目次
「日本茶」とも呼ばれ親しまれている緑茶は、健康への効果が詳細に調査されてきた食品のひとつです。
この記事では、茶に特有の茶カテキンに注目しつつ、緑茶の効果を詳しく解説します。
緑茶の効果は、淹れる温度によって変わります。効果の目的別におすすめの飲み方も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
緑茶に含まれる主な成分と栄養素
緑茶には主に以下のような成分や栄養素が含まれており、さまざまな健康効果が期待できます。
- カテキン
茶葉に含まれる渋み成分。抗酸化作用や抗菌・殺菌作用などがある。 - テアニン
茶葉に含まれるアミノ酸の一種で、お茶のうま味成分のひとつ。リラックス効果がある。 - カフェイン
コーヒーや茶に含まれる、天然の苦味成分。覚醒作用や脂肪燃焼効果がある。 - フッ素(フッ化物)
原子番号9の元素。自然界ではフッ化物として存在する。歯を強くし、虫歯を予防する。 - GABA(γ-アミノ酪酸)
たんぱく質を構成しないアミノ酸の一種。ストレスをやわらげ、睡眠の質を高める。 - カリウム
生命維持に必要な必須ミネラルのひとつ。塩分の排出を促し、高血圧予防やむくみ防止に役立つ。 - ビタミンC
水に溶けやすい水溶性ビタミンで、抗酸化作用のほか、コラーゲンの生成を助ける働きもある。 - ビタミンB群
水溶性ビタミン。緑茶には、脂質の代謝を助けるビタミンB2や、貧血予防に役立つ葉酸などが含まれる。
なお、煎茶や玉露の製造工程で出る粉状の切れ端を集めた「粉茶」なら、食物繊維やビタミンEなどの水に溶け出しにくい成分も摂取できます。
緑茶に含まれる茶カテキンの主な種類
カテキンは、多くの植物に含まれるポリフェノールの一種です。
茶に特有なカテキンを「茶カテキン」と呼び、緑茶に含まれる代表的な茶カテキンは以下の4種類です。
- エピガロカテキンガレート(EGCG)
紅茶やウーロン茶にも含まれるが、緑茶にはとくに多く含まれる。
緑茶に含まれる茶カテキン全体の50%以上をEGCGが占める。
熱湯で淹れた緑茶から多く抽出される。 - エピガロカテキン(EGC)
緑茶には、EGCGに次いで多く含まれる。
冷水で淹れた「水出し緑茶」から多く抽出される。 - エピカテキンガレート(ECG)
- エピカテキン(EC)
エピカテキンのみ、リンゴやブドウなど他の植物中にも存在する。
緑茶に含まれる茶カテキンのうち、とくにEGCGは、さまざまな健康効果をもたらします。
緑茶に期待される効果
古来より緑茶は健康によいといわれており、その効果について多くの研究がなされています。
この章では、緑茶に期待される主な効果を紹介します。
風邪やインフルエンザなどの感染症予防
緑茶には、風邪やインフルエンザなどの感染症を予防する効果があります。
緑茶に含まれるエピガロカテキン(EGC)には、免疫力を高める作用があります。
EGCは、体内に侵入した病原菌を排除する「マクロファージ」という免疫細胞の働きを活性化させます。
その結果、呼吸器や消化器の粘膜で異物の侵入を防ぐ「粘膜免疫系」が活性化され、免疫力が高まると考えられています。
またエピガロカテキンガレート(EGCG)には、ウイルスを無力化して感染から防ぐ「抗ウイルス作用」があります。
細胞レベルの研究では、インフルエンザウイルスにEGCGを混合して培養したところ、ウイルスの感染が阻止されたという結果が得られています。
ただし、EGCGの作用は予防効果であり、感染後では抗ウイルス作用は弱くなるほか、EGCの効果を抑制するという側面もあります。
このように、EGCとEGCGは、それぞれ異なるアプローチで感染症を予防するのです。
生活習慣病の予防
緑茶には、血糖値・血圧・血中コレステロール値の上昇を抑制し、生活習慣病を予防する効果があります。
これらの効果には主に茶カテキンが関与しており、急須で淹れた緑茶1杯(150mL)には、およそ120mgの茶カテキンが含まれます。
以下に、緑茶の生活習慣病予防効果を詳しく解説します。
血糖値の上昇抑制
食事から摂取した糖質は、主に酵素によって消化され、吸収されます。
茶カテキンには糖分解酵素の働きを阻害する作用があり、糖の吸収が穏やかになるため、血糖値の上昇が抑制されます。
ヒトを対象にした実験では、糖質摂取の30分前に500mgの茶カテキンを摂取すると、血糖値の上昇が抑制されたという結果が得られています。
血圧の上昇抑制
茶カテキンには、血圧上昇に関わるアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害し、血圧の上昇を抑える効果があります。
ヒトを対象にした実験では、500mgの茶カテキンを毎日、3か月間摂取すると、最高血圧・最低血圧ともに低下傾向を示すことが確認されています。
この実験では、とくに高血圧の人の血圧が顕著に低下しており、茶カテキンの長期摂取による高血圧予防の可能性が示唆されています。
血中コレステロールの上昇抑制
コレステロールは脂質の一種で、大部分が脂肪や糖などを原料にして肝臓で合成されます。
食事から摂取した脂肪は、肝臓から分泌される胆汁により乳化され、リパーゼという酵素により分解され、吸収されます。
茶ポリフェノールは、コレステロールの原料となる脂肪の乳化を阻害し、吸収を抑制すると考えられています。
健常者33人を対象にした実験では、500mgの茶カテキンを毎日、3か月間摂取すると、総コレステロール値は変化せず、HDLコレステロール値が上昇したという結果が得られています。
HDLコレステロールは善玉コレステロールとも呼ばれ、血中の余分なコレステロールを取り除く働きがあります。
ダイエット効果
緑茶には、脂肪の吸収を抑える・脂肪の燃焼を促進するといった働きがあり、ダイエットに効果的です。
食事から摂取した脂肪は、リパーゼという消化酵素により分解され、吸収されます。
EGCGやECGなどの「ガレート型カテキン」には、リパーゼの働きを阻害し、脂肪の吸収を抑える作用があります。
さらに茶カテキンには、脂肪の代謝に関係する酵素を活性化させる作用もあります。
緑茶に含まれるカフェインにも脂肪燃焼効果があり、両者の相乗効果により体脂肪の減少に役立つと考えられています。
BMI24~30kg/m2(肥満1度)の成人男女を対象にした実験では、1日あたり588mgの茶カテキンを12週間摂取すると、体重・腹囲・内臓脂肪量が減少することが明らかになっています。
緑茶のダイエット効果は、継続的な茶カテキンの摂取によって穏やかにあらわれます。
カフェインの過剰摂取による健康への悪影響も懸念されるため、過度な期待をせず、飲みすぎないようにしましょう。
自律神経を整える効果
緑茶に含まれるカフェインとテアニンは、自律神経を整えるのに効果的です。
自律神経には、興奮系の「交感神経」と、リラックス系の「副交感神経」があり、どちらが優位になるかによって心身の状態が変わります。
カフェインには交感神経を優位にする働きがあり、頭が冴え、眠気を軽減させるため、活動時に適します。
一方、テアニンは、副交感神経に作用してリラックス効果を高めるため、ゆっくりと過ごしたい休息時に適します。
また、カフェインとテアニンの相互作用は、集中力を高めたいときに効果的です。
緑茶を淹れる湯の温度は、高温ではカフェインが、低温ではテアニンが多く抽出され、両者は逆の作用をもたらします。
これらの効果を生活リズムに合わせてうまく利用すると、自律神経のバランスが整いやすくなります。
アンチエイジング効果
緑茶を継続的に摂取すると、アンチエイジング効果が期待できます。
緑茶に含まれる茶カテキンには、油脂の酸化を防ぐ作用があり、茶カテキンのなかでもとくにEGCGが高い効果を発揮します。
茶カテキンの抗酸化作用は、食品の酸化防止剤として広く利用されているほか、生体内においても効果的です。
活性酸素の影響により細胞膜や血中の脂質が酸化されると、肌のシミやシワ、動脈硬化、生活習慣病など、生体の老化を引き起こします。
茶カテキンは体内の脂質の酸化を防ぐ効果が高く、継続的な緑茶の飲用が血液の酸化開始時間を遅らせるという研究結果もあります。
以上のことから、継続的な緑茶の飲用は、体内の脂質の酸化を抑え、老化を防ぐアンチエイジング効果があると考えられます。
口臭や虫歯の予防
緑茶は、口臭や虫歯の予防にも効果的です。
虫歯は、歯垢内部に存在する細菌が、糖をエサにして酸を生成し、酸が歯を溶かすと発生します。
緑茶に含まれる茶カテキンは、主に以下の働きで虫歯を予防します。
- 歯垢を形成する酵素の働きを抑え、歯垢を作りにくくする。
- 虫歯の原因となる細菌の増殖を抑える。
- 細菌による酸の生成を抑える。
さらに緑茶には、歯の脱灰を抑制し、再石灰化を促進するフッ素(フッ化物)が含まれています。
最近の研究では、茶カテキンにフッ化物を併用すると、酸の生成を抑える効果が高まることが明らかにされています。
虫歯や歯周病は口臭の主な原因でもあり、口臭を予防するには口腔内のケアが大切です。
また、茶カテキンには、口臭の原因となる物質と結合して臭いを抑える効果もあります。
このように、緑茶に含まれる成分は、重層的な働きによって虫歯や口臭を予防します。
緑茶の効果的な飲み方
緑茶は、淹れる温度で抽出される成分が異なり、それぞれの成分によって効果も異なります。
この章では、効果の目的別に、緑茶のおすすめの飲み方を紹介します。
感染症を予防するには
感染症を予防するには、エピガロカテキン(EGC)で免疫力を高めるか、エピガロカテキンガレート(EGCG)でウイルス感染を防ぐかの、2つのアプローチがあります。
注意したいのは、EGCGがEGCの作用を弱めるという点です。
EGCは、低温の水によく溶出します。冷水で淹れた水出し緑茶には、EGCが多く抽出され、EGCGの含有率が下がります。
それに対し、80℃以上の高温で淹れた緑茶にはEGCGが多く抽出されます。
感染症予防のためには、普段は水出し緑茶で免疫力を上げておき、インフルエンザを予防したい外出時などに、熱い緑茶を飲むのがおすすめです。
ダイエットや生活習慣病予防には
ダイエットや生活習慣病予防には、熱い緑茶が効果的です。
高温で抽出されるEGCGには、脂肪の吸収を抑える・脂肪の燃焼を促進させる・血糖値やコレステロールの上昇を抑えるなどの働きがあります。
また、脂肪燃焼効果が期待できるカフェインも、高温の湯に多く溶け出します。
緑茶を飲むタイミングは、1日3回の食事中に、1〜2杯ずつ飲用するのがおすすめです。
前述のように、ダイエットや生活習慣病予防には、茶カテキンを1日に500mg〜588mg、継続的に摂取することが必要です。
急須で淹れた緑茶1杯(150mL)には、約120mgの茶カテキンが含まれます。効果を得るためには、1日4〜5杯を目安に摂取するとよいでしょう。
リラックスしたいときには
リラックスしたいときには、水出し緑茶がおすすめです。
低温で淹れた緑茶はテアニンが多く抽出され、カフェインの含有量が減ります。
テアニンは、副交感神経を優位にさせ、リラックス効果のあるα波を発生させます。
光を遮って栽培された玉露や抹茶、かぶせ茶には、テアニンが多く含まれます。
よりリラックス効果を高めたい場合は、水出しの玉露などがおすすめです。低カフェインの緑茶でも、同様の効果が得られます。
茶葉と氷を一緒にポットに入れて作る「氷出し緑茶」は、カフェインの量がさらに抑えられます。
ストレスを感じたときや就寝前に、水出し緑茶や氷出し緑茶を飲んでみましょう。
心身が落ち着き、十分な休息が得られます。
まとめ
緑茶にはさまざまな健康効果があり、その多くは茶に特有の成分である茶カテキンによるものです。
水出し緑茶は免疫力を向上させ、熱い緑茶はインフルエンザなどのウイルス感染を予防します。
血糖値・血圧・血中コレステロールの上昇抑制効果により生活習慣病を予防するほか、脂肪の吸収を抑えるためダイエットにも効果的です。
茶カテキンの強い抗酸化作用は、アンチエイジングや虫歯・口臭予防にも役立ちます。
また、緑茶に含まれるカフェインやテアニンをうまく利用すると、自律神経が整いやすくなります。
多くの効果が期待される緑茶ですが、カフェインも含まれるため、飲みすぎには注意が必要です。1日あたり4〜5杯を目安に摂取することで、高い効果が得られます。