歯の矯正治療でも利用できるのが特徴です。
さらに、返済期間10年以上の住宅ローンを利用した場合には住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)も活用できます。
年末時点の住宅ローン残高に応じて所得税が控除され、上限金額は年間40万円です。
所得税から控除しきれないケースでは、最高13万6,500円まで住民税からも控除できます。
個人事業主の場合
個人事業主の場合、サラリーマンの節税に加えてできることが増えます。
個人事業主が所得税を抑える方法は以下の通りです。
- ふるさと納税
- 医療費控除
- 住宅ローン控除
- 生命保険控除
- 地震保険控除
- 国民年金基金・iDeco、小規模企業共済
- 青色申請控除
- 必要経費の計上 など
個人事業主の場合、サラリーマンに比べると退職金や厚生年金がないだけに、老後資金を自分で用意しなくてはいけません。
自分で積み立てをする場合、国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済などを活用できます。
国民年金基金とiDecoを合わせた月々の掛金68,000円、小規模企業共済の月々の掛金70,000円は所得から控除でき、所得税を圧縮できるのです。
また、個人事業主が確定申告をする場合、白色申告と青色申告から選択可能。
青色申告のほうが記帳は複雑になりますが、青色申告特別控除として最高10万円、55万円、65万円のいずれかの控除が受けられるのです。
さらに、個人事業主の場合、仕事とプライベートで利用しているものについては家事按分すれば必要経費として計上し、所得を減らすことができます。
例えば、自宅を仕事場としている場合は家賃や光熱費の一部を家事按分して計上できるのです。
インターネット代、スマホの通信費なども含めることができるので、必要経費として計上できるものがないか見直すとよいでしょう。
まとめ
収入が上がるほど所得税の負担は増えます。
サラリーマンの場合、ふるさと納税や住宅ローン控除、医療費控除などを活用することによって節税が可能です。
個人事業主の場合は、国民年金基金・iDeco、小規模企業共済の活用や青色申告控除の利用でサラリーマンよりか節税できる幅が広がります。
まだ対策ができていないという方は、本記事でご紹介した節税方法をぜひ活用してみてはいかがでしょうか。