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日本の食文化に欠かせない味噌には、原料や色、味や産地によって多様な種類があります。
しかし、豊富な種類から好みの味噌を選んだり、用途に応じて使い分けたりするのが難しいと感じている人も多いでしょう。
この記事では味噌の栄養や種類の基本的な知識から、原料・色・味による違いや産地の分布まで詳しく紹介します。
ご家庭での味噌選びや使い分けの参考にしてみてください。
味噌の栄養や種類について

味噌は、大豆に麹と塩を加えて発酵・熟成させた、日本の伝統的な発酵調味料です。
まず、味噌の栄養や種類の分け方について見てみましょう。
味噌|栄養豊富な発酵調味料
味噌の主原料である大豆は、良質なたんぱく質のほか、炭水化物や脂質、アミノ酸やビタミンB群、ミネラルや食物繊維も豊富に含みます。
また、発酵の過程でアミノ酸やビタミン類、ミネラルなどが多量に生成され、栄養価が高まるのも味噌の大きな特徴です。
参考:米みそ の栄養成分表
ほかにも、味噌には女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンやコレステロールを下げる大豆サポニン、肝機能や脳機能の改善に役立つレシチンなどが含まれます。
味噌の種類一覧
味噌の種類は、「原料」「味わい」「色」「地域」の4つの観点から分類されます。
種類によって風味や使い道が異なるため、料理や好みに合わせて使い分けるとよいでしょう。
以下は、味噌の種類を簡潔な一覧表にまとめたものです。
原料による分類 | 味・色による分類 | 主な産地 | |
---|---|---|---|
米味噌 | 甘味噌 | 白 | 近畿各府県、岡山、 広島、山口、香川 |
赤 | 東京 | ||
甘口味噌 | 淡色 | 静岡、九州地方 | |
赤 | 徳島、その他 | ||
辛口味噌 | 淡色 | 関東甲信越、北陸、 その他全国各地 | |
赤 | 関東甲信越、北陸、 その他全国各地 | ||
麦味噌 | 甘口味噌 | 九州、四国、中国地方 | |
辛口味噌 | 九州(北部)、関東地方 | ||
豆味噌 | こげ茶 | 東海地方(愛知、三重、岐阜) |
参照:宮坂正昭著『みそ博士の元気いっぱい』
なお、「無添加味噌」とは熟成タンクから出したばかりの「蔵出し味噌」にアルコールを添加せず、そのまま容器に詰めたものを指し、この分類には含まれません。
次の章から、それぞれの種類と違い・特徴について詳しく見ていきましょう。
原料別|味噌の種類と違い・特徴

味噌の味わいや風味は、原料である麹の種類に大きく左右されます。
ここでは麹の原料別に、味噌の特徴を見てみましょう。
米味噌|大豆+米麹+塩
米味噌は、原料に米麹を使用した味噌で、癖のない味わいが特徴です。
国内で生産される味噌の約8割が米味噌で、全国各地でつくられています。
麦味噌|大豆+麦麹+塩
麦味噌は、原料に麦麹を使用した味噌で、あっさりした甘味と麦特有の香ばしさが特徴です。
産地は中国・四国・九州地方に分布しています。
豆味噌|大豆+豆麹+塩
豆味噌は、原料に豆麹を使用した味噌です。
大豆と塩のみでつくられるため、濃厚な豆の味わいや香りが感じられます。
産地は愛知県・三重県・岐阜県と東海地方に集中しており、八丁味噌が有名です。
調合味噌
調合味噌とは、2種類以上の味噌をブレンドしたり、種類の異なる麹を混ぜ合わせたりしてつくる味噌のことです。
味噌や麹の組み合わせによりそれぞれのよさが引き出され、癖のないまろやかな味わいに仕上がります。
合わせ味噌として市販されていますが、好みに応じて自分で調合するのもおすすめです。
味わい別|味噌の種類と違い・特徴

味噌の甘さや辛さといった味わいは、塩と麹の配合バランスによって変わります。
- 辛さ:塩の分量
- 甘さ:麹歩合(こうじぶあい:原料の大豆に対する麹の比率)
「辛口味噌」「甘口味噌」「甘味噌」の違いとそれぞれの特徴を見てみましょう。
辛口味噌
辛口味噌は、大豆の濃厚な旨味と強めの塩味、すっきりした味わいが特徴です。
塩分量は12%前後と高めに、麹は大豆の5~10割とやや少なめに配合されます。
発酵に酵母菌やバクテリアなど微生物の働きが必要なことから、醸造期間はやや長めです。
代表的な銘柄に信州味噌や仙台味噌があります。
甘口味噌
甘口味噌は、やさしくまろやかな甘味が特徴です。
塩分量は7~12%前後、麹歩合は12~17割が目安とされ、配合は地域の風土や製法によって異なるため、仕上がりの甘味にも幅があります。
甘味噌
甘味噌は、しっかりとした甘みが特徴的な短期熟成型の味噌です。
塩分量を5~7%前後に抑え、麹歩合を15~28割と高めにすることで、独特の香りとトロミのある甘さが生まれます。
色別|味噌の種類と違い・特徴

味噌の色の違いは、原料の配合や製造方法の違い、メイラード反応によるものです。
メイラード反応とは、発酵や熟成中に味噌に含まれるアミノ酸が糖と反応することで、醸造期間が長くなるほど反応が進んで濃い色に仕上がります。
仕上がりの色別に、味噌の種類と特徴を見てみましょう。
赤味噌
赤味噌は醸造期間が長く、多めに切り返しながら熟成させることで濃い赤褐色に仕上がります。
塩分濃度が高めで甘味が抑えられ、濃厚なコクと旨味、香りが特徴です。
産地は主に東日本に分布しており、塩分濃度の高さから保存性にも優れています。
白味噌
白味噌は塩分量が少なく醸造期間は短めで、まろやかな甘味と濃厚な味わいが特徴です。
白味噌の発祥地といわれる京都の西京味噌をはじめ、産地は西日本に分布しています。
淡色味噌
淡色味噌は、山吹色に近い赤味噌と白味噌の中間色の味噌です。
発酵・熟成期間も赤味噌と白味噌の中間程度で、味のバランスがよく、家庭用味噌として人気があります。
淡色味噌は主に中部地方や関西地方でつくられますが、流通量は日本一です。
地域別|味噌の種類と特徴

地域の気候、風土、水質、産物、嗜好などの違いにより、味噌の個性が生まれます。
代表的な銘柄や郷土色豊かな地域の味噌を見てみましょう。
米味噌の種類と特徴
北海道味噌(北海道)
冷涼な気候の北海道では、米麹を原料に、長期間熟成させた辛口の赤味噌がつくられます。
辛口に分類されるものの、マイルドな味とすっきりした芳香が特徴です。
鍋物や汁物、味噌ラーメンなど、体を芯から温める郷土の味には北海道味噌が欠かせません。
仙台味噌(宮城県)
宮城県の仙台味噌は、赤味噌の代表格といわれます。
仙台味噌は長期熟成型の辛口味噌で、豊かな風味が特徴です。
伊達政宗公が兵糧用に自給生産させた味噌が発祥で、伝統的な製法は現在も受け継がれています。
江戸甘味噌(東京)
江戸甘味噌は、江戸時代中期からつくられている赤褐色の甘味噌です。
コクがあり、鯖の味噌煮や豚の味噌漬けなどによく合います。
信州味噌(長野県)
信州味噌は、淡色・辛口の米味噌で、さっぱりした旨味が特徴です。
武田信玄が兵糧用につくらせたことから信濃国に味噌づくりが普及し、関東大震災で救援物資として送った味噌が好評だったことから全国に広まりました。
現在では国内シェアの50%以上を誇り、全国各地で親しまれています。
関西白味噌(関西地方)
関西地方でつくられる白味噌は、短期熟成型の甘味噌です。
魚や肉の味噌漬け、田楽、かす汁などの料理にコクと甘味を添えます。
関西では、お雑煮も白味噌でつくるのが一般的です。
御前味噌(徳島県)
徳島県の御前味噌は、米麹を多く使用して長期間熟成させた、赤褐色の甘味噌です。
濃厚なコクと甘み、さわやかな酵母の香りが特徴で、阿波地方の名産品として知られています。
蜂須賀公の御前に供されたことが名前の由来です。
麦味噌の種類と特徴
瀬戸内麦味噌(愛媛県・山口県・広島県)
瀬戸内麦味噌は、辛口に分類される淡色味噌ですが、麹が多めで甘味があります。
瀬戸内沿岸では古くから製塩やはだか麦の栽培が盛んだったことから、麦味噌がつくられてきました。
さつま汁、牡蠣の土手鍋など、魚介を使用する郷土料理にも使われます。
薩摩麦味噌(鹿児島県)
薩摩麦味噌は、甘口の淡色味噌で、粒が多く残っているのが特徴です。
さつま汁や豚味噌など、鹿児島の郷土料理によく合います。
九州麦味噌
九州地方の麦味噌は、麹が多く麦の風味が濃厚な淡色・甘口が主流ですが、北部では辛口もつくられます。
九州では二毛作による麦の栽培が盛んだったことや、米が貴重だったことから麦味噌がつくられてきました。
もつ鍋や冷や汁などの郷土料理に使うと、本格的な味が楽しめます。
豆味噌の種類と特徴
愛知県や三重県、岐阜県でつくられる豆味噌は、産地によって八丁味噌・三河味噌・三州味噌と呼ばれます。
長期熟成によって引き出される豆の強い旨味に加え、ほのかな渋みや苦みが感じられるのが特徴です。
味噌おでんや味噌カツ、味噌煮込みうどんなど、東海地方の郷土の味には豆味噌が欠かせません。
まとめ
味噌は原料や産地による食文化や製法の違いによって味や色の個性が生まれます。
主な分類方法である「原料」「色」「味わい」による違いを押さえておくと、好みや用途に合う味噌を選びやすくなるでしょう。
地域による味噌の違いを知り、郷土色豊かな味噌を食べ比べてみるのもおすすめです。
自分や家族にぴったりの味噌を選ぶ参考にしてみてください。