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健康によい効能をもつ黒にんにくは、1999年に三重県で作られたのが始まりといわれています。
加工品としての歴史は浅いですが、疲労回復やアンチエイジングなど多くの効能があると注目され、研究が進められている食品です。
この記事では、黒にんにくの効能や、多く含まれている成分、効果的な食べ方を紹介します。
黒にんにくとは?
黒にんにくは、白い生のにんにくを、一定の温度と湿度のもとで熟成させて作られたものです。
白いにんにくが黒くなるのは、アミノ酸と糖が化学反応を起こす「メイラード反応」によるもので、生のものよりも味やにおいがマイルドになり、ドライフルーツのような甘みと食感に変化します。
また、生のにんにくは刺激が強く、胃腸を傷めることもありますが、黒にんにくは胃腸障害が起こりにくいのも特徴です。
これは、胃腸障害の原因で、においの成分でもあるアリシンが、熟成により分解されるためと考えられています。
黒にんにくに多く含まれる成分
黒にんにくには、熟成によって生のときよりも増える成分があります。
この章では、黒にんにくに多く含まれる主な成分を紹介します。
S-アリルシステイン
黒にんにくには、S-アリルシステインという成分が豊富に含まれます。
にんにくには、S-アリルシステインのもととなる、アリシンという硫黄化合物が含まれています。
アリシンは、疲労回復などのさまざまな効能がありますが、においが強く胃腸を傷めやすい物質でもあります。
S-アリルシステインは、にんにくが熟成する過程でアリシンが変化し生成されたものです。
安定した化合物で、体内への吸収率が高く、以下のような作用・効果の報告があります。
- 抗酸化作用
- 疲労を軽減する
- 睡眠の質を改善する
- 抗がん作用
シクロアリイン
シクロアリインとは、にんにくや玉ねぎなどのネギ類に含まれる、含硫アミノ酸の一種です。
生のにんにくにはごくわずかしか含まれませんが、加熱すると増加し、黒にんにくには加工前の約2.6倍の量が含まれます。
シクロアリインには血液をサラサラにする作用があり、血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させ、血栓を予防する効果が認められています。
アルギニン
黒にんにくには、生のにんにくの約3倍のアルギニンが含まれます。
アルギニンとは、必要に応じてヒトの体内で合成されるアミノ酸の一種です。
アルギニンには以下のような作用・効果があります。
- 成長ホルモンの分泌を促す
- 筋肉を増強させる
- 免疫力を高める
- 血流改善
- 美肌効果
GABA(γ-アミノ酪酸)
生のにんにくを黒にんにくに加工すると、GABAの量が増えることがわかっています。
GABAは「Gamma-Amino Butyric Acid」の略で、正式には「γ-アミノ酪酸」といい、たんぱく質を構成しないアミノ酸の一種です。
人体にも含まれ、動物、植物、微生物など、自然界に広く存在しており、以下のような効能があります。
- 不安低減(緊張やストレスをやわらげる)
- 脳の興奮を鎮める
- 睡眠の質を高める
- 血圧を下げる
ポリフェノール
黒にんにくは生にんにくに比べ、ポリフェノールが豊富に含まれます。
ポリフェノールとは、植物に含まれる苦味や色素の成分です。
カテキンやアントシアニン、イソフラボンなどが有名ですが、その種類は5,000以上ともいわれています。
にんにくに含まれるポリフェノールの種類は非常に多く、黒にんにくに含まれるポリフェノールも、種類までは特定されていないのが現状です。
ポリフェノールは種類によってさまざまな効能がありますが、代表的なのは抗酸化作用です。
活性酸素の影響を抑え、血管や肌の老化を防ぐため、動脈硬化の予防やアンチエイジングに効果があります。
黒にんにくに期待される効能
黒にんにくは、熟成によって増える成分により、さまざまな効能が期待されます。
この章では、黒にんにくの主な効能を紹介します。
疲労回復
黒にんにくにはアルギニンやS-アリルシステインが豊富に含まれており、疲労回復に効果的です。
アルギニンは、疲労の原因となるアンモニアを解毒する作用があります。
S-アリルシステインには身体的な疲労を軽減する効果が認められています。
これは、S-アリルシステインによって、自律神経機能がうまく調節されるためと考えられています。
白いにんにくにも疲労回復効果がありますが、アルギニンやS-アリルシステインが増えた状態の黒にんにくでは、より高い効果が期待できます。
アンチエイジング
黒にんにくには、体の内外の老化を防ぐアンチエイジング効果があります。
これは、黒にんにくに含まれるS-アリルシステインとポリフェノールの働きによるものです。
体内で活性酸素が過剰に産生されると、細胞が傷つけられ、動脈硬化や生活習慣病など、さまざまな疾病を引き起こします。
S-アリルシステインとポリフェノールには強い抗酸化作用があるため、体内の活性酸素の影響を抑え、細胞の老化を防ぐのです。
抗酸化作用の強い黒にんにくは、アンチエイジングに効果的な食品といえます。
睡眠の質向上
黒にんにくに含まれるGABAとS-アリルシステインには、睡眠の質を向上させる効果があります。
GABAは、脳をリラックスさせて睡眠の質を高めるため、睡眠改善のサプリメントにも用いられる成分です。
S-アリルシステインにも同様の効果が認められており、黒にんにくを摂取後、睡眠の質が向上したという研究報告もあります。
質の悪い睡眠は、生活習慣病を引き起こし、さらに悪化させることがわかっています。良質な睡眠は、健康維持のためにも重要です。
血液サラサラ効果
黒にんにくを摂取すると、血液サラサラ効果が期待できます。
これは、黒にんにくに含まれるアルギニンとシクロアリインの働きによるものです。
血管では「一酸化窒素」という物質が産生されており、血管を拡張して血流をよくする働きがあります。
産生される一酸化窒素の量が不足すると、血管を広げることができず、血流が滞ってしまうのです。
アルギニンには、血管における一酸化窒素の産生を高め、血流をよくする働きがあります。
またシクロアリインも、血液をサラサラにし、血栓予防に効果的な成分です。
黒にんにくには血流を促進する効果があるため、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などの予防に役立ちます。
免疫力アップ
黒にんにくは免疫力のアップにも効果的です。
黒にんにくに含まれるアルギニンには、免疫細胞を活性化させ、病原菌への攻撃力を高める作用があります。
体内で産生される一酸化窒素は、免疫システムに関わり、抗菌作用をもつことがわかっています。
アルギニンには一酸化窒素の産生を高める作用があるため、間接的に免疫力を向上させると考えられています。
美肌効果
黒にんにくの摂取で、美肌効果が期待できます。
黒にんにくには、抗酸化作用の強いS-アリルシステインとポリフェノールが含まれており、シミやシワなどの肌老化を防ぎます。
また、保湿効果の高いアルギニンも含まれます。
皮膚の表面にある角質の細胞には、天然保湿因子(NMF)と総称される一連の物質が含まれ、水分を抱え込んで肌を保湿します。
NMFの約半分はアミノ酸で構成され、アルギニンはそのうちの一種です。
黒にんにくには、肌の老化を防ぎ、うるおいを保つ成分が豊富に含まれているため、美肌づくりに効果的です。
黒にんにくの効能をいかす食べ方
黒にんにくには、疲労回復やアンチエイジングなど、多くの効能が期待されます。
この章では、黒にんにくの効能をいかす食べ方を紹介します。
1日1~2片を毎日食べる
黒にんにくは、1日に1〜2片を毎日食べるのが効果的です。
その理由は、胃腸に少し刺激のある食べ物であることと、成分の持続時間が比較的短いことによります。
にんにくには、胃腸への刺激が強いアリシンが含まれています。
黒にんにくに加工すると、大部分のアリシンが、刺激の少ないS-アリルシステインに変わるため、胃腸への影響はあまり大きくありません。
しかし体質や体調によっては、黒にんにくの食べすぎで胸やけや胃もたれを起こすこともあるのです。
また、黒にんにくの主な成分は、比較的短い時間で排出されるか代謝されてしまいます。
S-アリルシステインは、多く摂取しても過剰分は排出され、摂取後2日ほどで血液中からなくなるとされています。
ポリフェノールも、効果の持続時間が約4時間といわれています。
黒にんにくの効能をいかすには、一度にたくさん食べず、毎日少しずつ食べることが大切です。
加熱せずそのまま食べる
黒にんにくは、加熱せずにそのまま食べるのがおすすめです。
じっくりと熟成させて作られる黒にんにくは、生のにんにくに比べ、機能性成分が増加しています。
そうした成分の中には、高温調理によって失われるものもあるため、できるだけそのまま食べましょう。
黒にんにくは、以下のようにアレンジしてもおいしく食べられます。
- サラダにトッピングする
- オリーブオイル、醤油、酢と混ぜてドレッシングにする
- クリームチーズなどと合わせてカナッペにする
- バタートーストにのせる
とくに醤油や乳製品との相性がよく、さまざまなアレンジが楽しめます。
まとめ
生のにんにくを熟成させた黒にんにくには、多くの機能性成分が含まれます。
疲労回復や睡眠の質向上、免疫力アップなど、さまざまな効能があり、毎日を元気に過ごしたい人に適した食品といえます。
黒にんにくの効能をいかすには、少しずつ継続して摂取し、加熱せずに食べるのがおすすめです。
パンに塗ったり、料理に使ったりとさまざまなアレンジもできるので、ぜひ毎日の生活に取り入れてみてください。