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住宅ローンは完済まで何十年もの年月がかかる長期ローンであり、金利の動きに応じて借り換えを検討・実行するケースも少なくありません。
ですが借り換えのタイミングによっては必ずしもメリットばかりを受けられるとも限りません。
住宅ローン借り換えで後悔しないために、借り換えを検討するにあたって注意すべき点などをご説明します。
住宅ローン借り換えとは
住宅ローン借り換えとはそれまでローンを組んでいた金融機関とは別の機関でローン契約し、現在のローン残金を一括返済することです。
住宅ローン借り換えを行う場合、メリットとデメリットの双方があります。
住宅ローンの借り換えをするメリット
住宅ローン借り換えによるメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 返済総額を減額できる
- 月々の返済額を減額できる
- 返済期間を短くすることができる
2016年に始まった日銀のマイナス金利政策を背景に、各金融機関で住宅ローン金利も引き下げられました。
その流れに応じて、それまで組んでいたローンよりも金利の低いローンに組み直せば、返済総額や月々の返済額を減らすことも可能です。
住宅ローンの借り換えをするデメリット
一方で、住宅ローン借り換えにはデメリットもあります。
以下がデメリットとして指摘されている点になります。
- 借り換えのための手数料が発生する
- 借り換えのために諸経費がかかる
- 借り換えのタイミングを誤ると、損をする可能性がある
借り換えのタイミングを誤れば、元の住宅ローン返済計画よりも返済総額が上がってしまい失敗するリスクもあります。
また手数料・諸経費だけで100万円以上かかるケースも想定されます。
借り換えにかかる費用負担が大きくなってしまうと、せっかくのメリットが無駄になってしまう可能性もあります。
住宅ローンの借り換えにかかる費用
住宅ローン借り換えにかかる費用は借入額や金融機関の違いなどによって異なります。
内容としては諸経費や各種手数料が挙げられます。
主な費用内容について説明した上で実際にどれぐらいかかりそうなのか、シミュレーション例もご紹介します。
手数料
住宅ローン借り換えの際に発生する手数料としては、融資を実行する事務手数料である融資手数料、不動産仲介会社に代理で契約手続きをしてもらうための斡旋手数料、現在のローンを一括返済するための全額繰り上げ返済手数料、保証会社事務手数料―などが挙げられます。
以下が各料金の目安金額になります。
目安の金額 | |
---|---|
融資手数料 | 3~5万円 |
斡旋手数料 | 5~20万円 |
全額繰り上げ返済手数料 | 1~5万円 |
保証会社事務手数料 | 1~5万円 |
諸費用
住宅ローン借り換えにかかる諸経費には、住宅ローン保証料、ローンの担保として不動産に抵当権を設定するための費用と現在ローンを組んでいる金融機関の抵当権を抹消する費用、金融機関で住宅ローン契約をする際の条件となっている団体信用生命保険や火災保険の保険料―などがあります。
以下が各費用の目安金額になります。
目安の金額 | |
---|---|
住宅ローン保証料 | 借り入れ金額の0.15~0.45% |
抵当権設定費用 | 登録免許税、印紙税、司法書士への 手数料などで異なる |
抵当権抹消費用 | 1000~2万円 |
団体信用生命保険料 | 10万円 |
火災保険料 | 年間15~40万円 |
住宅ローン借り換え手数料のシミュレーション
上の章で紹介した住宅ローン借り換え時にかかる費用について、借入金額2000万円、借入期間20年の場合実際の総額をシミュレーションしてみます。
なお融資手数料は5万円、保証料は0.45%に設定しています。
融資手数料5万円 保証料0.45% | |
---|---|
融資手数料 | 5万円 |
斡旋手数料 | 10万円 |
全額繰り上げ返済手数料 | 3万円 |
保証会社事務手数料 | 3万円 |
住宅ローン保証料 | 9万円 |
抵当権抹消費用 | 1万5000円 |
団体信用生命保険料 | 10万円 |
火災保険料 | 30万円 |
合計 | 71万5000円 |
実際にはこの金額に、ケースに応じて登録免許税、印紙税、司法書士への手数料を調べて抵当権設定費用をプラスする必要があります。
また、地震保険料などほかにも経費がかかればさらに金額はアップします。
住宅ローンを借り換えるおすすめのタイミング
住宅ローンの借り換えは、実行するタイミングを熟慮する必要があります。
借り換えを検討するのに適したタイミングとしては、以下が挙げられます。
- 借り入れたときより金利水準が低くなっているとき
各金融機関のローン金利が引き下げられる可能性があるため、借り換えの恩恵を受けやすくなります。 - 変動金利の金利が高くなったとき
経済状況に応じて金利が上下する変動金利で借り入れを行っていて、金利の上昇が予測される場合に固定金利に乗り換えるケースが当てはまります。 - 収入が下がった・転職を予定しているとき
現状のローン返済の負担が大きく感じられる状態になった際に、さらに低金利のローンに乗り換えて負担軽減を図るケースが当てはまります。
さらに金利タイプごとにも借り換えに適したタイミングがあります。
全期間固定金利タイプへの借り換え
返済期間中の金利が一定となる全期間固定金利タイプのローンであれば、経済状況が変化しても金利が上がるリスクはありません。
そのため、経済状況が変わり変動金利の上昇が予測されるタイミングで固定金利タイプに乗り換えるのは得策といえます。
また現在はマイナス金利を背景に、長期固定であっても1%前後の金利での借り換えも可能な水準になっています。
このような低水準の時期に全期間固定金利タイプに借り換えると、「以後低金利のままローンが返済できる」という安心感を得られるメリットがあります。
変動金利タイプへの借り換え
変動金利タイプは前述した通り経済状況に応じて金利が上下するため、マイナス金利状況が続いている場合などは固定金利タイプよりも低い負担で返済を進めることができます。
2023年現在住宅ローンを新規借り入れしたケースの変動金利は年利0.4%を切るなど、非常に低水準となっています。
長期間に渡って金利が上昇する見込みが薄いのであれば、変動金利タイプの住宅ローンへの乗り換えを検討するのも良策と言えます。
固定期間選択型金利タイプへの借り換え
固定期間選択型金利タイプのローンは返済期間のうち「3年」「5年」「10年」といった一定の間の金利が固定されます。
そのため「ローン返済を計画的に進めたい」期間ができた場合などにおすすめの金利タイプになります。
例えば教育費など大規模な出費が予測されるタイミングに合わせて固定期間選択型タイプに借り換えると金利固定期間中にローン返済額が増えて家計管理の負担が増大するリスクを防げます。
ただし固定期間終了後に同じ銀行でローンを利用し続けると金利が高めになる場合があるため、事前によく確認しておくことが重要です。
住宅ローン借り換えで失敗し後悔しないためのポイント
住宅ローン借り換えでの失敗を防ぐためには、以下の点を考慮して検討することがポイントになります。
- 住宅ローン残高・残年数
- 借り換え前後の金利差
- 諸費用を含めて比較・シミュレーションする
住宅ローン残高・残年数
現在のローン残高が既に少なくなっている場合や返済期間が短い場合などは、ローン借り換えによるメリットが十分に受けられなくなる可能性があるため慎重を期すべきです。
前述した通りローン借り換え自体に多額の経費がかかるため、結果的にはメリットより費用負担の方が大きくなってしまうかもしれません。
目安としては住宅ローン返済残高が1000万円未満、返済期間が10年未満で借り換えをすると、最終的にマイナスになるリスクも覚悟した方が良いでしょう。
借り換え前後の金利差
ほかにも借り換え前後の金利差が小さい場合は要注意です。
借り換え後の金利が借り換え前よりさほど低くならないのであればメリットも小さくなり、やはり「借り換えにかかる経費負担の方が大きくなってしまった」という事態に陥る可能性があります。
具体的には借り換え前後の金利差が年1%を下回る場合は、最終的にマイナスになるリスクも想定した方が良いでしょう。
諸費用を含めて比較・シミュレーションする
住宅ローン借り換えでの失敗を防ぐためには、借り換え後の金利や総支払額、月々の返済額だけでなく借り換えにかかる費用も含めてシミュレーションすることが重要です。
多額の費用負担が生じても現状のローンを続けるより「メリットが大きい」と判断できるなら、借り換えを検討しても良いでしょう。
住宅ローン借り換え時の注意点
ほかにも住宅ローン借り換え時には、予め以下の点を心得ておくことが重要です。
- 借り換え先で再審査が必要
- 団信への再加入が必要
借り換え先で再審査が必要
住宅ローンは借り換えの場合でも、返済能力があるかどうか金融機関がチェックする必要があるため審査を受ける必要があります。
そのため借り換え先の機関での再審査を申し込み、住民票や所得証明書、物件売買の契約書などの必要書類も準備しなければいけません。
そしてもちろん、再審査にパスできなかった場合借り換えは不可能となります。
転職したばかりで収入が不安定だったり他にも多額の借入金がある場合などは、審査のハードルが上がってしまうので注意しましょう。
団信への再加入が必要
金融機関で住宅ローン契約をする際の条件となっている団体信用生命保険(団信)への再加入が必要となります。
団信に加入していると、ローン返済中に契約者が亡くなったり高度障害状態になったりした際、ローン残高を保険料でまかなうことができます。
そのため万が一の時の加入者自身や家族の負担を免除する仕組みとして、住宅ローン借り換えの場合にも再加入が求められることが予想されます。
再加入といっても金融機関によって団信の保障内容には違いがあります。
再加入後の保障内容をしっかりとチェックしておくことが重要です。
まとめ
住宅ローン返済にかかる負担を少しでも軽くするためには、ローン借り換えの適切なタイミングや注意点をよく把握しておくことがカギとなります。
各金融機関のローン条件を比較する、ネットなどでおすすめとして紹介されているローンのランキングを参考にするなど、借り換え先を選定するにもいろいろな手段があります。
無理のない返済計画を実行できるベストな借り換えができるように、自身の収入の現状や将来予測などもしっかりと分析し、ライフプランも含めて検討を進めるようにしましょう。