日本古来から受け継がれ、代表的な種類の和食として知られる懐石料理。
趣深い伝統的な懐石料理の中には、興味深い歴史やしきたりが詰まっています。
この記事では懐石料理の起源や構成、頻繁に使われる食材について詳しくご紹介します。
「懐石料理」の隠れた起源・歴史とは?
懐石料理の起源は”禅僧の食事”
懐石料理の起源は日本の禅宗。
安土桃山時代、お寺の僧たちが修行中に食べていた質素な食事が発展したものだと伝えられています。
当時の修行僧たちは一日一度、午前中に食事を済ませ、その後に空腹を感じた場合には自身の懐に温かい石を抱えて暖をとっていました。
一日に一度きりの食事は石と同じく体を温める効果があったことから、修行僧が食べる食事に「懐石料理」という名称がついたのです。
千利休によって親しみやすい料理へ変化
当初は禅僧の厳格な食事として誕生した懐石料理は、千利休が手を加えることで庶民にも親しみやすい形式へと変化しました。
茶人として有名な利休ですが、じつは仏教の一派である禅宗に深い関心を抱いていた人物としても知られています。
利休が茶の湯の中に仏教の精神を取り入れる際に注目したのが懐石料理です。
懐石料理はお茶の前に出される食事として導入され、茶の湯のわびさびを表現するひとつの方法として「茶室でも食べやすい簡単な料理」へと変わっていきました。
「会席料理」との違いとは?
懐石料理の同音異義語である「会席料理」。
混同されることが多い二つの料理ですが、本来は以下のような全く異なる特徴をもっています。
料理の目的
懐石料理の目的は“お茶”を美味しく味わうことであり、茶の湯の主役である“お茶”の引き立て役を担っています。
それに対し、会席料理の目的はお酒をより美味しく味わうことであり、品数も懐石料理より多い傾向にあります。
料理が出される場所
懐石料理は狭い茶室で提供されるのに対し、会席料理は料亭や宴会の席で提供されます。
提供される順番
懐石料理では、茶の湯の主役であるお茶が提供される前にすべての食事が出されます。
それに対し、会席料理は酒の後にご飯や汁椀が出されます。
懐石料理の基本は一汁三菜!素材を活かしたヘルシー献立
懐石料理は「一汁三菜+α」
懐石料理の基本となるのが「一汁三菜」。
主食と汁物、主菜と副菜2品を合わせた伝統的な和食の構成です。
そのほかに香の物(漬物)や酢の物などの小鉢料理が追加される場合もありますが、お茶をいただく前に食べきれるよう、献立は簡単で質素な内容です。
しかし、近年では食事そのものをより楽しむために、+αとして菓子や揚げ物などを出す料理店も多く存在します。
時代の移り変わりとともに、懐石料理の形態も多様化しているのが現状です。
料理が出される順番
懐石料理では、茶の湯の主役であるお茶が提供される前にすべての食事が出されます。
現代の懐石料理で提供される食事の順番・内容がこちらです。
- 飯・汁・向付
- 酒
- 煮物
- 焼き物
- 預け鉢
- 吸物
- 八寸
- 湯・香の物
- 菓子(甘味)
「向付(むこうづけ)」はお刺身の入った小鉢、「預け鉢」は少量の炊き合わせなどを示しています。
あくまでお茶を楽しむための料理ですが、少量のお酒がふるまわれるのも特徴です。
「八寸」とはお酒のおつまみとなる珍味の盛り合わせのことで、海の幸や山の幸をバランス良く組み合わせた2〜3品が提供されます。
わびさびを表現する工夫
茶室の空間で提供され、わびさびを表現する一助を担う懐石料理。
食材の調理方法や提供の仕方にも次のような規則が設けられています。
- その時期に旬の食材を用いる
- 味付けはなるべく薄くする
- 食材を余すことなく使い切る
- 温かい料理は温かい器、冷たい料理は冷たい器で提供する
仏教の精神を受け継ぐ懐石料理では、食材に対しても高い敬意を払うのが鉄則です。
素材本来の味を活かすために味付けは薄く、旬の時期に採集した食材を調理します。
捨ててしまうような切れ端まで使用するので、食材の無駄もありません。
また、客人へ最も良い状態で料理を出すために器の温度にまで気を配ります。
食べ方にもルールが存在
懐石料理を楽しむにあたっては、食べ方も重要なポイントです。
求められる基本的なマナーは会席料理と共通している部分が多いため、一度覚えればさまざまな場面で役に立ちます。
まず大切なのが和室での立ち振る舞いです。
畳べりや敷居は絶対に踏まず、またいで部屋に入室しましょう。
席には一度に座らず、下座側の畳の上で正座をした後、体をずらして座布団の上へ移動します。
箸の使い方は最も注意が必要です。
刺し箸・寄せ箸・返し箸は絶対に禁止。皿や器の上に箸を置く「渡し箸」などもNGです。
箸で料理を口に運ぶ際、ついやりがちな「手皿」もじつはマナーに反しています。
汁がたれそうな料理や、つまむのが難しい小さな具材は器ごと口に近い位置まで運ぶのがおすすめです。
懐石料理に使われる代表的な食材6選
わびさびの世界に浸り、茶の湯の心を味わうための懐石料理。
懐石料理で頻繁に用いられる6つの食材を紹介します。
焼き物・汁椀のメイン食材|白身魚
会席料理全体のメインの役割を果たすのが焼き物。
日本の気候や風習にもとづき、懐石料理では白身魚を焼いたものが頻繁に提供されます。
また、淡泊でいろいろな食材と相性が良い白身魚は、汁物の具材としても大活躍。
旬の野菜や海藻と共に格式高い味わいを作り出します。
さまざまな料理の名脇役|大根
主に12月から2月にかけて旬を迎える大根。
旬の大根はみずみずしく、柔らかな甘みを持つのが特徴です。
懐石料理においては汁物や預け鉢の具材や、刺身の付け合わせとして用いられています。
出汁や副菜が人気の縁起物|昆布
名前の調子が「よろこぶ」と近いことから、縁起物としても人気のある昆布。
出汁や小鉢の一品として懐石料理には欠かせない食材です。
豊かな昆布出汁の風味によって、趣深い懐石料理の味わいが完成します。
先が見通せる万能野菜|れんこん
穴が開いていて「未来の見通しが立つ」ことから、おせち料理でも用いられるれんこん。
極楽浄土に咲く花として有名なハスの地下茎の部分であり、仏教の精神を重んじる懐石料理とは相性の良い食材です。
歯ごたえが良く、素朴であっさりした味わいのため、薄味の煮物や酢の物に適しています。
体に優しい植物性食品|豆腐
修行僧の食事から発展した懐石料理。
仏教の影響を受けているため、使われる食材の多くは植物性の食品です。
豆腐は植物性では貴重な高タンパク質食材であり、絹豆腐や木綿豆腐だけでなく、高野豆腐も頻繁に使用されます。
茶の湯の主役|抹茶
懐石料理はお茶の前に提供される食事のこと。
そのため厳密にはお茶は懐石料理に含まれませんが、茶の湯の空間や風情を表現するメインとなるためご紹介します。
抹茶の原料である茶葉の新芽が摘まれるのは初夏にあたる5〜6月ごろ。
しかし、抹茶は10月から11月にかけていちばんおいしい時期を迎えます。
その理由は、抹茶の甘みや苦みを最もよい状態にするには茶葉を挽いた後に低温で熟成させる必要があるためです。
長期間ていねいに保管された抹茶によって、千利休の求めたわびさびの空間が実現します。
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