NISAの恒久化を含む新制度がスタートすると、長期分散投資による老後資金のつみたてを目指す人にとって有利になります。
そのためNISAに興味を持つ人も多いものの「いつから新制度が始まるか分からない」「恒久化で改悪ポイントはないの?」など不安を抱えるケースも珍しくありません。
新制度移行による変更点やメリットをわかりやすく解説するので、参考にしてください。
NISAの恒久化とは
2023年度の税制改正大綱などで示されたNISA制度の中心的な改正点として、NISAの恒久化が挙げられます。
恒久化によりNISAはより幅広い層に長期に渡って利用されやすい資産形成策となることが期待されます。
NISAの恒久化はいつから?新NISA開始時期
新NISAの開始時期は2024年です。
2024年以降は、投資可能な上額を超えない限り、期限なく非課税で運用を続けることができます。
NISAの恒久化・変更される理由
NISAが恒久的に利用できるようになることで、長期・積立・分散投資による資産形成を進められやすくなります。
少額からでも始めやすいNISAは既に幅広い層の関心を集めており、改正により恒久化されるとより多くの人が利用しやすくなります。
そのため恒久化の背景には「NISAとは自ら老後資金を形成する継続的な手段である」という考えの浸透を図る狙いがあります。
どうなる?現行のNISAと新NISAの違い
NISA恒久化により、現行と新制度では以下の違いが生じます。
現行のNISA | 新NISA | |||
---|---|---|---|---|
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
制度が使える期間 | 2023年まで | 2042年まで | 無期限 | 無期限 |
年間の非課税投資 上限額 | 120万円 | 40万円 | 240万円 | 120万円 |
非課税保有期間 | 5年 | 20年 | 無期限 | 無期限 |
最大の非課税投資 上限額 | 600万円 | 800万円 | 新NISA内で1800万円 | 新NISA内1800万円 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 | 18歳以上 | 18歳以上 |
対象商品 | 株式・投資信託・ETF | 投資信託 | 株式・投資信託・ETF | 投資信託 |
参照:新しいNISA|金融庁
現行における一般NISAとつみたてNISAは新制度ではそれぞれ、成長投資枠とつみたて投資枠に移行されます。
新NISAでどのような違いが生じるか、ポイントごとにご説明いたします。
制度が使える期間の恒久化
現行のNISAでは一般NISAが2023年、つみたてNISAが2042年と利用期間が定められています。
しかし新NISAは無期限に利用できる制度になります。
投資のできる期間に制限がなくなるため、恒久的に利用できるようになるのです。
非課税期間の無期限化
前述した通り、新NISA利用者は非課税保有期間が無期限となります。
長期に渡って非課税での運用が可能となることで、有利な環境の下で資産形成を安定的に進められやすくなります。
最大投資可能枠が拡大
現制度では一般NISAの年間最大投資額は120万円、つみたてNISAは40万円ですが新制度では成長投資枠が年間240万円、つみたて投資枠が120万円となります。
年間に投資できる額がそれぞれ2倍、3倍にアップするため、これまでよりも多額の資産形成を目指す人にとって朗報になります。
非課税保有限度額の新設
新NISAには生涯に渡って非課税保有できる限度額が新設されます。
利用期限のある現行制度では一般NISAが600万円、つみたてNISAが800万円という利用最大額が決まっていますが、新NISAには利用期限はありません。
代わりに生涯で1800万円という非課税保有限度額が設定されます。つまり限度額を超えない限り、恒久的に非課税での保有が可能になるのです。
つみたてNISAと一般NISAの併用が可能
現行の制度は同じ年に一般NISAとつみたてNISAを併用することはできませんが、新制度だと成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能となります。
そのため成長投資枠で株式やETF、つみたて投資枠で少額からの長期分断型の投資信託―と、異なるタイプの投資を同時に進めることができます。
年間の投資可能金額は、両枠をあわせた360万円になります。
新NISAのメリット
新NISA移行により非課税という有利な条件での長期投資を円滑に進められるだけでなく、現制度ではできなかった投資法なども可能になります。
新制度によって予想される主なメリットとしては、以下が挙げられます。
- つみたて投資枠では毎月10万円まで可能になる
- 開始可能時期による不平等がなくなる
- 売却をした枠での再投資が可能になる
- 積立投資をしながら個別株への投資も可能になる
- 非課税期間満了時の対応を考える必要がない
つみたて投資枠では毎月10万円まで可能になる
前述した通り新NISAのつみたて投資枠の年間投資可能額の上限は120万円ですので、毎月10万円まで積み立て可能になります。
現行のつみたてNISAだと年間投資可能額は40万円なので月ごとの金額で計算すると3万3000円ほどにとどまるという点から考えると、大幅な金額アップとなります。
さらに新NISAは生涯投資可能額を超えない限り期限なく利用できます。
毎月10万円の積み立てを長期に渡って進めることができるため、安定した資産形成への心強い味方になり得ます。
開始可能時期による不平等がなくなる
現制度は利用期間が設定されているため、着手するのが遅くなるとつみたてNISAによる長期投資を望む場合には不利になります。
一般NISAの場合も期間内で利用できる金額が決まっているため、やはり早めに利用した方が有利と言えます。
これに対し新制度は無期限で非課税運用できるため、非課税保有限度額を超えない限り恒久的に利用できます。
もちろん長期積立を希望する場合などは早く始める方がベターですが、新NISAは現制度に比べて開始時期による不平等感が発生しにくくなります。
売却をした枠での再投資が可能になる
前述した通り新NISAでは生涯に渡って投資可能な金額が1800万円と決まっていますが、売却した場合は買付金額分の投資可能額が復活します。
つまり売却した分再投資できるため、最終的には上限1800万円を超える金額を生涯に渡って非課税で投資することが可能になります。
積立投資をしながら個別株への投資も可能になる
前述した通り新NISAは成長投資枠とつみたて投資枠が併用できるため、個別株と積立というタイプの異なる投資を同時に進めることができます。
現行制度では年間で一般NISAかつみたてNISAのいずれかしか選ぶことができなかったため、一度に投資できる種類の幅が広がり、より柔軟に投資戦略を立てられるようになります。
成長枠投資分は生涯の投資可能上限額1800万円のうち1200万円をあてることができ、高レバレッジ型の投資信託などハイリスク商品を除く個別株への投資に利用できます。
非課税期間満了時の対応を考える必要がない
現行の一般NISAだと非課税期間の過ぎた保有商品は課税口座に移管するか、ロールオーバーをして期間を延長するかーという選択が迫られましたが、新NISAは非課税期間が無期限のため選択は不要です。
そのため期間やその後の対応を考慮する手間がかからず、長期に渡って非課税運用できるという安心感があります。
また現行のつみたてNISAは非課税期間が過ぎれば自動的に課税口座に移管されていましたが、新NISAのつみたて投資枠も無期限で非課税運用が可能なため、期間を気にせず投資できます。
恒久化ですでにNISAをしている今までの分はどうなるのか
現制度のNISAは2023年末で新規買付終了となりますが、それまでに投資した商品は現行で定められている期間は非課税で運用できます。
また新制度で示されている生涯に渡る非課税限度額の1800万円にも、現行のNISAで既に利用している金額は含みません。
そのため既にNISAをしている場合は現制度内で可能な金額を十分に利用した上で、新制度でも満額の非課税保有限度額で運用を始めることができます。
「NISAに興味があるけどまだ始めていない」という場合も、新制度が始まるのを待つよりも現行制度の時点から始めた方が、生涯に渡って非課税で投資できる金額は大きくなるためメリットがあります。
2023年だけでも現行のNISAを利用する場合、より多額の非課税投資を望む場合は一般NISA、長い期間の保有を望む場合はつみたてNISA―という風に自身の投資戦略や目的に合わせて運用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
「新NISAとは何なのか?」「どんなメリットがあるのか?」など、疑問や不安を感じている投資初心者や既にNISAを始めている人にとっても、新制度は安定的に資産形成を進めやすくなる強みをいくつも含む制度になります。
恒久化や投資可能額のアップによりスケールが大きくなる分利用する種類や金額、時期などを十分考慮し、計画的に戦略を立てて進めるようにしましょう。