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※本コンテンツはAI技術を活用しつつ人による執筆や監修をしています。
転職や退職により年収や雇用形態が変わる際、ふるさと納税の控除上限額や手続きについて不安を感じるかたが多くいらっしゃいます。この記事では、退職や転職後のふるさと納税に関する影響、控除額の計算方法、そして必要な手続きを詳しく解説いたします。
転職・退職はふるさと納税にどう影響するか?

ふるさと納税の控除上限額は、転職や退職によって大きく変動する可能性があります。
ふるさと納税の控除上限額の基本原理
ふるさと納税とは、自治体への寄附額のうち、2,000円を超える分について所得税からの還付、住民税からの控除が受けられる制度です。控除される税金の総額には上限があり、この上限額は個人の「年間総所得」に応じて決まります。
そのため、退職や転職によって年収が減少したり、無職期間が生じたりすると、年間総所得も減少します。これに伴い、ふるさと納税の控除上限額も変動するため、注意が必要です。上限額を超えて寄附した分は、自己負担となります。
控除対象となる「所得」と、控除対象とならない「所得外」の違い
ふるさと納税の控除上限額を算出する際の基準となるのは、あくまで課税対象となる「所得」です。
とくに退職後に受け取る可能性のある「失業保険(失業手当)」は、所得税法上、非課税所得とされています。したがって、失業保険をいくら受け取っても、その金額は控除上限額を計算するための年収には算入されません。
所得税が非課税である育児休業給付金や傷病手当金なども同様です。寄附を行う際は、非課税の手当ではなく、給与や事業収入といった所得に基づいて年間収入を見積もることが重要です。
【ケース別】退職・転職後のふるさと納税 控除上限額の計算

退職や転職のタイミング、その後の状況によって、年間の総収入は大きく異なります。ここでは、具体的なケースと計算の考え方を解説します。
退職した年末まで再就職しない場合(無職期間あり)
年の途中で退職し、その後年内に再就職しなかった場合、その年の給与所得は「1月1日から退職日までに勤務先から支払われた給与」の合計額となります。
控除上限額の目安は、この退職日までの収入のみを基に算出されます。
たとえば、毎月30万円の月収があり、夏季ボーナスが50万円の人が9月末で退職し、年内に再就職しなかった場合は下記の通りになります。
- 給与所得の合計:30万円 × 9か月 + 50万円 = 320万円
- この320万円を年収としてシミュレーションを行い、控除上限額を算出します。
この場合、再就職せず無職であった期間の長さが、控除上限額の減少に直結することになります。そのため、年の後半に退職した場合でも、上半期までの収入を正確に把握して寄附額を判断することが大切です。
年内に転職して給与所得がある場合
年内に退職し、すぐに転職して新しい職場から給与を得た場合、その年の総収入は前職の給与と現職の給与を合算したものになります。
- 計算対象となる年収:前職の退職時までの収入 + 転職後の年末までの収入
たとえば、3月末に前職を退職し、4月から現職に転職した場合下記の通りになります。
- 前職:月収25万円、ボーナスなし
- 現職:月収35万円、冬季ボーナス50万円
- 総収入の合計:(25万円 × 3か月分)+(35万円 × 9か月分 + 50万円)= 395万円
この場合、年収は395万円として控除上限額を算出します。無職期間があっても、年内に給与所得が合算されれば、その合計額を基準に計算することになります。
転職に伴い給与が大きく変動した場合は、総年収を再計算することが重要です。転職先の会社で年末調整を受ける際に前職の源泉徴収票が必要になりますので、必ず準備してください。
退職後に配偶者の扶養に入る場合
退職後に配偶者のかたの扶養に入り、自身が年間で一定の所得以下になった場合、ふるさと納税で税額控除を受けることは困難になります。
ふるさと納税の控除は、ご自身の所得税・住民税から行われます。扶養に入ることでご自身の所得が基礎控除や各種控除の範囲内に収まり、結果として所得税や住民税が課税されない、または極めて少額となる場合が多いためです。
ご自身の税負担がほとんどない、またはゼロの場合は、寄附金に対する税金の優遇措置を受ける余地がなく、寄附した全額が実質的な自己負担額となります。
年収が100万円以下で寄附を行う場合
年収が100万円以下のかたも、上記と同様の理由で、ふるさと納税の控除が適用されず、実質的に全額自己負担となる可能性が高いです。
これは、年収100万円以下の場合、ほとんどのかたは所得税の納税額がゼロになるためです。住民税も非常に低額になることから、控除できる「税金そのもの」がないという状況になります。このため、ふるさと納税による税負担の軽減効果は期待できません。
休職・育児休業で給与が激減またはゼロになる場合
病気やケガによる休職や、育児休業の取得により、給与が激減したり、支払いがゼロになったりする場合も、控除上限額の計算に注意が必要です。
休職や育児休業の期間に、会社から支払われる休業手当や育児休業給付金は、原則として非課税所得です。
したがって、これらの手当金はふるさと納税の控除上限額を計算する年収には算入できません。休業期間が長ければ長いほど、年間の課税所得は大幅に減少し、控除上限額は低くなります。
休業前に給与が支払われていた期間の収入と、休業明けに給与が支払われた期間の収入のみを合算し、正確な課税所得を見積もることが大切です。
退職金は控除上限額に影響するか?
退職金は、原則としてふるさと納税の控除上限額に影響しません。
退職所得控除の仕組み
これは、退職金にかかる税金が、通常の給与所得とは分離された**「退職所得」**として計算されるためです。退職所得には、勤続年数に応じて算出される「退職所得控除」という優遇措置が適用されます。
退職所得控除額は、勤続年数が20年以下であれば「40万円 × 勤続年数」、20年超であれば「800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)」という計算式で求められます
参考:国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
これにより、ほとんどの退職金は、この控除額の範囲内に収まるか、収まらない場合でも課税対象額が大幅に軽減されます。
控除上限額への影響が少ない理由
退職所得は、他の給与所得と合算されずに分離課税されるため、退職金を受け取っても給与所得に対する税額が高くなることはありません。
そのため、退職金の有無によって控除上限額が大きな影響を受けることはないといえますが、退職所得が非常に高額で、控除後の課税退職所得が多額になるといったごく稀なケースでは、控除上限額に影響を与える可能性もあります。
退職・転職時に確認すべき3つの手続き

退職や転職の際には、寄附金の申告方法、必要書類、そして住所変更に関する重要な手続きがあります。
寄附の申告方法の選択と準備
寄附の申告方法には「ワンストップ特例制度」と「確定申告」の2種類があり、退職・転職後の状況によって選択肢が変わります。
ワンストップ特例制度が利用できるケース
年内に転職し、転職後の会社で年末調整をすべて終えることができる場合、ワンストップ特例制度を利用できる可能性があります。この制度は、確定申告が不要な給与所得者であり、かつ1年間の寄附先が5自治体以内である場合に適用されます。
また、ふるさと納税を行った翌年に退職した場合も、寄附した年(前年)に確定申告が不要な給与所得者であれば、特例申請書を期限(翌年1月10日必着)までに提出することで利用が可能です。
確定申告が必須となる主なケース
以下のいずれかのケースに該当する場合は、ワンストップ特例制度は利用できず、確定申告が必須になります。
- 年の途中で退職し、年末まで再就職しなかった場合(無職期間があり、年末調整が受けられないため)
- 1年間の寄附先が6自治体以上になった場合
- 給与所得者ではない個人事業主や、2か所以上から給与を受け取っていて年末調整を一本化できない場合
確定申告の準備と必要な書類
確定申告を行う場合は、以下の書類を用意する必要があります。
- 前職・現職からの源泉徴収票
年間の総収入を証明する重要な書類です。転職や退職の際は、前職の源泉徴収票を必ず保管してください。 - 寄附金受領証明書
寄附先の自治体から送付される書類です。 - 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
確定申告は、寄附した年の翌年2月中旬から3月中旬までの間に行います。この手続きを通じて、ふるさと納税による税金の控除を受けることができるようになります。
引越し(住所変更)を伴う場合の注意点
退職や転職に伴い引越し、住所が変わった場合は、ふるさと納税の手続きに関して注意が必要です。
寄附を行った年内に住所が変わった場合は、原則として、寄附先の自治体すべてに対し、住所変更の届け出を行う必要があります。これは、寄附が控除される住民税の通知が、寄附先の自治体から変更後の自治体へ正確に届くようにするためです。
ワンストップ特例制度を利用する方は、寄附先の自治体へ「寄附金税額控除に係る申告特例事項変更届出書」を提出してください。この届出を怠ると、住民税からの控除が正しく行われず、全額自己負担となるおそれがあります。
年の途中で引越しをした方は、寄附先の自治体へ速やかに住所変更の手続きを行うことが重要です。
無職でも確定申告を行うメリット

「退職して無職になったから、確定申告は不要」といわれることがあります。たしかに、所得がゼロであれば確定申告は必要ありませんが、ふるさと納税を行った場合は話が別です。
無職期間があっても、年末までに給与などの「所得」が少しでもあった場合は、確定申告を行うことで税額控除を受けられるメリットがあります。
年の途中で退職すると、最後の給与で年末調整が行われず、源泉徴収された所得税が多くなりすぎていることがあります。確定申告を行うことにより、この源泉徴収されすぎた所得税が還付されます。
さらに、ふるさと納税による税額控除もこの確定申告で手続きが行われます。その結果、納めすぎた税金の還付を受けながら、ふるさと納税による住民税からの控除もできるため、実質的な自己負担額を最小限に抑えることができるのです。
まとめ
転職や退職に伴い、ふるさと納税の控除上限額や必要な手続き方法も変わります。とくに年収が減少した場合は、上限額が以前より低くなる可能性が高いため、寄附を行う前に年間総所得を正確に見積もることが大切です。
また、転職のタイミングによっては、ワンストップ特例が利用できず、確定申告が必須になることがあります。手続きの漏れや間違いがないように、前職の源泉徴収票や、引越しに伴う住所変更届の提出は忘れずに。
















