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もちもちとした食感とほろ苦さが魅力のぎんなん(銀杏)は、秋を彩る代表的な食材です。この記事では、ぎんなんをおいしく楽しむために知っておきたい基礎知識から、プロのような仕上がりになる下処理のコツ、長持ちさせる保存法までを詳しく解説します。
ぎんなんの基本情報と新鮮な選び方

ぎんなんとは?旬の時期と基礎知識
ぎんなんは、イチョウの木の実の中にある種子の核(仁)を指します。イチョウは街路樹や公園、社寺などで広く植えられていますが、食用になるのは、果実の中にある硬い殻に包まれた種子の部分です。この種子を割ると出てくる翡翠色の部分を「仁」といい、これが食用とされるぎんなんです。
ぎんなんの旬は、産地によって多少前後しますが、一般的に9月下旬から11月ごろです。とくに晩秋にかけて収穫されるものは、味が濃く、風味豊かです。
ぎんなんに含まれる栄養素と期待できる効能
ぎんなんは、小さな粒の中に炭水化物やミネラル、ビタミンなどを豊富に含む、栄養価の高い食材です。
主成分はデンプンなどの炭水化物であり、中国では古くからスタミナ食として利用されています。さらに、体内の水分や塩分のバランスを整えるカリウム、骨や歯を形成するマグネシウムなどのミネラルも含みます。
また、ぎんなんには、強い抗酸化作用をもつβ-カロテンやビタミンCも含まれています。これらの成分は、免疫力の向上や生活習慣病の予防に役立つと期待されています。
新鮮でおいしいぎんなんの見分け方
新鮮でおいしいぎんなんを見分ける方法はいくつかあります。新鮮なぎんなんは、殻が硬く、光沢があり、ずっしりとした重みを感じるものを選ぶことが大切です。
具体的な見分け方は以下の通りです。
- 殻の色とつや:白っぽく、表面につやがあるものが新鮮です。古くなるとくすんだ色になり、つやが失われます。
- 重さ:ずっしりとした重みを感じるものは、水分が保たれており、実が詰まっている証拠です。
- 傷の有無:殻に傷やひび割れがなく、完全な形を保っているものを選びましょう。傷から水分が抜けたり、カビが発生したりする原因になるためです。
ぎんなんの毒性と安全な摂取量について

ぎんなんをおいしく安全に食べるために、必ず知っておくべき重要な情報があります。
ぎんなんに含まれる有毒成分について
ぎんなんには、中毒症状を引き起こす可能性のある「4ʼ-O-メチルピリドキシン」という有毒成分が含まれているため、摂取量に注意が必要です。
この成分は、体内のビタミンB6の働きを妨げます。この成分は熱に強く、加熱調理をしても毒性がなくなることはありません。
中毒症状は、嘔吐やけいれんなどであり、重篤なケースでは命にかかわることもあります。とくに体内のビタミンB6の欠乏状態に左右されるため、少ない量でも中毒が起こる危険性があります。
安全な摂取量の目安と、とくに注意が必要な方
中毒のリスクを避けるために、ぎんなんの摂取量は「数粒食べて旬の風味を楽しむ」程度にとどめる意識が大切です。
ぎんなんに含まれる有毒成分に対する耐性は個人差が大きいため、一概に「一日何個まで安全」とはいいきれないためです。とくに身体の小さいこどもは、少ない量で中毒を起こすリスクが考えられます。
厚生労働省の資料などでは、一般的に以下の注意喚起がなされています。
- こども(とくに5歳以下):中毒例が報告されているため、食べさせないようにしてください。
- 大人:1日あたり10粒以内を目安とし、過剰な摂取は避けるべきです。
ぎんなんを摂取する際は、上記の目安を厳守し、体調に変化があった場合は直ちに医療機関を受診してください。
参考:一般社団法人 母子栄養協会「子どもは銀杏(ぎんなん)にご注意を」
実を取り出してから加熱する手順

ここからは、ぎんなんを料理に使うための具体的な下処理方法を解説します。この方法は、仕上がりが美しく、失敗が少ないため、茶碗蒸しなど見た目を重視する料理におすすめです。
かたい殻を割る具体的な方法
殻を割って、中の実(薄皮付きの状態)を取り出します。硬いぎんなんの殻を安全かつ確実に割るには、専用の道具を使うか、殻のつなぎ目を見極めて力を加えることが大切です。
具体的な割り方は以下の通りです。
- ぎんなん割り器・キッチンばさみ:最も安全で確実です。殻のつなぎ目部分を挟んで割ります。
- ペンチ(工具):代用できますが、実を傷つけないよう注意が必要です。
- トンカチやハンマー:厚手の布巾やタオルで包み、殻のつなぎ目部分を軽く叩いてヒビを入れ、手でむきましょう。
薄皮をむくための3つの加熱・下処理
殻を割って取り出した実は、薄皮(渋皮)に包まれています。この薄皮をむくことで、翡翠色の美しいぎんなんが現れます。薄皮は加熱で剥がれやすくなります。
茹でる(水煮にする)
茹でる方法は、均一に熱が通りやすく、薄皮が簡単に剥けるため、最もポピュラーです。
熱湯の中で実同士をこすりつけることで、薄皮の接着力が弱まり剥がれやすくなります。
- 薄皮付きのぎんなんを熱湯に入れ、3~5分ほど茹でます。
- おたまで鍋底にぎんなんを軽くこすりつけるように混ぜると、薄皮が剥がれます。
- 茹で上がったらすぐに冷水にとり、熱いうちに残りの薄皮を手でむき取れば完了です。
素揚げする
揚げる方法は、風味が増し、素早く薄皮を剥くことができます。
高温の油で加熱することで薄皮がパリッと乾燥し、実から剥離しやすくなります。
- ぎんなんを薄皮付きのまま揚げ油に投入します。
- 加熱しすぎると実がかたくなったり、破裂したりするため注意が必要です。薄皮が剥がれ始めたらすぐに油から取り出します。
- 取り出した後、塩を振ればそのままおいしいおつまみになります。
水に浸す
加熱せずに生のまま薄皮をむきたい場合は、水に浸す方法が有効です。
水に浸すことで薄皮が水分を吸ってふやけ、実から離れやすくなります。
- 殻をむいたぎんなんを20~30分ほど水につけておきます。
- 薄皮がやわらかくなったら、指の腹や濡らしたキッチンペーパーなどで、優しくこそげ取るようにむいてください。
殻ごと加熱する手順と注意点(手軽さ重視)

この方法は、一つひとつ殻をむく手間が省けるため、少量のぎんなんを手早く調理したいときに便利です。ただし、実が破裂する危険性があるため、注意深く行う必要があります。
電子レンジを利用して加熱する方法
電子レンジは最も短時間でぎんなんを加熱できる方法ですが、破裂を防ぐための事前準備が必須です。
ぎんなん内部の水分が急激に過熱・膨張するため、密閉された殻の中で大きな音を立てて爆発することがあるためです。
- 殻付きのぎんなん(10~20粒程度)を用意し、あらかじめ殻に割れ目を入れておきます。(蒸気が抜け、爆発を防ぎやすくなります。)
- ぎんなんを封筒や紙袋に入れ、口を2~3回しっかりと折り、出てこないようにします。
- 電子レンジに入れ、500~600Wで30秒~1分ほど加熱します。
- 途中で2~3個「ポンポン」と弾ける音が聞こえたら、その時点で加熱を止め、取り出します。
フライパンで煎る方法
フライパンで煎る方法は、香ばしい風味を加えながら殻を割ることができます。
加熱により殻のつなぎ目が開き、同時に薄皮も剥がれやすくなります。
- 電子レンジの場合と同様に、あらかじめ殻に割れ目を入れておくと安心です。
- 殻付きのぎんなんをフライパンに入れ、中火~強火でフライパンを軽く揺らしながら5~10分ほど熱します。
- 殻にヒビが入ったら、やけどに注意しながら、熱いうちに殻と薄皮をむきましょう。
トースター・オーブンで加熱する方法
トースターやオーブンは、焦げ付きにくく、均一に加熱できる方法です。
じっくりと熱を加えることで中まで火が通り、薄皮までパリッと剥がれやすくなります。
- あらかじめ殻に割れ目を入れたぎんなんをトースターのトレーやオーブン皿に並べます。
- 200℃前後を目安に、10分ほど加熱します。
- 焼き色がつき、殻が割れているのを確認してから取り出し、薄皮をむきましょう。
ぎんなんを長持ちさせるための保存方法

ぎんなんは一度に大量に使うことが少ないため、適切に保存して鮮度を保ちたいものです。保存は「殻付き」の状態か「下処理済み」の状態かで方法が異なります。
殻付きの状態での保存方法
殻付きのぎんなんは、乾燥を防ぎ、低温で保存することで比較的長期間鮮度を保てます。
硬い殻が実を保護しているため、水分が失われにくく、そのまま保存に適しています。
- 常温保存:紙袋や新聞紙などで包み、湿度が低く涼しい冷暗所に置けば、短期間の保存が可能です。ただし、室温が高い場合は避けてください。
- 冷蔵保存:紙袋に入れたぎんなんをさらにポリ袋などに入れ、冷蔵庫の野菜室で保存します。この方法で2週間から1ヵ月程度保存できます。しかし、時間の経過とともに風味は落ちるため、できるだけ早く食べることをおすすめします。
下処理済みのぎんなんの保存方法
殻と薄皮をむいたぎんなんは劣化が早いため、すぐに冷凍保存することで、およそ2~3ヵ月ほど風味と鮮度を保てます。
下処理後のぎんなんを冷蔵庫で保存できるのは1週間ほどと短く、すぐに食べない場合は冷凍が最も適しています。
ぎんなんを使ったシンプルなおすすめ調理例

ぎんなんの風味を最大限に引き出す、シンプルでおいしい調理例をご紹介します。
「塩煎りぎんなん」の作り方
最も手軽でおつまみに最適なのが、シンプルな塩煎りです。
加熱するだけで、ぎんなん特有の風味ともちもちした食感を味わえます。
- フライパンで煎る場合:下処理方法2-2を参照し、殻ごと煎ってからむき、塩を軽く振ります。または、殻をむいて薄皮を取ったぎんなんを少量の油でサッと炒め、塩を振って仕上げます。
- 電子レンジで加熱する場合:下処理方法2-1を参照し、殻ごと加熱する方法が非常に手軽です。
料理への活用アイデア
ぎんなんは、その色味と食感のアクセントとして、さまざまな料理で活用できます。
鮮やかな翡翠色は料理に彩りを加え、もちもちした食感はアクセントになるため、幅広い和食・中華料理と相性が良いです。
- 和食:茶碗蒸しの具材として、または炊き込みご飯の具として使われます。
- 中華料理:おこわや炒めもの、餡かけ料理などに加えると、食感とほろ苦さが楽しめます。
まとめ
ぎんなんは秋の味覚として非常に魅力的ですが、その摂取には十分な注意が必要です。
正しい下処理と安全な摂取量を守ることで、ぎんなんのもつ特有の食感と豊かな風味を堪能できます。この記事で紹介した情報が、ぎんなんを食卓に取り入れる際の参考になれば幸いです。













