目次
ビタミンB12は、水溶性ビタミンであるビタミンB群のひとつです。
代表的な働きとして造血をサポートする作用があり、不足すると貧血をまねく場合があります。
この記事では、ビタミンB12を多く含む食べ物と、主な働きや不足による影響、1日に必要な摂取量を紹介します。
ビタミンB12を多く含む動物性の食べ物
この章では、ビタミンB12が多く含まれる動物性食品を紹介します。
なお本記事では、食品の栄養価を日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より引用しています。
魚介類
ビタミンB12は、貝類をはじめとした魚介類に多く含まれます。
下表に食品の可食部100gあたりのビタミンB12の含有量をまとめます。
また、1食分の目安量と、目安量あたりのビタミンB12含有量も示します。
食品名 | 加工状態など | 1食分の 目安量(g) | ビタミンB12含有量(μg) | |
---|---|---|---|---|
目安量あたり | 100gあたり | |||
あさり | 生 | 40 | 17.9 | 44.8 |
あさり | 缶詰・水煮 | 30 | 19.2 | 64.0 |
しじみ | 生 | 20 | 13.6 | 68.0 |
かき | 生 | 50 | 11.5 | 23.0 |
まさば | 焼き | 80 | 17.6 | 22.0 |
さんま | 焼き | 80 | 12.8 | 16.0 |
たらこ | 焼き | 20 | 4.6 | 23.0 |
ビタミンB12は、あさりやさばなどに豊富に含まれます。
調理が難しい場合は、水煮の缶詰などを利用するのもおすすめです。
肉類
ビタミンB12は肉類のなかでも、とくにレバーに多く含まれます。
下表に食品100gあたりのビタミンB12の含有量をまとめます。
また、1食分の目安量と、目安量あたりのビタミンB12含有量も示します。
食品名 | 加工状態など | 1食分の 目安量(g) | ビタミンB12含有量(μg) | |
---|---|---|---|---|
目安量あたり | 100gあたり | |||
牛レバー | 生 | 80 | 42.4 | 53.0 |
牛タン | 生 | 100 | 3.8 | 3.8 |
牛肩ロース肉 | 赤身・生 | 100 | 2.1 | 2.1 |
牛ヒレ肉 | 赤身・生 | 100 | 2.0 | 2.0 |
豚レバー | 生 | 80 | 20.0 | 25.0 |
豚タン | 生 | 100 | 2.2 | 2.2 |
鶏レバー | 生 | 80 | 35.2 | 44.0 |
レバーほど豊富ではなくとも、ビタミンB12は肉類全般に含まれています。
ひとつの食品に偏らず、さまざまな食べ物から少しずつ摂取しましょう。
卵類
ビタミンB12は卵類にも含まれます。
下表に食品100gあたりのビタミンB12の含有量をまとめます。
また、1食分の目安量と、目安量あたりのビタミンB12含有量も示します。
食品名 | 加工状態など | 1食分の 目安量 | ビタミンB12含有量(μg) | |
---|---|---|---|---|
目安量あたり | 100gあたり | |||
鶏卵 | 卵黄・生 | 1個分・20g | 0.7 | 3.5 |
鶏卵 | 全卵・生 | 1個・60g | 0.7 | 1.1 |
うずら卵 | 全卵・生 | 5個・50g | 2.4 | 4.7 |
うずら卵 | 水煮缶詰 | 5個・50g | 1.7 | 3.3 |
ビタミンB12は、卵黄に含まれており、卵白にはほとんど含まれません。
100gあたりではうずらの卵に多く含まれますが、鶏卵と比較してカロリーや脂質が多いので、食べすぎには注意が必要です。
ビタミンB12を多く含む植物性の食べ物
ビタミンB12は、穀類、いも類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類などの植物性食品にはほとんど含まれていません。
例外的に、一部の海藻類に含まれます。
海藻類
下表に、海藻類100gあたりのビタミンB12の含有量をまとめます。
また、1食分の目安量と、目安量あたりのビタミンB12含有量も示します。
食品名 | 1食分の 目安量 | ビタミンB12含有量(μg) | |
---|---|---|---|
目安量あたり | 100gあたり | ||
焼きのり | 全形1枚・3g | 1.7 | 56.7 |
味付けのり | 8切8枚・3g | 2.0 | 67.9 |
青のり | 小さじ1・1g | 0.4 | 41.6 |
海藻類では、焼きのりや青のりのほか、あおさや岩のりにもビタミンB12が含まれます。
こんぶやひじき、わかめなど、他の海藻にはほぼ含まれません。
ビタミンB12の働きと不足による影響
ビタミンB12は、酵素の働きをサポートする補酵素として、体内のさまざまな代謝機能に関わっています。
この章では、ビタミンB12の主な働きと不足による影響について解説します。
赤血球の生成に関わる
ビタミンB12は、葉酸とともに赤血球の生成に関わり、造血のために欠かせません。
ビタミンB12と葉酸は、細胞のDNA合成に必須のビタミンです。
不足すると、赤血球細胞の成長がうまくいかず、造血に支障をきたします。
動悸や息切れ、倦怠感、ふらつきやめまいなどの症状を伴う巨赤芽球性貧血を引き起こします。
神経機能を正常に保つ
ビタミンB12には神経機能を正常に保つ働きがあります。
神経細胞は、たんぱく質、リン脂質、核酸などで構成されています。末梢神経にダメージを受けると、これらの成分が作り直され、傷が修復されます。
ビタミンB12には細胞の構成成分の合成をサポートする働きがあり、不足すると、末梢神経のダメージを修復できません。
結果的に末梢神経障害が起こり、手足のしびれや痛み、筋力低下などの症状が現れます。
動脈硬化を防ぐ
ビタミンB12には動脈硬化を防ぐ働きがあります。
アミノ酸の一種である「ホモシステイン」の血中濃度が高まると、動脈硬化を引き起こしやすくなるといわれています。
ビタミンB12は、ホモシステインの代謝をサポートし、適正な血中濃度を保つのです。
ビタミンB12が不足すると、ホモシステインの血中濃度が高まり、動脈硬化を引き起こしやすくなります。
摂取すべきビタミンB12の量と摂取状況
この章では、推奨される1日あたりのビタミンB12摂取量と、日本での実際の摂取状況を解説します。
推奨される1日あたりのビタミンB12摂取量
推奨される成人のビタミンB12の摂取量は、男女ともに1日あたり2.4μgです。
また、妊婦、授乳婦には付加量が設けられ、妊婦では0.4μg、授乳婦では0.8μgを上記の値に付加します。
※参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
1日の推奨量2.4μgは、あさりの身なら約4.6g分の含有量に相当し、あさりの味噌汁1杯で十分に補えます。
ただし、ビタミンB12は胃から分泌される内因子を介した、特殊な吸収機構をもちます。
一度にたくさん摂取しても一定以上は吸収されないため、3食を通して少しずつ摂るとよいでしょう。
過剰摂取については、仮にビタミンB12を多量に摂取しても、一定以上は吸収されず腸を通過し便とともに排出されるため、影響はないとされています。
ビタミンB12の摂取状況
厚生労働省の調査によると、日本人のビタミンB12摂取状況は、全年代で基準とされる推奨量を上回っていることがわかります。
※参考:厚生労働省「国民健康・栄養調査」
ビタミンB12は、卵や乳類を含むすべての動物性食品に含まれるほか、腸内細菌によっても合成されます。また、通常は数年分が肝臓に蓄えられています。
偏りのない食生活を送る健康な人であれば、不足する心配はほとんどありません。
ビタミンB12が不足しやすい人
ビタミンB12が不足すると、巨赤芽球性貧血、末梢神経障害、動脈硬化など、体にさまざまな悪影響が出ます。
この章では、どのような人にビタミンB12の不足が起こりやすいのかを紹介します。
動物性食品の摂取量が少ない人
動物性食品の摂取量が極端に少ない人は、ビタミンB12が不足しやすいです。
ビタミンB12は動物性食品のみに含まれ、植物性食品にはほぼ含まれません。
健康な成人では、2〜3mgのビタミンB12が肝臓に貯蔵されます。一時的に動物性食品を摂らなくても、数年間は貯蔵された分で補えます。
しかし、ベジタリアンやビーガンなど、継続的に動物性食品の摂取量が少ない、またはまったく摂らない人は、食事からのビタミンB12が不足し、欠乏症のリスクが高まります。
このような場合は、サプリメントなどで補うとよいでしょう。
胃の病気などで機能が弱まっている人
胃の病気などで機能が弱まっている人は、ビタミンB12の吸収不良が起こり、不足しやすくなります。
ビタミンB12は、食べ物に含まれるたんぱく質と結合しており、胃で分泌される胃酸やペプシンという消化酵素によって切り離されます。
その後、胃壁から分泌される内因子という糖たんぱく質との複合体となり、小腸で吸収されます。
このため、胃酸の分泌を抑える薬や、腸からの吸収を抑える薬などを服用している人は、ビタミンB12不足になりやすいです。
また、病気により胃を切除した人や、内因子がうまく働かない病気の人も、ビタミンB12の吸収不良が起こりやすくなります。
不足の心配がある人は、主治医に相談しましょう。
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