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ふるさと納税は、応援したい自治体に寄附することで所得税や住民税が安くなり、お礼として返礼品がもらえる制度。
本業以外にアパート経営などの不動産所得がある場合、ふるさと納税を行うことで、より多くのメリットを受けることが可能です。今回は、不動産投資をしている人に向けて、不動産所得とふるさと納税の関係をご紹介します。
不動産所得があるとふるさと納税の控除限度額が上がる
近年、会社員が副業として不動産投資を行うケースが増えています。
本業以外に不動産投資がある場合、ふるさと納税を行うことで、寄附控除の限度額が上がり、それに伴い所得税や住民税が軽減されるというメリットを得ることが可能です。
返礼品に関しても、寄附金額が高くなれば選択できる幅が広がります。
まずはふるさと納税の仕組みを確認しておきましょう。
ふるさと納税の仕組み
平成20年にスタートしたふるさと納税は一時期、豪華すぎる返礼品がマスコミに取り上げられ話題となりました。
国の指導により「返礼品合戦」が落ち着きを見せる中、利用者も着実に増加し、ある調査では国民の3割以上がふるさと納税を利用しているともいわれています。
ふるさと納税は、全国の応援したい自治体に寄附をすることで、寄附した人も自治体も互いにメリットを享受できる制度です。
寄附した人は実質的な自己負担金2,000円を支払うことで、お礼として返礼品がもらえるだけでなく、住民税、所得税が軽減されます。
自治体は寄附されたお金で新しい施策を行うことが可能という仕組みです。
不動産所得がある場合にふるさと納税をするメリット
ふるさと納税の流れは、以下の通りです。
「寄附をする→返礼品をもらう→確定申告をして税金を納める(所得税控除が得られる)→軽減された住民税の納付書が届く」
寄附に対する控除額には、それぞれの所得に応じて上限があり、上限額は年収や家族構成などによって異なります。上限を超えて寄附したとしても、超過分が還付・控除されることがないため、自分の上限額がどれくらいになるかを事前に認識した上で、寄附することが大切です。
不動産所得があると、給与所得に不動産所得が合算されるため、以下のようなメリットが得られます。
- 返礼品の選択肢が増える
- 寄附する自治体を増やせる
寄附金額が多くなると、返礼品の選択の幅が広がり、寄附する自治体を増やすことが可能です。
不動産所得がある場合の控除限度額の計算方法
不動産所得がある場合のふるさと納税の寄附限度額の計算方法をご紹介します。
- 不動産投資で所得がある場合の上限額のシミュレーション
- 不動産投資が赤字の場合の上限額のシミュレーション
給与収入400万円、夫婦と子供1人、配偶者控除がある場合を考えてみましょう。社会保険料控除額などの所得控除は、給与収入の15%と仮定します。
不動産投資で所得がある場合の上限額をシミュレーション
不動産所得200万円(不動産収入300万円-必要経費等100万円)があるシミュレーションです。
ふるさと納税専門サイト「ふるなび」の詳細シミュレーションを使うと、簡単に計算できます。
給与収入400万円だけで計算すると、寄附額の上限は3万3,000円となります。
一方、不動産所得を合算すると400万円×所得控除分(1-0.15)+200万円=540万円となります。
合算した場合には、下記の個人事業主の上限額を計算するシミュレーションを使ってください。
課税所得金額 | 課税所得に応じた変数 |
---|---|
~195万円以下 | 23.559% |
195万円超~330万円以下 | 25.066% |
330万円超~695万円以下 | 28.744% |
695万円超~900万円以下 | 30.068% |
900万円超~1,800万円以下 | 35.520% |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40.683% |
4,000万円超 | 45.398% |
課税所得金額が540万円の場合の計算式は、以下の通りです。
住民税所得割額 × 28.744% + 2,000円
ふるさと納税の控除上限額の計算には、住民税所得割額が必要です。
住民税所得税割額は、毎年5,6月に住んでいる自治体から送られる「住民税決定通知書」に記載されています。
おおまかな金額を知りたい場合は、住民税所得税割額 × 0.2で計算してみましょう。
今年新たに不動産投資を始めた人は、送られてきた住民税所得税割額を少し増やしてから0.2を掛けてください。
不動産投資が赤字の場合の上限額
不動産所得▲200万円(不動産収入100万円-必要経費等300万円)のケースをシミュレーションしてみましょう。
給与所得に赤字の不動産所得を合算すると400万円×(1-0.15)-200万円=140万円で、この場合の寄附上限額は、住民税所得割額 × 23.559% + 2,000円となります。
おおまかな金額を知りたい場合は、住民税所得税割額 × 0.2で計算してみましょう。
今年新たに不動産投資を始め、赤字が出た人は、送られてきた住民税所得税割額を減らしてから0.2を掛けてください。
不動産所得がある場合のふるさと納税の注意点
不動産所得がある場合にふるさと納税をする際には、下記のような注意点があります。
- ふるさと納税は節税ではない
- 副業として不動産投資を行っていることが会社に知られてしまう
- 高額の返礼品は課税対象になる
- 20万円を超えるとワンストップ特例制度ではなく確定申告が必要
ふるさと納税は節税ではない
インターネット上で「ふるさと納税は節税対策になる」という表現を見かけることがありますが、ふるさと納税は節税ではありません。
前払いした税金が後から控除・減額される「税金の前払い」が本来の仕組みで、自己負担2,000円以上もする返礼品がもらえることから、税金が安くなり得をした気分にさせてくれるわけです。
2022年に3万3,000円をふるさと納税で寄附した場合、3万3,000円から2,000円を差し引いた3万1,000円に所得税率20%(所得金額により税率は異なります)を掛けた6,200円が2022年度の所得税から控除されることになります。
副業として不動産投資を行っている場合は会社に知られてしまう
給与所得と不動産所得を合算した金額で確定申告を行うと、確定申告の情報は、住んでいる自治体に引き継がれます。
自治体で算定をした住民税額は、「主たる給与の支払を受けている勤務先」を通じて徴収されることになっているため、不動産投資を行っていることが会社に知られてしまうので注意が必要です。
会社に知られたくない人は確定申告を行う際に、確定申告書第2表にある「住民税・事業税に関する事項」の欄で、「自分で納付」を選択してください。
そうすることで住民税の通知は、会社ではなく自宅に届きます。
高額の返礼品は課税対象になる
ふるさと納税の返礼品が高額な場合は、「一時所得」として課税対象となることがあります。
年間50万円までは非課税ですが、50万円を超えると確定申告を行わなければなりません。多額なふるさと納税をする場合には、注意が必要です。
20万円を超えるとワンストップ特例制度ではなく確定申告が必要
ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても、税額控除を受けられる制度です。給与所得者はもともと確定申告をする必要がないため、ワンストップ特例制度を利用できるのが原則ですが、不動産投資の年収が20万円を超えると、ワンストップ特例制度ではなく、確定申告を行う必要があります。
ワンストップ特例制度では、所得税の控除がなく、住民税だけの控除となります。不動産所得がある場合は、所得税を計算する必要があるため、確定申告を行わなければなりません。
不動産所得がある場合のふるさと納税のやり方
不動産所得がある場合のふるさと納税のやり方は以下の通りです。
① 給与所得と不動産所得を合算して所得額を確認する
② 寄附できる金額の目安を調べる
③ 寄附する自治体を決め、寄附をする
④ 返礼品と、「寄附金受領証明書」を受け取る
⑤ 寄附金受領証明書を添付して確定申告を行う
⑥ 確定申告書の寄附控除の欄に金額を記入する
まとめ
不動産所得がある場合、ふるさと納税の控除上限額が高くなります。
上限額が高くなると、より多く寄附することができ、それに伴い所得税や住民税の控除額が大きくなるのです。
給与所得に不動産所得を合算した総所得金額を事前に確認した上で、寄附金を決めるようにしましょう。
不動産所得がある人は、ふるさと納税の特徴を理解した上で賢く使いこなすことが大切です。