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個人事業主として独立した人は、税金に関する知識はしっかり身につけておかなければいけません。
とくに、節税に関する知識がなければ、納税額が多くなり可処分所得が減ってしまいます。
個人事業主が払うべき税金を適切に理解し、適切な節税対策を講じることで、納税額を抑えつつ、手元に残る利益を増やせるでしょう。
本記事では、個人事業主が納めなければいけない主な税金や、節税の具体的な方法について紹介していきます。
個人事業主が納めなければいけない主な税金
個人事業主が納めなければいけない税金は、大きく4つあります。
しかし、条件によって支払いが免除される税金もあるため、どのような特徴があるのかはしっかり把握しておくことが大切です。
個人事業主が納めなければいけない税金について詳しく見ていきましょう。
所得税
個人が得た利益に対してかかる税金が「所得税」です。
所得税の金額は、収入から経費を引いた所得から、さらに所得控除を差し引いた「課税所得」を基に決められます。
日本では、所得の増加に伴い税率が高くなる累進課税制度を採用しているため、個人によって所得税額は異なるのが特徴です。
個人事業主は確定申告で収入と経費を申告し、所得税の税額を計算して納めなければいけません。
住民税
住民税は、生活に欠かせない行政サービスを賄うための税金です。
税金を納める年の1月1日時点で居住している地方自治体に指定の金額を納めます。
住民税には「個人住民税」と「法人住民税」の2種類ありますが、個人事業主が納付するのは個人住民税です。
納付額は前年の所得に基づいており、翌年4回ある納付期限内に納税する必要があります。
税額は所得によって決まるため、節税対策を行なって所得を下げることで、支払う住民税の減額が可能です。
消費税
個人事業主が、商品やサービスを提供して得た収入に対してかかるのが消費税です。
消費税は消費者が負担するものを事業者が預かり、後で国に納めなければいけません。
しかし、消費税の納税は、課税売上高が1,000万円を超える課税事業者でなければ免除されます。
また、課税売上高が1,000万円以下であった場合でも、適格請求書発行事業者に登録していれば、消費税の納税が必要になる点には注意が必要です。
個人事業税
個人事業税は、特定の事業を営む個人事業主に課される税金です。
事務所や働いている自宅のある都道府県に納める税金で、所得が290万円以上の場合に納税義務が生まれます。
業種によって「第1種」「第2種」「第3種」と区分され、税率はそれぞれの区分によって異なるのが特徴です。
一部の職種以外はこれらの区分に該当するので、自分の職種がどの区分にあたるのかは確認しておきましょう。
個人事業主ができるおすすめの節税
個人事業主ができるおすすめの節税対策について紹介します。
節税対策をすることで税の負担額が大きく異なるので、できるものがあれば積極的に取り入れましょう。
青色申告特別控除を利用する
個人事業主の確定申告には事前申告しなくても受けられる「白色申告」と、承認を受けたうえで一定の要件を満たすと特別な控除を受けられる「青色申告」があります。
青色申告特別控除は、青色申告を行う個人事業主が課税所得額から最大65万円を差し引ける制度です。
これにより課税所得が減少し、所得税や住民税などの負担が軽減されます。
また、青色申告をすることで赤字を最長3年間繰り越せるようになるため、将来の利益と相殺できる点も大きな魅力です。
さらに、家族への給与も経費として計上できる「青色事業専従者給与」も利用できるので、家族に仕事を手伝ってもらっている場合は節税効果が増します。
所得控除を利用する
所得控除とは、定められた条件に当てはまる場合、所得から一定の金額を差し引ける制度です。
個人事業主が利用できる所得控除には「配偶者控除」「扶養控除」「医療費控除」など、さまざまなものがあります。
これらを活用することで、課税所得が減り、結果として税負担を軽減可能です。
所得控除を個人事業主が利用する場合は、確定申告で控除の手続きをする必要があります。
確定申告の際には、利用できる控除がないか確認しておきましょう。
経費を正しく計上する
個人事業主は、事業に必要な支出を経費として計上することで、課税対象となる所得を抑え、税負担を軽減可能です。
例えば、仕入れにかかった費用や、交通費、通信費などが経費に該当します。
ただし、事業に関係のない個人的な支出や、曖昧な範囲での経費計上は認められません。
また、計上した経費の正当性を証明できなければ、税務署から脱税の疑いをかけられるリスクもあります。
経費は税負担を軽減できるメリットもありますが、飛躍しすぎると調査が入る場合があるため、経費の範囲を正しく理解し、適切に計上することを心がけましょう。
会社を設立して法人化する
個人事業主が会社を設立して法人化すると、税制上のメリットがあります。
個人事業主は累進課税の対象で、所得が増えるほど税率が高くなります。
しかし、法人化すると法人税が適用され、一定の税率で課税されるため、利益が大きくなるほど節税効果を期待できるでしょう。
一方で、法人化に伴う複雑な手続きや設立費用が発生する点には注意が必要です。
ほかにも、社会保険に加入しないといけなかったり、赤字でも税金がかかったりするため、法人化は慎重に検討しましょう。
iDeCo(確定拠出年金)を利用する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で積み立てる年金制度で、積み立てた金額が全額所得控除の対象になります。
これにより、所得税と住民税の負担を軽減できます。
さらに、iDeCoの運用益は非課税となるため、資産を効率よく増やせるのも魅力です。
節税効果を得られるだけでなく老後資金の形成もできるため、厚生年金を受け取れない個人事業主にとって魅力的な制度といえます。
ただし、原則として60歳まで引き出せないので、長期的な目線での資産運用が必要です。
NISAを利用する
NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託などの運用益が非課税になる制度です。
通常、投資による利益には約20%の税金がかかりますが、NISAを利用すると一定の金額まで非課税で運用できます。
iDeCoのように掛け金が控除されるわけではないため、直接的な節税にはなりません。
しかし、NISAを活用することで、賢く資産形成ができます。
とくに、個人事業主の場合、長期的な資産形成をできるNISAは、退職金代わりとしても有効な手段です。
共済や保険に加入する
個人事業主が加入できる共済や保険には、節税効果のあるものもあります。
小規模企業共済は掛け金が全額所得控除の対象となり、倒産防止共済は掛け金を経費として計上可能です。
また、生命保険や医療保険などの保険も掛け金の一部を経費として計上できるケースがあり、事業のリスクをカバーしながら節税対策を行えます。
加入する保険や共済を見直すことで、万が一のリスクヘッジになるだけでなく、節税も同時に行えるでしょう。
まとめ
今回は、個人事業主が実践できる節税対策や、収める必要のある税金について紹介しました。
個人事業主にとって、税金の知識は非常に重要で、適切な節税対策を行うことで手元に残る利益が大きく変わります。
所得税や住民税、消費税、個人事業税などの税金を正しく理解し、青色申告や所得控除、経費計上などの基本的な節税対策を積極的に取り入れることが大切です。
さらに、iDeCoやNISAといった長期的な資産形成をすることで、節税効果と将来の備えを同時に行えます。
これらの対策を組み合わせて、税負担を賢く軽減しましょう。