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菊芋は、一般的なスーパーではあまり販売されていないため、多くの人にとってなじみが薄い食材でしょう。
しかし近年、菊芋が持つさまざまな効能に注目が集まっています。
この記事では、菊芋の効能について詳しく解説するとともに、食べる際の注意点やおすすめレシピを紹介します。
菊芋の効能
菊芋は、キク科ヒマワリ属に分類される北アメリカ原産の植物です。
塊茎と呼ばれる、膨らんだ根の部分が食用にされています。
栄養成分に関しては、水溶性食物繊維のイヌリンを含むことと、カリウムが豊富なことが特徴です。
菊芋100g当たりのカロリーや主な栄養素の含有量は、下表のとおりです。
栄養素など | 菊芋100g当たり の含有量 |
---|---|
カロリー(kcal) | 66 |
たんぱく質(g) | 1.9 |
脂質(g) | 0.4 |
糖質(g) | 12.8 |
食物繊維(g) | 1.9 |
カリウム(mg) | 610 |
銅(mg) | 0.17 |
ビタミンB6(mg) | 0.09 |
葉酸(μg) | 20 |
続いて、菊芋の効能を詳しく解説します。
食後血糖値の上昇抑制
菊芋は、食後血糖値の上昇抑制に効果が期待できる食材です。
糖質の摂り過ぎなどにより食後血糖値が急上昇すると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが大量に分泌されます。
インスリンの必要量が増加すれば、インスリンを産生・分泌する膵臓に負担がかかります。
血糖値の急上昇が繰り返されると、やがて膵臓は疲弊してインスリンを正常に分泌できなくなり、糖尿病を発症するでしょう。
菊芋に含まれる水溶性食物繊維には、糖質の吸収速度を遅らせる作用があります。
菊芋を食べると糖質がゆっくりと吸収されて、食後血糖値の上昇が緩やかになるのです。
インスリンを分泌する膵臓への負担が軽減されるため、糖尿病の予防につながるでしょう。
腸内環境の改善
菊芋に含まれるイヌリンは、腸内環境の改善に役立ちます。
イヌリンは水溶性食物繊維の一種であり、腸内に生息する善玉菌のエサになります。
イヌリンをエサにして善玉菌が増殖すると、腸内細菌のバランスが整い、腸内環境が改善されるでしょう。
さらに、水溶性食物繊維には水分を吸収して便をやわらかくし、便通を促す作用もあります。
腸内環境の改善効果と相まって、便秘の解消も期待できます。
免疫力の強化
菊芋の摂取により腸内環境が改善されると、免疫力も高まるでしょう。
免疫とは、異物から体を守る仕組みであり、感染症の予防や老廃物の除去などに役立っています。
免疫を担う免疫細胞の多くは、腸に存在しています。
腸は、食べ物とともに口から入り込んだ細菌やウイルスが通過する場所です。
そのため、腸に免疫細胞を集中させることで体を異物から守っています。
腸に存在する免疫細胞と腸内細菌は相互に関係し、腸内環境が整っていると免疫細胞が活性化されることがわかっています。
免疫力を高めるには、腸内環境を整えて免疫細胞を活発にする菊芋を食べるとよいでしょう。
基礎代謝の向上
菊芋の摂取は、基礎代謝の向上につながると考えられています。
基礎代謝とは、呼吸や拍動、体温調整などの生命維持に必要な最低限のエネルギーのことです。
菊芋に含まれるイヌリンは、腸内で善玉菌の一種であるビフィズス菌のエサになります。
増殖したビフィズス菌は、短鎖脂肪酸を作り出します。短鎖脂肪酸とは、酪酸、酢酸、プロピオン酸などの物質の総称です。
なかでも酪酸には、交感神経に働きかけて、心拍数や体温を上昇させて基礎代謝を高める作用があります。
基礎代謝が高まると消費エネルギー量が増えるため、ダイエット効果が期待できるでしょう。
脂肪蓄積の抑制
体脂肪の蓄積を抑えることも、短鎖脂肪酸の働きのひとつです。
短鎖脂肪酸のなかでも、酢酸には脂肪細胞にエネルギーが取り込まれるのを抑える作用があります。
菊芋の摂取によりビフィズス菌が増殖すると、短鎖脂肪酸が増えます。
すると、短鎖脂肪酸の作用により体脂肪の蓄積が抑制されて、肥満の予防につながるでしょう。
コレステロール値の低下
血中コレステロール値の改善には、菊芋の摂取がおすすめです。
菊芋に含まれる水溶性食物繊維には、胆汁酸を排出する作用があります。
胆汁酸とは、脂質の吸収を促す成分であり、コレステロールから作られることが特徴です。
水溶性食物繊維の作用により胆汁酸が排出されると、体内の胆汁酸が不足します。
すると、血液中のコレステロールをもとに胆汁酸が生成されるため、血中コレステロール値が低下するでしょう。
さらに、短鎖脂肪酸には、肝臓でのコレステロール合成に関わる酵素の働きを阻害する作用があります。
コレステロール値を下げたい人は、積極的に菊芋を摂取するとよいでしょう。
高血圧の改善
高血圧には、菊芋に含まれるカリウムが有効です。
高血圧は、塩分の過剰摂取により体内に水分がたまり、増加した血液が血管を圧迫することで生じます。
カリウムはミネラルの一種であり、体内の余分な塩分を排出する作用があります。
カリウムが豊富な菊芋を食べると、不要な塩分が排出されて高血圧が改善されるでしょう。
むくみの解消
体のむくみも、菊芋に含まれるカリウムにより解消されます。
体にむくみが生じるのは、塩分の摂り過ぎにより体の細胞間に水分がたまるためです。
菊芋を食べてカリウムを摂取すると、余分な塩分が排出されて体のむくみが解消されるでしょう。
菊芋を食べる際の注意点
多くの効能をもつ菊芋ですが、まれに体に悪影響を及ぼす場合があります。
菊芋を食べる際の注意点についても知っておきましょう。
キク科アレルギーの人は摂取を控える
キク科の植物に対してアレルギーがある人は、菊芋の摂取を控えましょう。
キク科の植物には春菊やレタス、ごぼう、ふき、ヤーコンなどがあります。
さらに、ヨモギやブタクサが原因で花粉症の症状が現れる人も注意が必要です。
ヨモギとブタクサもキク科の植物であるため、菊芋を食べてアレルギー症状が現れるおそれがあります。
したがって、アレルギーや花粉症の人は菊芋の摂取を控えてください。
食べ過ぎるとお腹が緩くなる
菊芋を大量に食べると、下痢や腹痛が起こるおそれがあります。
菊芋に含まれる水溶性食物繊維には、水分を含んで便をやわらかくする作用があります。
菊芋を食べ過ぎると、腸内の水分が過剰になって下痢を起こしやすくなるため、摂取は適量にとどめましょう。
菊芋の効果的な食べ方
菊芋を朝に摂取すると食後血糖値の上昇を効果的に抑えられることが、実験により明らかになっています。
実験では菊芋パウダーを用いて、摂取タイミングによる血糖値の変動を比較しました。
実験の結果、朝食前に菊芋パウダーを摂取したグループは、夕食前に摂取したグループよりも食後血糖値の上昇が抑えられていました。
さらに、朝食前に摂取したグループでは、その後1日の血糖値の変動も抑えられていたのです。
したがって、朝に菊芋を食べると、その日の夕食まで食後血糖値の上昇を抑制する効果が続くでしょう。
参考:金鉉基, 柴田重信, 「時間生物学を利用した機能性食品開発~イヌリンのヒト試験を中心に~」, 生物工学会誌(2019)
菊芋のおすすめレシピ
菊芋はポピュラーな食材ではないため、いざ食べようと思っても、調理方法に困るのではないでしょうか。
そこで、菊芋をおいしく食べられるおすすめのレシピを2つ紹介します。
菊芋のポタージュ
- 菊芋はよく洗い、皮ごと適当な大きさにカットする。玉ねぎはスライスする。
- 鍋にオリーブオイルを引いて加熱し、中火で1. を炒める。
- 2. がしんなりしたら、水とコンソメを加えて煮込む。
- 3. がやわらかくなったら、火を止めて豆乳を加える。ミキサーやブレンダーで、なめらかになるまで撹拌する。
- 再び火にかけて、塩とこしょうで味を整える。
高血圧やむくみに効果的なカリウムは、水溶性の栄養素です。
そのため、ゆでたり煮込んだりして調理すると水に溶け出て失われてしまいます。
しかし、汁ごと摂取するスープやポタージュであれば、菊芋のカリウムを無駄なく摂取できます。
温かいスープを飲むと体温が上昇し、菊芋の効能と相まって基礎代謝が高まる効果も期待できるでしょう。
菊芋の胡麻マヨサラダ
- 菊芋は皮をむいて千切りにし、5分ほど水にさらす。にんじんは千切りにして1〜2分ゆでる。水菜は食べやすい長さに切る。
- ボウルにマヨネーズ、すり胡麻、めんつゆを入れてよく混ぜ合わせる。
- ボウルに1. を加えてよく和える。
菊芋を生で食べて、シャキシャキとした歯触りのよい食感を楽しむレシピです。
菊芋とほかの野菜を一緒に食べると食物繊維の摂取量が増えるため、腸内環境の改善効果を後押しできるでしょう。
まとめ
菊芋は、水溶性食物繊維であるイヌリンや、ミネラルの一種であるカリウムを豊富に含む食材です。
菊芋を食べると、食後血糖値の上昇抑制や高血圧の改善など、数多くの効能を得られるでしょう。
お店で菊芋を見かけたらぜひ手に取って、食事に取り入れてみてください。