目次
※本コンテンツはAI技術を活用しつつ人による執筆や監修をしています。
贈与税と相続税の基本と違い

まず知っておきたいポイント
贈与税は、生きているあいだに個人から財産をもらったときにかかる税です。
相続税は、亡くなった方から相続や遺贈で財産を取得したときにかかる税です。
課税の起点が異なるため、基礎控除や計算の考え方、申告期限も違います。
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
贈与税は「相続税を補完する」役割があります。
生前に財産を移して相続税の負担を避けることを防ぐ目的があるため、両税はセットで理解すると整理しやすくなります。
違いがひと目で分かる早見表
| 比較 ポイント | 贈与税 | 相続税 |
|---|---|---|
| 課税の タイミング | 生前にもらった年ごとに判定 | 相続開始(死亡)後に一括で判定 |
| 基礎控除の 考え方 | 暦年課税 :年110万円/相続時精算課税 :年110万円+特別控除2,500万円(同一贈与者累計) | 3,000万円+600万円 ×法定相続人の数 |
| 税率の基本 | 暦年課税は速算表(一般税率/特例税率) | 法定相続分で按分→速算表で総額 →各人に按分 |
| 申告期限・ 提出先 | 原則:翌年2/1〜3/15に受贈者の住所地の税務署へ | 原則:相続開始を知った日の 翌日から10か月以内に被相続人の 住所地の税務署へ |
| よくある勘違い | 「110万円以下は記録がいらない」は誤解 | 「名義預金は相続財産に 含まれない」は誤解 |
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
贈与税のしくみをやさしく

贈与税とは(暦年課税の基本)
その年の1/1〜12/31に「もらった財産の合計」から基礎控除110万円を差し引き、残りに速算表の税率を当てて税額を求めます。
贈与者との続柄に応じて「一般税率/特例税率」を使い分けます。
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
相続時精算課税というもう1つの方法
一定の要件で、特定の贈与者について相続時精算課税を選べます。
選択後は、その贈与者からの贈与は原則として暦年課税へもどせません。
計算は「年110万円の基礎控除」を差し引き、さらに「特別控除(限度2,500万円)」を差し引いた残額に一律20%を乗じます。
令和6年(2024年)分以降は新たに「年110万円の基礎控除」が適用されます。
加えて、令和6年以降は「その年の相続時精算課税の贈与額が110万円以下なら、贈与税の申告は不要」とされる取扱いが明確化されています(国税庁パンフ Q&A)。
参考:国税庁パンフ「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」
贈与税の申告期限と手続き
贈与税は、原則として「もらった年の翌年2/1〜3/15」に申告・納付します。
提出先は受贈者の住所地の所轄税務署です。
e-Tax(電子申告)や郵送、時間外収受箱での提出が利用できます。
準備書類の例
- 贈与契約書(任意)
- 通帳の振込記録など資金移動の記録
- 財産の種類ごとの評価資料(不動産なら評価関連資料など)
相続税のしくみをやさしく

相続税とは
相続や遺贈で取得した財産に対して課税されます。
「正味の遺産額」(遺産総額+相続時精算課税適用財産−非課税・債務・葬式費用+一定の生前贈与加算)を基に判定します。
基礎控除と計算の流れ
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
計算は、
①各人の課税価格
②課税価格の合計から基礎控除を差し引き「課税遺産総額」
③法定相続分で按分
④速算表で相続税総額
⑤各人に按分
⑥税額控除、の順に進みます。
申告期限と提出先
相続税の申告は、原則「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」。
提出先は被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。
e-Tax、郵送、時間外収受箱の利用ができます。
最新の見直し(2024年以降)で変わった点

生前贈与の「加算期間」の拡大(最長7年)と経過措置
暦年課税の生前贈与加算は、2024/1/1以後の贈与から段階的に見直され、最終的に「相続開始前7年以内」が対象になります。
経過措置として、2026/12/31までは3年、2027/1/1〜2030/12/31は「2024/1/1以降の贈与分」が対象、2031/1/1以降は7年に拡大。
さらに、延長された4年間部分には合計100万円の控除が設けられています。
参考:国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
相続時精算課税に「年110万円の基礎控除」
2024年分以降、相続時精算課税でも年110万円の基礎控除が導入されました。
年の合計が110万円以下なら申告不要となる場面が示されています(国税庁パンフ Q&A)。
選び方の注意(方式の切替は原則不可)
相続時精算課税を選ぶと、その贈与者については原則として暦年課税へ切替不可です。
選択の影響は長期に及ぶため、資金移転の目的や将来の相続の見通しを踏まえて慎重に判断します。
ケースで比べて理解

親から子へ現金を贈った場合(暦年課税)
例:1年間の贈与総額が150万円(親→子、子は18歳以上)。
- 基礎控除110万円を差し引く → 課税対象40万円
- 特例税率の最下段(200万円以下)は10% → 贈与税は4万円
- 申告は翌年2/1〜3/15に行う(受贈者の住所地の税務署)
- その後に相続が起きた場合は、生前贈与加算の対象期間に注意(段階的に7年へ)
- 根拠:贈与税の速算表・申告期限・加算期間の見直し。
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
相続時精算課税を選んだ場合
例:親→子に2024年中に500万円を贈与(相続時精算課税を選択)。
- その年は「110万円の基礎控除」後に残額390万円。
特別控除2,500万円の範囲内なので贈与税は0円。
ただし110万円を超えるため申告は必要。 - 将来、親の相続が発生すると、2024年分の「基礎控除後の残額(390万円)」が相続税の課税価格に通算され、過去に納めた相続時精算課税の贈与税があれば相続税から控除されます。
相続が発生した場合の計算手順(シンプルな例)
例:配偶者と子1人が相続人。遺産総額8,000万円、債務500万円、葬式費用200万円。
- 正味の遺産額=8,000−500−200=7,300万円
- 基礎控除=3,000+600×2=4,200万円
- 課税遺産総額=7,300−4,200=3,100万円
- 法定相続分(各1/2)で按分:各1,550万円
- 速算表で算出(3,000万円以下:15%−50万円)
→ 各182.5万円、合計約365万円(概算)
この総額を、実際の取得割合に応じて各人に按分し、控除を差し引いて納付税額を求めます。
よくある勘違いと注意点

「110万円以下なら記録は不要」は誤解
申告が不要でも、贈与の成立と履行を示す証拠(贈与契約書、銀行振込の記録など)を残しておくと安心です。
のちの相続で「名義預金」と判定されるリスクを下げられます。
名義預金・定期贈与の否認リスク
名義や通帳の管理実態などから、被相続人の財産と認められると相続税の課税対象になります。
形式だけの名義変更や、毎年同額・同時期の自動振込などは実態が問われます。
だれに贈るかで扱いが変わる場合
暦年課税の生前贈与加算の対象者や、相続時精算課税の通算方法など、だれからだれへ贈ったかで相続時の扱いが異なります。
制度の条文・通達どおりに整理することが大切です。
期限・納付遅れのペナルティ
期限後の申告や納付遅れには、無申告加算税や延滞税などの附帯税がかかる場合があります。
延滞税は法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて自動的に課されます。
手続きの流れと必要書類(チェックリスト)

贈与税(暦年課税)
【準備】
贈与契約書の作成(任意)/資金移動の記録(通帳など)/財産の評価資料
【申告】
翌年2/1〜3/15、受贈者の住所地の税務署へ(e-Tax・郵送・持参)。
必要に応じ添付書類を準備。
相続税
【準備】
遺産・債務の把握/非課税の確認/小規模宅地等の特例要件確認/相続関係説明図・戸籍関係書類
【申告】
相続開始を知った日の翌日から10か月以内。
提出先は被相続人の住所地の税務署。
e-Tax・郵送・持参が可能。
相続時精算課税を選ぶとき
【届出】
「相続時精算課税選択届出書」を期限内に提出(初回)。
以後、その贈与者については原則切替不可。
年110万円超ならその都度申告。
まとめ
違いは「課税のタイミング」「基礎控除・計算の考え方」「期限」に表れます。
最新の見直しでは、暦年課税の生前贈与加算が段階的に最長7年へ、相続時精算課税に年110万円の基礎控除が導入されています。
制度改正は適用開始時期や経過措置がとくに重要です。
日々の記録と期限の管理を大切にし、根拠資料を整えて正確な手続きにつなげましょう。
延滞税や加算税の負担を避けるためにも、期限内の申告・納付を心がけることが基本です。















