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一生の内で大きな買い物のひとつに、住宅購入があります。
住宅を購入する際は、銀行などが実施している住宅ローンを利用する人が大半です。
住宅ローンのシステムは、銀行ごとに異なります。
本記事では、住宅ローンの変動金利について、その仕組みとメリットやデメリットについて解説します。
住宅ローンの「変動金利」とは
住宅ローンの「変動金利」とは、借入期間中に適用された金利が変動する金利タイプを指します。
適用金利の見直しは、お金を借り入れた後、半年に一度のスパンで行われることが一般的です。
とはいえ、借り入れ直後の5年間は、適用金利が変動した場合でも、毎月の返済額が変わることはありません。
5年経過後の返済額については、その時の元金残高や、残りの返済期間、および金利から算出されます。
適用金利が大きく上がった場合でも、見直し後の返済額は「直前の返済額の最大1.25倍まで」と決められていることが多く、返済額が大幅に増えることはまずありません。
変動金利の仕組み
銀行は、預かったお金を別の企業や個人へ貸し、金利を取ることで利益を得ています。
多くの人がお金を必要としているときは、金利が多少高くても借りられていきます。
反対に、借り手が少ないときは、借りやすくなるように銀行は金利を引き下げます。
もう少し大きな目線で見ると、金利には日本銀行の存在が大きく影響しています。
日本銀行の役割の1つに、市場に流れるお金の量を調整し、経済の過熱や冷え込みを抑えることがあります。
景気が良いときは市場にお金がだぶついているので、余っているお金を回収するために金利を引き上げ、反対に不景気でお金が不足している時は市場にお金を回すために金利を引き下げます。
このように、経済の状況が良いときは金利が上がり、悪いときは下がります。
変動金利のメリット・デメリット
昨今は低金利が続いているため、低金利のメリットを十分に受けられる変動金利は魅力的です。
しかし、金利の低さだけで選ぶのは、得策ではありません。
この章では、変動金利についてのメリットとデメリットについて、それぞれ説明します。
変動金利のメリット
変動金利のメリットには、以下の2つが挙げられます。
金利が低い
変動金利は、固定金利に比べて金利が低いことが大きな魅力です。
結果的に元金の返済が進みやすく、金利分まで含めた返済総額が少なく済み、返済期間を短縮できる可能性があります。
近年は特に低金利が続いており、以後も金利が上昇しないままであれば、変動金利のメリットは非常に大きくなると言えます。
支払額の激変緩和措置がある
景気変動による金利の見直しは、銀行ごとに異なりますが、半年に1回が通例です。
景気が上向くと金利も上昇しますが、多くの住宅ローンでは、5年間は支払額が据え置きとされています(「5年ルール」)。
また、5年ごとに金利を見直す際も、支払額は直前の支払額の25%までしか増えません(「125%ルール」)。
このように、急に金利が上がった場合でも、毎月の支払額がすぐに変化しないようになっています。
変動金利のデメリット
対して、変動金利のデメリットには、以下の2つがあります。
返済額や返済期間が当初の計画とかけ離れてしまう可能性がある
変動金利のデメリットは、金利変動により返済総額が変化することです。
とくに金利が上昇したときは、毎月の返済額が以前よりも増えるため、返済期間が延び、場合によっては払えない可能性も出てきます。
住宅ローンは返済が長期になるため、返済の最中に多くのライフイベントが発生します。
教育費や老後資金などにも影響するため、金利動向のこまめなチェックが必要です。
「5年ルール」と「125%ルール」の適用で元金が減りにくくなる可能性がある
金利が上がっても返済額は5年間据え置きになるほか、返済額が増えるときも元の返済額から上昇分は25%までと決められています。
実は、この「5年ルール」と「125%ルール」が変動金利を選択する上で大きなデメリットにもなり得ます。
金利が上がっても月々の支払額は変わらないため、結果として支払額に占める金利の割合が増加し、元金の返済が滞ることもあります。
金利の上昇度合によっては、支払っている金額がすべて利息分ということになる可能性も考えられます。
そのため、住宅ローンの残高が残ったまま返済期間の満了を迎え、残りを一括で支払う事態もあり得ます。
変動金利と固定金利の違い
住宅ローンを組むときの金利には、変動金利と固定金利があります。
景気動向によって金利が変動する変動金利とは異なり、固定金利は返済開始からの金利が変化しません。
金利が変化しないため、毎月の返済負担は一定になり、家計としては出ていくお金を管理しやすいという利点があります。
反対に、変動金利に比べると、設定されている金利が高いことがデメリットとして挙げられます。
また、金利が上昇しても影響がないため、金利分まで含めたローンの支払総額が、当初の計画から大きく変化しないという点はメリットですが、同時に金利が下がっても、支払額が変わらないため、一定の負担が続くという点には注意が必要です。
2023年以降の変動金利はどうなるのか
住宅ローンを選ぶとき、借入総額だけではなく返済期間や、金利も重要な確認すべきポイントです。
この章では、現在までの主要金融機関の住宅ローンの金利推移を確認し、2023年以降の住宅ローンの変動金利の見通しについて、政府や日銀の動向を踏まえながら紹介します。
主要金融機関の住宅ローン金利推移
2023年現在、これまでの20年で住宅ローンの金利は大幅に下がっています。
変動金利については、かつては2%近い水準にあったものが、0.4%程度まで下落しています。
なかでも、auじぶん銀行の住宅ローンは金利が0.4%を切るなど低い水準にあることが分かります。
地方銀行でも、住宅ローンの金利は0.6%以下となっており、過去最低の水準となっています。
固定金利も、2004年の3%台から2019年の1%前半までと15年で2%も下落しました。
現在は、世界的にも金利が上昇傾向にあるため、1%後半、銀行によっては2%目前まで上昇しています。
変動金利の今後の見通し
住宅ローンの変動金利は、日本銀行の動向に影響されます。
2022年に急速な円高が進んだため、日銀は金融政策を転換、長期金利の利率の目標上限を0.25%から0.5%へと引き上げました。
アメリカでの銀行の経営破綻を受け、結果としては0.3%後半で落ち着きましたが、世界的な高金利の中で長期金利を低く維持してきた日銀が、金利を上げたことは大きな影響を及ぼしました。
日銀の長期政策金利と連動する固定金利の金利上昇も、そのひとつです。
ほかにも、消費者物価指数の上昇など、日銀の金融政策の修正結果では、緩やかではあるものの、金利は上昇する可能性が高いとされています。
各銀行も、国債など債権の価値が上がったため、住宅ローンを低金利で獲得する必要性も薄れました。
銀行の資産運用の面からも、今後、住宅ローンは上昇する可能性が高いでしょう。
変動金利・固定金利の選び方
金利が低い時期が長く続いているため、多くの人が変動金利を選んで住宅ローンを申し込んでいます。
固定金利か、変動金利か迷ったときの選び方について説明します。
金利上昇の見通し
金利は景気動向に大きく左右されます。
住宅ローンを申し込むときは金利が低くても、今後、金利がどのように変化するかはわかりません。
景気が上向きで、金利が上がる予測であれば固定金利の方が支払総額を抑えられます。
対して、金利が下がる予測であれば、変動金利の方がメリットを十分に受けられます。
今後の金利動向を予測して選択することが重要です。
借入期間の長さ
借入期間の長さも、固定金利・変動金利を選択する大きなポイントです。
借入期間が長いと、期間中に返済者のライフステージに変化があります。
例えば、子どもの年齢が小さいときにローンを組んだ子育て世代は、返済期間中に子どもの進学などが発生します。
このように、まとまったお金が必要となるタイミングが定期的に発生するため、借入期間が長くなる場合は、金利上昇によって負担が増えるリスクのある変動金利は避けたほうが無難です。
反対に、借入期間が短ければ、ライフイベントを気にする必要があまりないため、変動金利が向いています。
収入の変化
住宅ローンを申し込むときは、現在の収入で月々の返済計画が決定されます。
しかし、住宅ローンの返済は長期になるため、返済期間中に転職や退職、景気の変化や勤め先の倒産などで収入が変化することが考えられます。
収入の変化があっても、返済に余裕があることは重要です。
変動金利の場合、不測の事態と返済額の増加が重なることも珍しくないので、余裕を持った計画にできる金利選択が必要です。
まとめ
人生において大きなイベントと言える住宅購入には、金利の選択にも注意が必要です。
建築会社や銀行に勧められるままに住宅ローンに申し込むのではなく、今後の金利動向やライフプランやライフステージの変化などで、固定金利も変動金利もメリットが存在します。
目先だけではなく、返済し終わる時期までのことも吟味して、どちらが合っているのかを考えましょう。