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自治体への寄附を通じて地域振興を深めるふるさと納税と、掛け金を運用して資産をつくる私的年金制度のiDeCo。
いずれも税制上の優遇を受けられるお得な仕組みで注目されています。
メリットを損なわずにふるさと納税とiDeCoを併用するためにはどんなことに注意すべきか、控除上限額のシミュレーション事例なども交えて紹介します。
ふるさと納税とiDeCo(イデコ)は併用することができる
ふるさと納税とiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は併用が可能ですが、それぞれの税制上のメリット内容や仕組みが異なります。
併用を検討する際には互いの違いを理解することがポイントになります。
ふるさと納税とiDeCoの趣旨や控除限度額などを把握した上で、お得に併用する方法を検討しましょう。
ふるさと納税で税金が控除される仕組み
ふるさと納税は地域活性化やスポーツ・文化振興などの分野で支援したいと思う自治体に対して納税できる制度で、寄附金は控除されます。
具体的には寄附金のうち自己負担分の2000円を除く金額が、住民税や所得税の控除・還付の対象になります。
控除額の分所得も減るため所得税の減額も見込むことができ、さらに寄附した自治体から返礼品を入手できるというメリットもあります。
iDeCoで税金が控除される仕組み
iDeCoは確定拠出年金法に基づいて自身で掛け金を拠出・運用する任意の年金制度です。
運用益が非課税、掛け金全額が所得控除対象―といった税制上のメリットを受けながら計画的に資産形成を図れる仕組みになっています。
掛け金と運用益は60歳以降になると給付を受けることができ、受給の際は公的年金等控除や退職所得控除の対象になります。
積み立てから受給時まで長期に渡って税制上の優遇措置を受けられる点からも、老後に向けた資産運用法として高い注目を集めています。
ふるさと納税とiDeCoを併用するメリット
iDeCoは掛け金全額が所得控除の対象になるなど税制優遇効果が大きいため、ふるさと納税をしている人がiDeCoを併用すると税制上のメリットをさらに感じることができます。
そしてふるさと納税も寄附金が控除される上、寄附先の自治体からの特産品などの返礼品を受け取るというメリットがあります。
iDeCoにはない返礼品という魅力を備える点からも、iDeCo利用者がふるさと納税を併用する場合もメリットの広がりを実感できます。
ふるさと納税とiDeCoを併用する方法
ふるさと納税とiDeCoは、それぞれの手続き方法に沿って併用することが可能です。
ふるさと納税は居住地以外で「寄附したい」と考える自治体や返礼品を選び、寄附を申し込んで手続きします。
寄附の受け付けは自治体に直接問い合わせるほか、ふるさと納税関連サイトを通じて申し込むこともできます。
寄附金控除を受けるには確定申告が必要ですが、給与取得者で寄附先が5自治体以内の場合は申告が不要になる「ワンストップ特例制度」も設けられています。
iDeCoは20歳以上60歳未満の人が加入可能で、取り扱いのある金融機関を通して始めることができます。
国民年金の被保険者の種別などにより掛け金の限度額が決まっているため、上限の範囲内で計画的に資産形成するのに適した掛け金や運用商品を選ぶ必要があります。
運用益は非課税のため確定申告は不要ですが、所得控除は年末調整や確定申告を通じて受けることになります。
ふるさと納税とiDeCoを併用する際の注意点
ふるさと納税をしている人がiDeCoも併用すると、ふるさと納税の控除上限額が下がる可能性があります。
前述した通りiDeCoは掛け金が所得控除の対象になっているため、全体の所得が減ってしまうことが原因です。
ふるさと納税とiDeCoを併用する場合、iDeCoによって下がった所得額をもとにふるさと納税の控除上限額を計算する必要があります。
ふるさと納税の寄附金の控除額は「所得税分の控除額+住民税基本分の控除額+住民税特例分の控除額」で算定されます。
3つの各控除額の計算式は、以下の通りです。
所得税分の控除額=(ふるさと納税額―2000円)×所得税の税率
住民税基本分の控除額=(ふるさと納税額―2000円)×10%
住民税特例分の控除額=(ふるさと納税額―2000円)×(100%―10%(基本分)―所得税の税率)
iDeCoを併用している場合実際の所得に掛け金分を引いた金額を所得として想定した上で、所得税の税率や寄附金額を当てはめ各控除額を計算していきます。
併用した場合の還付・控除限度額をシミュレーション
ふるさと納税とiDeCoを併用した場合の還付・控除限度額について、扶養家族の有無や年収も交えてシミュレーションしてみましょう。
ふるさと納税をしている「独身・夫婦共働き」と「片働き夫婦で15歳以下の子どもが1人」を例に、iDeCoをしているケースとしていないケースの還付・控除限度額を年収ごとに示していきます。
独身・夫婦共働きの場合
独身または夫婦共働き(扶養範囲外)でふるさと納税をしている年収300万円・400万円・600万円・800万円・1,000万円のケースの場合、いずれもiDeCoを併用すると7,000~8,000円ふるさと納税の寄附金の上限額が下がります。
具体的な上限額は以下の通りです。
年収 | iDeCo掛金月23,000円 | iDeCoなし |
300万円 | 21,000 | 28,000 |
400万円 | 35,000 | 42,000 |
600万円 | 70,000 | 77,000 |
800万円 | 121,000 | 129,000 |
1,000万円 | 164,000 | 172,000 |
ふるさと納税は上限額の範囲内であれば自己負担金を除く寄附金全額が控除・還付の対象となりますが、iDeCoの併用による上限の変動に注意が必要です。
上限はiDeCoの掛け金額や年収などの条件によっても左右します。
片働き夫婦・子供(15歳以下)一人の場合
15歳以下の子どもが一人いる片働き夫婦でふるさと納税をしている年収300万円・400万円・600万円・800万円・1,000万円のケースの場合、iDeCoを併用すると6,000~8,000円ふるさと納税の寄附金の上限額が下がります。
具体的な上限額は以下の通りです。
年収 | iDeCo掛金月23,000円 | iDeCoなし |
300万円 | 13,000 | 19,000 |
400万円 | 27,000 | 33,000 |
600万円 | 62,000 | 69,000 |
800万円 | 112,000 | 120,000 |
1,000万円 | 155,000 | 163,000 |
年収によってやや幅に違いがあるものの、こちらのケースでもiDeCoの併用によってふるさと納税の寄附金控除・還付の対象額に変動が見られるので注意しましょう。
同じくiDeCoの掛け金額によっても上限額は左右します。
まとめ
iDeCoは税制上の優遇度合が大きい仕組みとなっているため、ふるさと納税と併用してもお得に資産形成を図ることが可能です。
メリットを取りこぼさずに併用するためには、iDeCoによる所得控除後のふるさと納税寄附金限度額をしっかりと把握しておきましょう。
限度額の変動によって寄附金額の調整が必要になる場合もあるため、お目当ての自治体の寄附メニュー内容をよく吟味しておくこともカギです。