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銀杏は、俳句で秋の季語として使われるほど、日本人にとって昔からなじみ深い食べ物です。
しかし、茶碗蒸しや土瓶蒸しに入っている、脇役の食材に過ぎないとのイメージもあるのではないでしょうか。
そんな銀杏ですが、じつは体に必要な多くの栄養素が含まれている食材です。
この記事では、銀杏に含まれる栄養について解説し、食べ方の注意点なども併せて紹介します。
銀杏の特徴的な栄養素と効能
銀杏は、漢方にも使われているほど、栄養価が非常に高い食材です。
どんな栄養素と効能があるか見ていきましょう。
銀杏の栄養素
生の銀杏に含まれている主な栄養素とその含有量を、以下の表に示します。
成分名 | 100g 当たり | 1個(3g) 当たり | 単位 |
---|---|---|---|
エネルギー | 168 | 5 | kcal |
たんぱく質 | 4.7 | 0.1 | g |
脂質 | 1.6 | 0.1 | g |
炭水化物 | 34.8 | 1.0 | g |
食物繊維 | 1.6 | 0.1 | g |
カリウム | 710 | 21 | mg |
マグネシウム | 48 | 1.44 | mg |
リン | 120 | 3.6 | mg |
鉄 | 1 | 0.03 | mg |
亜鉛 | 0.4 | 0.01 | mg |
銅 | 0.25 | 0.01 | mg |
β-カロテン (ビタミンA) | 290 | 9 | μg |
α-トコフェロール (ビタミンE) | 2.5 | 0.1 | mg |
ビタミンC | 23 | 0.7 | mg |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
銀杏1個の大きさは、およそ2.5〜3gです。
1回に食べる量は少量なので、摂取する栄養素の量も少ないですが、いくらかのビタミンやミネラルを補うことができます。
続いて、銀杏に含まれるいくつかの栄養素について、その働きを解説します。
美肌効果のあるビタミンC
ビタミンCは美肌効果が期待できる栄養素です。
ビタミンCは、骨や皮膚などに弾力を与えるコラーゲンを作るために欠かせません。
ほかに、ビタミンCには以下のような効果もあります。
- 毛細血管や歯・軟骨などを維持する
- 皮膚に生成されるメラニン色素を抑制し日焼けを防ぐ
- 免疫力を維持する
ビタミンCには強い抗酸化作用もあり、体内で過酸化物質の生成を抑え、老化を防止する効果が期待できます。
美肌を目指すには必要不可欠なビタミンCですが、ヒトの体内では生成できないため食事からの摂取が必要で、水溶性のため体に貯蓄もできません。
一度にたくさん摂るのではなく、こまめに摂ると効果的でしょう。
むくみ・高血圧予防のカリウム
カリウムはむくみ・高血圧の予防効果があります。
体内では、ナトリウム(塩分)とカリウムのバランスが保たれています。
十分にカリウムを摂取すると、体内で水分をため込む性質があるナトリウムの排出を促せるのです。
体内のナトリウムと水分が尿として排出されると、むくみがとれ、血管内の水分も減って高血圧予防にも繋がります。
骨を強くするリン
リンは、体内でカルシウムの次に多いミネラルです。カルシウムとともに骨や歯を構成していて、骨を強くするために欠かせません。
また、リンは細胞膜やエネルギー産生にも一役かっています。
現代の食生活では不足しにくいものの、リンが不足すると骨がもろくなり、エネルギー不足になる可能性があります。
貧血防止効果の鉄
鉄は、貧血を防止する働きがあります。
赤血球に含まれるヘモグロビンは、酸素を肺から全身へ運ぶときに必要なたんぱく質で、構成成分として鉄が含まれています。
鉄が不足すると十分な酸素が体中にいき渡らず、貧血のリスクが高まります。
食事から鉄を効果的に吸収するためには、ビタミンCやたんぱく質と一緒に摂取するとよいでしょう。
悪玉コレステロール・中性脂肪減少効果があるレシチン
特殊な脂質の一種であるレシチンは、悪玉コレステロール・中性脂肪を減少させる効果があります。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)は、血液中に蓄積すると動脈硬化を生じかねません。
レシチンは、コレステロールが血管壁に蓄積することを予防する作用があるのです。
さらに、レシチンが充足していると、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が増加し、血液内のバランスを保つために悪玉コレステロールや中性脂肪が減少します。
銀杏の薄皮にもある驚くべき効果
銀杏の薄皮には抗酸化物質が含まれており、老化を防ぐ働きがあるといわれています。さらに、血行促進作用があり、疲労回復を助ける効果が期待できるでしょう。
しかし、薄皮は食べにくい部分なので、食用にするには以下のような工夫が必要です。
- 煮込んだ汁をスープなどの出汁、または銀杏茶として飲用する。
- 乾燥させて粉末にし、料理の上にふりかける。
少し手間はかかりますが、ぜひ薄皮を活用してみてください。
銀杏の注意点
銀杏はよく、「食べると中毒になる」といわれます。
実際に、食べ過ぎると中毒を起こすため、食べ方には注意が必要です。
どのように気を付ければよいか見ていきましょう。
食べ過ぎると毒性があるので注意する
銀杏の食べすぎによって引き起こされる中毒症状は、銀杏に含まれるギンコトキシン(4’-O-メチルピリドキシン)という物質の作用によるものです。
ギンコトキシンは、ビタミンB6の働きを妨げます。
銀杏を多量に摂取すると、神経系が興奮状態になり、けいれんなどのビタミンB6欠乏症に似た症状が現れることがあります。
症状が現れるのは、摂取して数時間後が一般的です。
加熱調理をしても、銀杏の毒性は消えません。食べ過ぎないように気を付けてください。
ビタミンB6が潜在的に欠乏していると、とくに中毒になりやすく、成人でも銀杏40個で中毒を発症したケースが知られています。
5歳以下の子供には食べさせない
日本中毒情報センターでは、銀杏を5歳以下の子供には食べさせないことを推奨しています。けいれんや嘔吐などの中毒症状を、大人よりずっと引き起こしやすいためです。
もし誤って食べてしまったら、中毒の症状が現れないかよく観察し、必要に応じて医療機関を受診してください。
銀杏で中毒が発生するときは、数十個食べた事例がほとんどで、数個食べてしまっても問題ないことが多いです。
しかし、小児では、銀杏7個でも中毒を発症したケースも知られています。
5歳以下の子供が口にしないよう、銀杏の取り扱いには気を付けましょう。
参考:日本中毒情報センター「ギンナンの食べ過ぎに注意しましょう」
そもそも銀杏とは?
そもそも銀杏とはどんな食材なのでしょうか。
イチョウの木から落ちて踏まれ、街路樹を独特のにおいをさせる印象が強いですが、それ以上はあまり知らない方も多いでしょう。
ここでは、銀杏の基礎知識について詳しく解説します。
銀杏はイチョウの種子
銀杏は、イチョウの樹木にできる種子です。
イチョウの木は、同じ株からの受精(自家受粉)を避けるためにオスの木(雄株)・メスの木(雌株)があり、メスの木に種子が実ります。
銀杏の独特の匂いは、メスの木に付いている実から出ていますので、実のならないオスの木はにおいません。
そのため、街路樹ではオスの木しか植樹をしない場合もあります。
独特の食感と匂い・味がある
銀杏には、独特のねっとりとした食感と、匂い・苦味・ほのかな甘味があります。
特徴的な食感や風味から、人により大きく好き嫌いが分かれる食材です。
揚げたり蒸したりと、調理方法で食感も変わってきます。ぜひいろいろな料理を試してみてください。
銀杏の旬と特産地・品種
銀杏の収穫時期は、地域によって差がありますが、9月から11月頃にかけての2か月程度にすぎません。
収穫が早いものはヒスイのような緑色をしており、完熟すると黄色に変わります。
全国で一番の生産地は愛知県です。とくに稲沢市は古くからイチョウの栽培が盛んで、一流料亭で取り扱われるほど高い品質を誇っています。
大分県・福岡県が2位・3位と続き、これらの上位3県で、国内生産量の約52%を占めています。
また、有名な銀杏の品種には、「藤九郎」や「喜平」などがあります。
銀杏はアーモンド・くるみ・ごまと同じ仲間
私たちが食べている銀杏は、イチョウの種子の中にある胚乳であるため、アーモンド・くるみ・ごまと同じ「種実類」に分類されます。
種実類には、抗酸化作用のある栄養素や機能性成分が多く含まれています。
一方、種実類は一般に、ごま油やアーモンドオイルなどの油が搾り取れるほど脂質が多く、高カロリーです。
しかし、銀杏は種実類でありながら、脂質がとても少なく低カロリーであることが特徴です。
銀杏を食べれば、カロリーを抑えつつ、種実類の持つ抗酸化物質を摂取できます。中毒に気を付けながらも、積極的にとりたい食材といえるでしょう。
まとめ
銀杏は、ビタミンCやカリウムのような栄養素や、抗酸化物質などの機能性成分を豊富に含む食材です。
ただし、一度に少量しか食べられず、銀杏から摂れる栄養の量は限られているため、他の食品と組み合わせた食事にするとよいでしょう。
多量摂取による中毒には気を付けつつ、銀杏の恩恵を受けながら秋を感じてみませんか。