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ミネラル豊富で栄養価の高いひじきは、日本の伝統食として古くから食べられてきました。
食卓で主役になることは少ないですが、ひじきには健康によい栄養素がたっぷり含まれています。
この記事では、ひじきに含まれる主な栄養素と効能、食べるときの注意点、ひじきの種類について解説します。
ひじきに含まれる主な栄養素と効能
ひじきには、食物繊維をはじめミネラルやビタミンなどの栄養素が豊富に含まれます。
この章では、ひじきに含まれる主な栄養素とその効能を紹介します。
なお本記事では、食品の栄養価を日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より引用しています。
食物繊維|血糖値の急上昇を抑える
ひじきには、血糖値の急上昇を抑える食物繊維が豊富です。
食事をして血糖値が上がると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を下げます。
しかしインスリンには、余った糖を脂肪に変え、体内に蓄える働きもあります。
血糖値が急上昇したり、血糖値の高い状態が続いたりすると、肥満や生活習慣病のリスクが高まるため、血糖値の上昇を穏やかにすることが大切です。
食物繊維には血糖値の上昇を穏やかにする作用があり、ゆでたひじきには、キャベツの約2倍、さつまいもの約1.3倍の食物繊維が含まれます。
また、食物繊維には便秘解消の効果もあります。
ひじきに含まれる水溶性食物繊維は、便を柔らかくして排便を促したり、腸内の善玉菌を増やしたりする働きがあります。
鉄|貧血を予防する
ひじきには貧血予防に効果のある鉄も含まれます。
鉄は、血液中に含まれるヘモグロビンの成分です。
ヘモグロビンには体全体へ酸素を運ぶ役割があるため、鉄が不足すると体内で酸素が足りなくなり、疲れやすくなります。
ひじきに含まれる鉄の量は、乾燥ひじきの加工に使用する釜がステンレス製か鉄製かによって異なります。
乾燥ひじきを水戻し後にゆでたものでは、鉄の量は100g当たり、ステンレス釜で0.3mg、鉄釜で2.7mgです。
乾燥ひじきの加工には、以前は鉄釜が使用されていましたが、現在はステンレス釜が主流となっています。
鉄釜で加工されたひじきは「鉄釜ひじき」などの商品名で売られています。鉄分を摂取したい場合は探してみるとよいでしょう。
カルシウム|骨や歯を形成する
ひじきには、骨や歯を形成するカルシウムが豊富に含まれます。
カルシウムは日本人に不足しがちなミネラルです。カルシウムが不足すると、骨粗しょう症、高血圧、動脈硬化などをまねくことがあります。
カルシウムの吸収率を上げるには、ビタミンDと一緒に摂取すると効果的です。
ビタミンDは、ひじきには含まれておらず、鮭などの魚類、干ししいたけやきくらげなどのきのこ類に多く含まれます。
「干ししいたけを加えたひじきの煮物」「鮭とひじきの炊き込みご飯」などが、カルシウムが効率よく摂取できるためおすすめです。
マグネシウム|血圧や体温を調整する
ひじきには、血圧や体温の調整に必要なマグネシウムも含まれます。
マグネシウムは、カルシウムとともに骨を形成したり、体内の代謝を助けたりするミネラルです。
血圧や体温の調整のほか、筋肉の収縮や神経伝達の機能維持にも関わっています。
マグネシウムが不足すると、筋肉の痙攣が起こり、足がつりやすくなります。
慢性的に不足すると、骨粗しょう症、高血圧、虚血性心疾患などを引き起こすことがあります。
カリウム|むくみを解消し高血圧を予防する
ひじきに含まれるカリウムは、むくみ解消や高血圧予防に効果のあるミネラルです。
カリウムには、細胞内の浸透圧を調整し一定に保つ作用があります。
余分なナトリウムの排出を促すため、塩分の摂りすぎによるむくみや高血圧の予防に効果的です。
筋肉の動きを正常に保つ働きもあり、不足すると、筋力低下のほか食欲不振、不整脈などの症状が出ることがあります。
ヨウ素|新陳代謝を促す
ひじきには、甲状腺ホルモンの合成に欠かせないヨウ素が多く含まれます。
甲状腺ホルモンには新陳代謝を促す作用があります。新陳代謝が活発になると、細胞の生まれ変わりが促進され、肌や髪の健康維持に役立ちます。
甲状腺ホルモンは、子どもの成長や発育にも必要なホルモンです。
ただし、ヨウ素の過剰摂取は健康に影響を及ぼすことがあります。ひじきなどの海藻類はヨウ素を多く含むため、食べすぎないようにしましょう。
β-カロテン|皮膚・粘膜を健康に保つ
ひじきには、皮膚や粘膜を健康に保つβ-カロテンが含まれています。
β-カロテンは、強い抗酸化作用をもつカロテノイドの一種です。
生活習慣病の一因となる活性酸素の影響を抑え、老化防止に役立ちます。
β-カロテンは、体内でビタミンAに変換される「プロビタミンA」とよばれる物質のひとつでもあります。
ビタミンAは、皮膚や粘膜、目の健康を保つ作用があり、肌荒れの防止などに効果的です。不足すると、夜盲症を引き起こすことがあります。
β-カロテンは脂溶性のため、ひじきの調理で油を使うと吸収率がアップします。
ビタミンK|血液の凝固を助ける
ひじきに含まれるビタミンKは、出血時などに血液の凝固を助ける作用のある脂溶性ビタミンです。
ビタミンKは血液凝固因子が生成される際に補酵素として働き、血液の凝固を促します。
また、カルシウムの流出を防ぎ骨に沈着させる働きがあるため、骨の形成にも必要です。
ビタミンKが不足すると、出血しやすくなったり、骨粗しょう症のリスクが高まったりします。
ひじきを食べるときの注意点
栄養価が高く、健康によい効能をもつひじきですが、食べる際には注意しなければならない点があります。
この章では、ひじきを食べる際の注意点を紹介します。
じゅうぶんに水で戻してから調理する
ひじきを食べるときは、じゅうぶんに水で戻してから調理しましょう。
これは、ひじきに含まれるヒ素を除去するためです。
ヒ素は、海水や土壌など自然界に広く存在する元素で、飲料水や、さまざまな食品に含まれています。
なかでもひじきは、健康に悪影響があるとされる無機ヒ素の割合が高い食品です。
しかし、ひじきに含まれる無機ヒ素は、水戻しにより水中へ流出させることができます。
乾燥ひじきを60分間水で戻した場合、芽ひじきで75〜95%、長ひじきで55〜90%のヒ素が除去されるという報告があります。
戻すときの水温が高いほど、除去されやすいこともわかっているため、ぬるま湯で戻す、水戻ししたものをさらにゆでるといった下処理を行うとよいでしょう。このとき、たっぷりの水を使うのもポイントです。
ひじきは日本で古くから食べられていますが、これまでにヒ素による健康被害が出たとの報告はありません。
通常の食べ方であれば問題はないため、過度に心配せずに食卓に取り入れましょう。
※参考:内閣府食品安全委員会「ひじきに含有されている無機ヒ素について」
甲状腺の機能障害がある人は食べすぎない
ひじきにはヨウ素が含まれるため、甲状腺の機能障害がある人は食べすぎないようにしましょう。
前述したとおり、ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に必要です。
もともとヨウ素が不足している人が過剰に摂取すると、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、甲状腺機能が亢進することがあります。
逆に、ヨウ素が充足している人が過剰に摂取すると、甲状腺ホルモンの分泌量が減って甲状腺の機能が低下する場合があります。
甲状腺の機能障害がある人は、ひじきやこんぶなど、ヨウ素を多く含む食品の過剰摂取には注意が必要です。
ひじきの種類と加工方法
ひじきには、芽ひじきや長ひじきといった種類があり、それぞれの特徴をいかした調理法があります。
この章では、ひじきの種類による特徴やおすすめの調理法、乾燥ひじきの加工方法を紹介します。
ひじきの種類
ひじきの種類で代表的なものは以下の3つです。
- 芽ひじき
ひじきの葉にあたる部分。姫ひじきともよばれる。
細く小さいため戻し時間が短く、手軽に調理できる。
食感は柔らかく、ほかの食材とも絡みやすい。
煮物や和え物、混ぜご飯などさまざまな料理に活用できるほか、ハンバーグや卵焼きに混ぜ込むのもおすすめ。 - 長ひじき
ひじきの枝にあたる部分。茎ひじきともよばれる。
芽ひじきよりも太く長く、モチモチとした食感。
ひじきの風味が強く、食べごたえがある。煮物や炊き込みご飯のほか、ペペロンチーノなどパスタの具材としてもおすすめ。 - 寒ひじき
一般的なひじきは3〜5月に収穫されるが、寒ひじきは1〜2月の早い時期に収穫され、早どれひじきともよばれる。
ひじきの新芽で、収穫量が少なく貴重。
柔らかくシャキシャキとした食感。
普通のひじきと同様に調理できるが、繊細な食感をいかしたサラダもおすすめ。
ひじきの加工方法
ひじきは通常、乾物として流通しています。
乾燥ひじきの加工方法には、大きく分けて伊勢製法と房州製法の2種類があり、現在流通しているものは伊勢製法が主流です。
ここでは伊勢製法による一般的なひじきの加工方法を紹介します。
- 春から初夏にかけて、手作業によってひじきが収穫される。
- 産地で天日干しされ、乾燥(素干し)される。
- 素干しひじきは、加工業者により洗浄・水戻し・水洗いされ、蒸しあげられる。
- 蒸しあげたひじきを乾燥させ、異物検査を行い、製品となる。
まとめ
ひじきは、食物繊維、ミネラル、ビタミンなどの栄養素を豊富に含む、健康によい食品です。
しかし、食べすぎると甲状腺機能に影響が出ることもあるため、適切な量を摂取するようにしましょう。
日本の伝統食であるひじきは、定番の和食だけでなく、パスタやサラダなど洋風の料理にも活用できます。ぜひ普段の食卓に加えてみてください。