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転職や退職を経験した後、ふるさと納税に関する控除額の計算や必要な手続きについては、どのように対応すべきか疑問を感じることがあるでしょう。
この記事では、転職や退職後のふるさと納税について、控除額の正確な計算方法、必要な手続きに至るまで詳しく解説します。
退職・転職後のふるさと納税の控除上限額はどうなる?
退職や転職は、ふるさと納税の控除上限額に大きな影響を与える可能性があります。
ふるさと納税は、個人の年収に基づいて控除上限が設定されるため、収入の変動は直接、控除限度額に影響します。
ここでは、具体的なケースに分けて、それぞれの状況でどのように控除上限が変わるかを見ていきましょう。
- 退職した年末まで無職の場合
- 年内に転職して収入がある場合
- 退職後に配偶者の扶養に入る場合
- 年収が100万円以下の場合
退職した年末まで無職の場合
退職し、年末(12月末)まで無職の場合、その年の収入は主に退職までの給与から成り立ちます。
この収入がふるさと納税の寄附金控除の対象となります。
寄附金控除の計算には、退職によって受け取った給与やその他の所得(例えば、株式売買による利益など)が含まれます。
寄附金控除の対象となる年収
退職時までの収入(1月~退職月)
重要な点として、失業保険の手当は寄附金控除の対象になりません。
失業保険は所得と見なされないため、ふるさと納税の控除対象外とされています。
控除上限額の計算方法
例:10月末に中途退職して年内は再就職しない場合
●月収:25万円
●夏季支給のボーナス:20万円
寄附金控除の対象となる年収:25万円×10か月分+20万円=270万円
控除上限額の計算はふるなびの「控除上限額シミュレーション」で行うことができます。
上記の年収の場合、控除上限額の目安は以下となります。
控除上限額の目安:22,000円
また、上記の金額は簡易的なシミュレーションによるもので、配偶者、扶養家族の有無で変動します。
また、寄附金の申告方法についても注意が必要です。
無職の場合、通常、会社で行われる年末調整を受けることができません。
そのため、ふるさと納税を行った際には、ワンストップ特例制度を利用することができず、自分で確定申告を行う必要があります。
これは、パートやアルバイト、または個人事業主など非常勤や自営業の場合も同様で、ふるさと納税の控除を受けるためには自分で確定申告を行うことが必須となります。
年内に転職して収入がある場合
年内に退職し、その後再就職して収入を得た場合、その年の総収入は転職前後の収入を合計したものが寄附金控除の対象となります。
寄附金控除の対象となる年収
前職の退職時までの収入(1月~退職月)+転職後の年末までの収入(転職月~12月)
ここでのポイントは、無収入の期間があったとしても、その期間を収入0円として計算し、年間の合計収入額を算出することです。
この合計額がふるさと納税の控除上限の計算基準となります。
個人事業主として新たに事業を始めた場合も、同様の計算が適用されます。
個人事業主の場合、その年の事業収入(事業所得)が寄附金控除の対象となります。
ここで重要なのは、年間の総所得を把握し、それに基づいてふるさと納税の控除上限を計算することです。
控除上限額の計算方法
例:3月末に中途退職して4月から別の会社に再就職した場合
●前職の月収:25万円、ボーナスなし
●現職の月収:30万円、冬季支給のボーナス25万円
寄附金控除の対象となる年収:(25万円×3か月分)+(30万円×9か月分+25万円)=370万円
控除上限額の計算はふるなびの「控除上限額シミュレーション」で行うことができます。
上記の年収の場合、控除上限額の目安は以下となります。
控除上限額の目安:35,000円
転職後の収入に応じて控除上限額は変動します。また、上記の金額は簡易的なシミュレーションによるもので、配偶者、扶養家族の有無で変動します。
年内に転職し再就職先から収入を得た場合、再就職先で年末調整を行うことが可能で、ワンストップ特例制度を利用できます。
ワンストップ特例制度を利用すると、複数の寄附を行った場合でも、確定申告を行う必要がなくなり、手続きが簡素化されます。
この制度を利用するためには、前職から発行された源泉徴収票が必要となります。
退職後に配偶者の扶養に入る場合
退職して配偶者の扶養に入ると、ふるさと納税の寄附金は全額自己負担となります。
これは、ふるさと納税の控除システムが個人の所得に基づいて計算されるためです。
配偶者の扶養に入ると、その人自身の所得は基本的にないとみなされるため、ふるさと納税による控除を受けることはできません。
したがって、寄附を行う場合、控除の恩恵を受けることなく、全額を自己負担することになります。
年収が100万円以下の場合
年収が100万円以下の場合も、ふるさと納税の寄附金は全額自己負担となります。
低収入の場合、所得税の負担が少ない、またはないため、寄附に対する税額控除の恩恵を受けることができません。
ふるさと納税の仕組みでは、寄附した額に応じて所得税と住民税から控除されますが、所得が低いとその控除を受ける余地がほとんどないためです。
退職金はふるさと納税の控除上限額にほとんど影響しない
退職金を受け取った場合でも、ふるさと納税の控除限度額に大きな影響はありません。
退職金には「退職所得控除」が適用されるため、退職金にかかる所得税は元から大幅に軽減されます。
退職所得控除額は、勤続年数や受け取った退職金の額に基づいて計算され、これにより退職金に対する税負担が減少します。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数−20年) |
参考:国税庁|No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
例外的に退職金を年収に含めるメリットがあるのは、退職金が非常に高額で、控除後の退職所得が相当な額になる場合です。
このような状況では、退職所得に対する税額が高くなり、ふるさと納税の控除上限額に影響を与える可能性があります。
しかし、一般的には退職金はふるさと納税の控除上限に大きな影響を与えることは少ないと言えます。
ふるさと納税の翌年に退職してもワンストップ特例は利用可能
ふるさと納税を行った後、翌年に退職する場合でも、一定の条件を満たしていればワンストップ特例制度を利用することが可能です。
この制度を利用すると、確定申告を行わずにふるさと納税の控除を受けることができます。
ただし、ワンストップ特例制度の利用にはいくつかの申請条件があります。
ワンストップ特例制度の主な申請条件は以下の通りです。
ワンストップ特例制度の申請条件
- ふるさと納税以外の確定申告が不要な給与所得者(会社員など)の方
- 1年間(1月~12月)でふるさと納税の寄附先が5自治体以内である方
ワンストップ特例制度の申請方法は以下の通りです。
ワンストップ特例制度の申請の流れ
- 特例申請書を用意する
- 特例申請書に必要事項を記入する
- 必要書類を準備する
- 提出期限までに郵送する
- 手続き完了
ワンストップ特例制度の申請期限は翌年の1月10日(必着)です。この期日までに必要な書類を提出しなければ、制度の利用はできません。
詳細な申請方法や必要書類については、以下のページで詳しく解説されています
【完全版】ワンストップ特例制度の期限・書き方・必要書類などをわかりやすく解説!
注意点として、ふるさと納税をした翌年に再就職していない場合、つまり無職の期間がある場合は、確定申告が必要となります。
これは、ワンストップ特例制度が年末調整を行う会社員などにのみ適用されるためです。
そのため、無職の場合はワンストップ特例制度を利用することができず、確定申告を行う必要があります。
無職になってもふるさと納税の確定申告をするメリットはある
退職後に再就職せず無職のままの場合、ワンストップ特例制度は利用できません。
しかし、それでもふるさと納税に関する確定申告を行うことには大きなメリットがあります。
確定申告を通じて、寄附金に対する税額控除を受けることが可能になるからです。
とくに、年末までに収入があった場合(例えば年初に退職した場合など)、その収入に対して所得税が課せられます。
ふるさと納税を行った場合、その寄附金額は所得から控除され、実質的に支払う税金の額を減らすことができます。
これは、無職の期間があっても年間の所得に対して計算されるため、無職になった後でもふるさと納税の控除を受けることは有益です。
さらに詳しい確定申告の流れや申告書の作成方法については、以下のページが参考になります。
ふるさと納税の確定申告徹底ガイド!申告の流れや申告書の作成方法を解説
まとめ
転職によって年収が変動した場合でも、控除上限額を正しく再計算し準備することで、ふるさと納税をこれまで通り継続することが可能です。
なお、寄附の限度額は以前より低くなることもあり得るので、自分の収入状況をきちんと把握しておくことが大切です。
また、転職の時期や雇用形態などによっては、確定申告が必要になることがあります。
さらに、転職に伴う引越しの際には、新しい自治体への連絡が必要になる場合もあるので注意が必要です。
何かわからないことがあれば、転職先の総務や経理の担当者、税務署、寄附を行った自治体への問い合わせが推奨されます。