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近年の災害によって被害に見舞われ、寄附金を必要としている自治体が多くあります。
応援したい自治体に寄附ができる「ふるさと納税」ですが、災害支援としても活用できることをご存知でしょうか。
この記事では、ふるさと納税で災害支援をする方法から、メリット・デメリット、義援金との違いを解説していきます。
義援金とふるさと納税のメリット・デメリット
ふるさと納税による災害支援と義援金は、どちらも被災地や被災者に寄附されるものです。
一方で、ふるさと納税は「直接自治体に送られる」という点で義援金と大きく異なります。
つまり、より早く被災者の生活の改善に役立つといったメリットがあるのです。
ここでは、義援金とふるさと納税による災害支援について、以下の項目で解説します。
- 義援金のメリット・デメリット
- ふるさと納税のメリット・デメリット
- ふるさと納税が義援金よりも有意な点とは
以下で詳しく見ていきましょう。
義援金のメリット・デメリット
義援金のメリットは以下の通りです。
- 寄附金の100%が公平に配られ、確実に被災者のもとに届く
- 「特定寄附金」として、税制優遇の対象になる
義援金は税務上「特定寄附金」として税制優遇の対象となります。所得税の税額控除、または所得控除のいずれかの対象となります。
集められた義援金は、被害にあった被災者のもとへ確実に届けられます。
一方で義援金のデメリットは、被災者にお金が届くまでに時間がかかることです。
被害の調査や都道府県の「配分委員会」、市町村での受け取り手続きなど、定められたプロセスを踏むので、時間がかかってしまいます。
ふるさと納税のメリット・デメリット
ふるさと納税で災害支援を行うメリットは以下の通りです。
- 被災した自治体に直接お金が届けられるので、すぐに必要な活動に使用される
- 「特定寄附金」として、税制優遇の対象になる
災害直後には「被災者へ必要な物資を届ける」「医者や看護婦などを派遣して治療にあたる」など、その時々で必要な支援に寄附金がダイレクトに使われます。
また、ふるさと納税も義援金と同様に「特定寄附金」として所得控除が受けられます。控除額は、以下のように計算できます。
【その年に支出したふるさと納税の合計額】-2,000円(自己負担額)=寄附金控除額
仮に50,000円分寄附したとき、50,000円-2,000円=48,000円となり、48,000円は所得税などの税金から控除され、還付されます。
ふるさと納税で災害支援をすると、2,000円という少しの自己負担額で、たくさん寄附できるメリットがあります。
ふるさと納税の災害支援のデメリットは、寄附金に限度額があるということです。
所得金額の40%が特定寄附金に充てることができる合計限度額となるので、注意が必要です。
ふるさと納税が義援金と比べて有意な点
ふるさと納税と義援金による災害支援は、どちらも寄附する人が「特定寄附金」として税制優遇を受けられるといったメリットがあります。
一方で、ふるさと納税による災害支援は、義援金と比較すると以下のような有意な点があります。
- スピード感をもって被災地・被災者を支援できる
- 寄附したお金の使途が見えやすい
- 所得税、住民税の双方から控除が受けられる
1. スピード感をもって被災地・被災者を支援できる
東日本大震災で日本赤十字社に寄せられた2,500億円以上の義援金は、震災発生から3ヵ月経っても全体の15%ほどしか被災者の手元に届けられていなかったといいます。
被災者、自治体のためにお金を寄附しても、一番困っているときに使われないのは心苦しいものです。
2. 寄附したお金の使途が見えやすい
義援金は最終的に被災者のもとに届けられ、その家庭での生活を立て直すためにダイレクトに使えるので、頼りになるものです。
一方で、被災者が自身のために使い方を決められるのは「被災者が寄附金をどのように使うのかわからない」という問題点があります。
東日本大震災では「義援金を使ってパチンコに興じている被災者も」といった報道が物議をかもしました。
ふるさと納税は、被災した自治体へ送られる支援金なので、一刻も早く被災者へ必要なものを届けたり、けが人や病人を治療したりする費用にあてることができます。
3. 所得税、住民税の双方から控除が受けられる
ふるさと納税は、所得税の控除に加えて、個人住民税からも控除があります。
義援金の寄附金控除には、日本赤十字社や住所地の共同募金への寄附金を除き、個人住民税の控除は受けられません。
ふるさと納税で災害支援をする方法
ふるさと納税で災害支援をするには、以下の方法があります。
- ふるさと納税のポータルサイトを利用する
- はがきやメールで事前に申し込んで直接寄附する
- 代理受付で被災した自治体の負担を減らす
それぞれ詳しく見ていきます。
1. ふるさと納税のポータルサイトを利用する
支援をしたい自治体がポータルサイトを利用している場合、利用して寄附をするのが簡単です。
ふるさと納税ポータルサイトから災害支援の寄附を行う手順は以下のとおりです。
- ポータルサイト上で支援したい自治体を選択
- 住所・氏名・連絡先・寄附金額などの必要項目を入力
- 返礼品の枠があればチェック(災害支援では返礼品が無い場合が多い)
- 支払い方法を選択
- 寄附完了
ふるさと納税のポータルサイトはこちらからご覧ください。
被災直後は、寄附金を受け付ける余裕が自治体に無い場合もありえます。最近では、被災自治体の代理として寄附金を受け付けたり、事務的な手続きを代わりに行う自治体も増えてきました。
被災地では寄附を受領したことの証明書を発行したりなどの煩雑な作業から解放されるので、そのぶん復興作業にで専念できます。
寄附希望者はふるさと納税のポータルサイトを利用し、特設サイトにおいて「代理自治体と支援先自治体」の組み合わせを探せます。
2024年夏の豪雨により被災した山形県最上町・鶴岡町に代わり、宮城県美里町などが代理でふるさと納税による寄附を募集しています。
2. はがきやメールで事前に申し込んで直接寄附する
自治体がポータルサイトを利用していなければ、はがきやメールで事前に申し込み、直接寄附することも可能です。申し込み方法は以下のとおりです。
- FAX
- メール
- 窓口に出向く
- 電話
申し込みができると書類が届くので、必要項目を全て記入して寄附金を振り込みます。
義援金とふるさと納税の「寄附金控除」について
被災地だけでなく、寄附する側にもメリットがある義援金やふるさと納税。
ここでは、寄附した人が受けられる「寄附金控除」について、以下の項目で解説していきます。
- 義援金が「特定寄附金」に該当すれば寄附金控除の対象になる
- 日本赤十字社に義援金を寄附すると寄附金控除が受けられる
- 義援金の寄附金控除とふるさと納税の併用は可能
それぞれ詳しく見ていきましょう。
義援金が「特定寄附金」に該当すれば寄附金控除の対象になる
義援金が「特定寄附金」に該当すれば寄附金控除の対象になり、所得税を控除できます。寄附金控除には以下の2つの条件があります。
- 寄附金控除の対象となる団体へ寄附をすること
- 所得税の確定申告の手続きをすること
寄附金控除の対象となる団体とは、公益性の高い法人です。
- 国または地方団体
- 日本赤十字社
- 認定NPO法人
- 学校法人
コンビニに置いてあるような募金箱やネット募金などは、寄附金控除の対象ではないので要注意です。
また、寄附金控除を適用するためには、所得税の確定申告の手続きが必要となります。
提出する確定申告には、寄附したことを証明できる書類(寄附金の受領証)を添付します。
寄附金の受領証は必ず受け取り、その際に寄附先の団体に寄附金控除の対象かどうかを確認しましょう。
日本赤十字社に義援金を寄附すると寄附金控除が受けられる
日本赤十字社では、災害が起きると「被災地への義援金」を募集します。
日本赤十字社に義援金を寄附し、受領証を受け取ると寄附金控除が受けられます。
ゆうちょ銀行・郵便局からの寄附は「振込用紙の半券」、銀行振込の場合は「利用明細表」が受領証の代わりとなり、税制上の措置が受けられます。
また、インターネットバンキングを利用した場合は、確認画面を印刷したものが受領証となります。
受領証として代用できる利用明細書は、その明細書に以下の内容が確認できるものに限ります。
- 寄附者名
- 寄附した日
- 寄附した金額
- 寄附先の口座番号(義援金専用口座番号)
銀行振込で受領証を受け取りたい方は、事前登録の手続きをする必要があります。
また、受領証については、以下の留意点があります。
- 発行できる受領証は1件の入金につき1枚
- クレジットカードでの寄附は、日本赤十字社への入金に時間がかかるので受け付けていない
- 受領証の発行には最大で3ヵ月ほど時間がかかる
災害の後は多くの人が義援金を寄附するため、受領証が発行され手元に届くには時間がかかることを覚えておきましょう。
義援金の寄附金控除とふるさと納税の併用は可能
ふるさと納税以外にも、義援金として特定の団体や自治体に寄附をしている場合、ふるさと納税と義援金の寄附金控除の併用は可能です。
ただし、寄附金控除はその年の所得金額の40%が上限となります。
ふるさと納税と義援金による寄附を行った場合、確定申告をすると寄附金控除を受けられます。
ふるさと納税でいくつかの自治体へ寄附した場合は、すべての受領書が必要となるので、なくさずに管理しておきましょう。
まとめ
ここまで義援金やふるさと納税のメリット・デメリットや、ふるさと納税で災害支援をする方法について紹介しました。
ふるさと納税で災害支援を行うと、被災した人たちだけでなく、支援する側にもメリットがあります。
ふるさと納税の仕組みや利点を知ったうえで、ポータルサイトなどで災害支援を行ってみましょう。
一人が寄附できる額は少なくても、たくさんの人の力を合わせれば「大きな力」となるでしょう。