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バターとマーガリンは、似ているようで違う食品です。
「バターは値段が高い」「マーガリンは健康によくなさそう」など、人によって選ぶ理由も異なるでしょう。
この記事では、バターとマーガリンの違いを、原材料や栄養素などの面から詳しく解説します。
バターとマーガリンのどちらが健康によいのか、コレステロールとの関係やトランス脂肪酸についても解説しているので、今までなんとなく選んでいた人も、違いをよく知ったうえで選択ができます。
ぜひ参考にしてみてください。
バターとマーガリンの違いまとめ(製法・性質・風味・価格)
バターとマーガリンは、性質や風味などに違いがあり、使い勝手もいくぶん異なる食品です。
また、価格の相場も3倍近くの差があります。
下表に、バターとマーガリンの製法・性質・風味・価格の違いをまとめます。
食品 | バター | マーガリン |
---|---|---|
製法 | 生乳や牛乳から乳脂肪を取り出し、 練り上げ、圧縮させて作られる。 | 食用油脂に水などを加えて乳化させ、 乳化後、急冷させながら練り合わせて 固めて作られる。 |
性質 | 常温で溶けにくく、硬めの質感。 固体に近い性質。 | 常温で溶けやすく、柔らかい半固体。 パンなどに塗り広げやすい。 |
風味 | 芳醇な香りと濃厚な味わい。 料理や菓子作りなどにも広く 利用される。 | バターに比べてあっさりとした風味。 料理や菓子作りに使用すると、 バターよりも軽い味になる。 |
価格 | 令和6年の食品価格動向調査では、 100gあたり267円(税込み)。 | バターよりも安価。 令和6年の食品価格動向調査では、 100gあたり約93円(税込み)。 |
※価格は「食品価格動向調査(加工食品)」(令和6年11月)のデータを参照
バターとマーガリンは原材料が違う
バターとマーガリンのとくに大きな違いは、原材料です。
バターは生乳や牛乳、マーガリンは植物性油脂などを主原料とし、原材料の違いによって、栄養素・製法・味・価格などに違いが出ます。
この章では、バターとマーガリンの原材料や成分規格の違いを解説します。
マーガリンはバターの代用品として生まれた
マーガリンは、19世紀のフランスで、バターの代用品として生まれました。
19世紀中期のフランスはナポレオン3世の統治下にあり、戦争の影響でバターが不足していました。
1869年、ナポレオン3世がバターの代用品を募集すると、牛脂と牛乳を混ぜて乳化させ、冷やして固めたものが考案されました。これがマーガリンの原型です。
この代用品が日本に初めて入ってきたのは、明治時代中期の1890年でした。
当時の日本では「人造バター」と呼ばれていましたが、徐々に国内での需要が増え、1950年頃から「マーガリン」の呼び方が一般的になりました。
バターは牛乳、マーガリンは植物性油脂が主原料
バターは生乳や牛乳、マーガリンは植物性油脂などが主原料です。
生乳とは搾乳されたままの牛の乳で、牛乳は生乳を加熱殺菌したものです。
バターは生乳や牛乳の乳脂肪から作られ、有塩バターの場合は塩が加えられます。
マーガリンは、植物油や動物性油脂などの食用油脂に、乳化剤、着色料、香料、ビタミン類などの添加物を加えて作られます。
マーガリンの原料となる食用油脂は、大豆油、なたね油、コーン油、パーム油などの植物油が60%以上を占めており、ほかに魚油、豚脂、牛脂などの動物性油脂も使われます。
またマーガリンには、バターなどの乳製品を加え、バターの風味に近づけた製品も販売されています。
バターとマーガリンの成分規格の違い
バターとマーガリンは、乳脂肪分など、含まれる成分が違います。
バターは「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令」、マーガリンは「日本農林規格(JAS)」により、成分規格が定められています。
下表に、バターとマーガリンの主な原材料と成分規格をまとめます。
主な原材料と 成分規格 | バター | マーガリン | ファット スプレッド |
---|---|---|---|
主な原材料 | 生乳、牛乳、 特別牛乳、生水牛乳 | 植物性油脂、動物性油脂 などの食用油脂 | |
油脂含有率 | – | 80%以上 | 80%未満 |
乳脂肪含有率 | 80%以上 | 40%未満 | 40%未満、かつ 油脂中50%未満 |
水分含有率 | 17%以下 | 17%以下 | 油脂含有率と 合計で85%以上 (例外あり) |
なお、マーガリン類のうち、油脂含有率が80%未満のものは「ファットスプレッド」と呼ばれます。
一般家庭でマーガリンと呼ばれている製品の多くは、分類上はマーガリンではなくファットスプレッドに該当します。
バターとマーガリンに含まれる栄養素の違い
バターとマーガリンは原材料が違うため、含まれる栄養素も異なります。
下表に、バターとマーガリンそれぞれに含まれる栄養素をまとめます。
食品の可食部100g当たりに 含まれる栄養素 | バター (無発酵・有塩) | マーガリン (家庭用・有塩) |
---|---|---|
エネルギー(kcal) | 700 | 715 |
水分(g) | 16.2 | 14.7 |
たんぱく質(g) | 0.6 | 0.4 |
コレステロール(mg) | 210 | 5 |
脂質(g) | 81.0 | 83.1 |
炭水化物(g) | 0.2 | 0.5 |
カリウム(mg) | 28 | 27 |
カルシウム(mg) | 15 | 14 |
レチノール(μg) | 500 | 0 |
β-カロテン(μg) | 190 | 290 |
ビタミンD(μg) | 0.6 | 11.0 |
ビタミンE(mg) | 1.5 | 15.0 |
食塩相当量(g) | 1.9 | 1.3 |
バターとマーガリンは、エネルギーや脂質、ミネラルなどにさほど違いはありません。
大きく違うのは、コレステロール、レチノール(ビタミンA)、ビタミンD、ビタミンEなどです。
マーガリンのビタミンD含有量が多いのは、ビタミン類の添加など、栄養価を強化している場合があるためです。
また、ビタミンEは植物性油脂に豊富に含まれているため、マーガリンにおける含有量も多くなります。
次に、バターとマーガリンにおけるコレステロールとビタミンAの含有量の違いを説明します。
マーガリンはコレステロール含有量が少ない
マーガリンのコレステロール含有量が少ないのは、植物性油脂が主原料のためです。
コレステロールは細胞膜やホルモンの材料になる物質で、主に動物の細胞に含まれ、植物にはほぼ含まれません。
したがって、コレステロールの含有量は、動物性油脂の乳脂肪が原料であるバターでは多く、植物性油脂が主原料のマーガリンでは少なくなります。
バターにはビタミンAが豊富に含まれる
バターには、目や肌の健康を維持し、抗酸化作用のあるビタミンAが多く含まれます。
レチノールはビタミンAの主要な成分で、動物性の食品に含まれます。
脂溶性であるレチノールは、脂肪の多い部分に存在し、牛乳では乳脂肪に多く溶け込んでいます。そのため乳脂肪が原料のバターには、レチノールが豊富に含まれるのです。
また、植物の色素成分であるβ-カロテンは、バターにもマーガリンにも含まれます。
β-カロテンは、体内で必要な分だけビタミンAに変換される「プロビタミンA」の代表格です。
バターの黄色は、牛が食べる牧草に含まれているβ-カロテンの色です。
マーガリンはβ-カロテンを着色料として添加することがあるため、含有量が多くなります。
バターとマーガリン、どちらが健康によい?
バターとマーガリンのどちらが健康によいのかは、一概にはいえません。
これまで、「マーガリンはトランス脂肪酸が多いから、健康によくない」ともいわれてきました。しかし、近年は状況が変わってきています。
この章では、バターやマーガリンと、健康との関係を解説します。
バターは飽和脂肪酸が多く、コレステロールを上げやすい
バターには飽和脂肪酸が多く、食べすぎはコレステロールを上げやすくします。
飽和脂肪酸とは、常温で固体になりやすい脂に多く含まれる脂肪酸(油脂の構成成分)です。
肉の脂身やバターなどの動物性脂肪のほか、ココナッツオイルやパーム油など、常温で固体になりやすい植物油にも多く含まれています。
飽和脂肪酸を摂りすぎると、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールが増加し、循環器疾患の危険性が高まります。
バターとマーガリン100g当たりに含まれる飽和脂肪酸量は、バターが50.45g、マーガリンが23.04gです。
バターなどの飽和脂肪酸を多く含む食品は、LDLコレステロール値を上げやすいため、食べすぎには注意が必要です。
また、バターよりも少ないとはいえ、マーガリンにも飽和脂肪酸は含まれます。
最近はバターを加えたマーガリンなどもあるため、いずれにしても食べすぎないようにしましょう。
マーガリンのトランス脂肪酸について
トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種で、牛肉や牛乳など、一部の天然の食品にも含まれている脂肪酸です。
一方、油脂の加工や精製時に生じることがあり、それが問題視されることもあります。
その代表例として、常温で液体の油脂を、半固体・固体の油脂へ加工する技術である「水素添加」の過程で、トランス脂肪酸が生じることがあるのです。
水素添加した油脂を使用したマーガリンにも、トランス脂肪酸が含まれることがあり、これが「健康によくない」といわれてきた理由です。
トランス脂肪酸は心疾患のリスクを上げるといわれており、脂質の摂取量が多い欧米などでは、規制をしている国もあります。
日本でも、水素添加以外の加工方法を採用するといった企業努力により、トランス脂肪酸を減らしたマーガリン製品が作られています。
農林水産省の調査によると、食品に含まれるトランス脂肪酸の量は減少傾向にあり、日本人の平均的なトランス脂肪酸の摂取量は、世界保健機関(WHO)が推奨する基準を下回っていると報告されています。
マーガリンのトランス脂肪酸を減らす取り組みについては、各メーカーのホームページに記載されているので、気になる場合は確認してみるとよいでしょう。
まとめ
バターとマーガリンの大きな違いは、原材料です。
バターは牛乳から取り出した乳脂肪から作られ、マーガリンは植物性油脂を主原料に、乳化剤や着色料、香料などを添加して作られます。
原材料が違うため、含まれる成分や栄養素も違います。
バターは、コレステロールやビタミンAを多く含むのが特徴です。
マーガリンには、ビタミンDやβ-カロテンなどが添加されていることがあり、ビタミンEも豊富に含みます。
健康面では、バターには飽和脂肪酸が多く含まれるため、LDLコレステロールが増加しやすく、食べすぎには注意が必要です。
また、マーガリンで懸念されるトランス脂肪酸は、企業努力により減少傾向にあります。
その他にも、バターとマーガリンは、価格や風味などに違いがあります。
それぞれの特徴を知り、自分に合うものを選ぶとよいでしょう。