総務省によると、2020年のふるさと納税の寄付総額は前年度の約1.4倍となる約6725億円になりました。
ふるさと納税は、好きな地域を支援して「お礼の品」がもらえ、税控除もできるという、メリットが多い制度で、賢く利用している人が増えています。
しかし、不確かな知識のまま始めて「こんなはずじゃなかった」とがっかりする人もいます。
今回は、ふるさと納税の6つのデメリットとその回避方法について紹介します。
ふるさと納税の仕組みとメリット
ふるさと納税は、自分の生まれ故郷など応援したい自治体に寄附することで、住民税や所得税の控除を受けられ、さらにその地域の特産品などが「お礼の品」としてもらえる制度です。
あまりの過熱ぶりに、「返礼品の還元率は3割以下」「地場産品のみ」という基準が2019年に設けられました。
ふるさと納税のメリットは以下の通りです。
寄附金が控除されて戻ってくる
寄附金から自己負担額の2,000円を引いた金額が、所得税や住民税から控除されます。寄附金額の上限はありますが、実質の出費は2,000円だけです。
返礼品がもらえる
寄附した人には自治体から返礼品が送られます。自己負担金2,000円以上の魅力ある品が多く用意されており、返礼品を選ぶこと自体も楽しめます。
ここ数年、各自治体は2019年からの新基準に対応するため、特産品だけでなく、その地域ならではの体験型の返礼品に力を入れつつあります。
寄附する側にとっても、楽しみが増えることになりそうです。
地域を応援できる
ふるさと納税は、任意の自治体へ寄附することができます。
例えば、返礼品が魅力的な自治体、旅行で訪れて好きになった自治体など、それぞれの理由で応援することができ、しかも寄附金の使い道を指定することも可能です。
災害が起きた後、被災地の自治体へふるさと納税することで、復旧・復興支援に協力することもできます。
実質負担2,000円で返礼品を受け取ることができ、寄附金の使い道も指定できることで、家にいながら地域産業を支援する「応援消費」に関心が集まっています。
ふるさと納税のデメリット6つ
ふるさと納税を行うとき、注意すべき点があります。
魅力的な返礼品が自己負担2000円で入手できる、という情報だけでふるさと納税を行うと、失敗することもあります。
しっかりデメリットを知ったうえで取り組んでください。
知らないと損する6つのデメリットは以下の通りです。
- 減税・節税の効果はない
- 控除限度額を超えると自己負担になる
- 自己負担2,000円は必ずかかる
- 寄附なのでその年は持ち出しになる
- 年間6つ以上の自治体へ寄附すると確定申告の必要がある
- 名義が違うと所得税も住民税も控除されない
メリットが多いふるさと納税ですが、制度の内容をしっかりと把握しておかないと損をするリスクもゼロではありません。
減税・節税の効果はない
ふるさと納税は、減税や節税になるわけではありません。
ふるさと納税の仕組みは簡単にいうと、「住民税の前払い」です。
寄附の上限が5万円で確定申告をする場合、5万円から自己負担額の2,000円を引いた48,000円に所得税率23%(税率は所得金額によって異なる)と、復興特別所得税1.021を掛けた金額11,271円がふるさと納税をした年度の所得税から控除されます。
さらに48,000円から11,271円を差し引いた金額36,729円は翌年度の住民税から減額されることになります。
税負担が少なくなるのではなく、5万円分前払いして、所得税と住民税合わせて48,000円分が戻ってくることになります。
控除限度額を超えると自己負担になる
寄附金額から2,000円を引いた額が戻ってくる(控除される)ふるさと納税ですが、控除額には上限があります。
上限額は年収のほか、扶養家族、医療費控除、住宅ローンの有無などによって変わります。
控除額の上限を超えると、税額控除の対象外となります。
いくらでも寄附すること自体はできますが、上限を超えた分の寄附金は全て自己負担となってしまいます。
「ふるなび」のサイトなどで、自分の控除限度額の目安をシミュレーションしておくことが大切です。
自己負担2,000円は必ずかかる
寄附金額にかかわらず、2,000円は必ず負担しなければなりません。
収入が少なく控除限度額が低くても、自己負担額は変わりません。
控除限度額によって、選べる返礼品の種類や量の制限がありますので、2,000円の自己負担金を払うことが損にならないよう注意しましょう。
寄附なのでその年は持ち出しになる
ふるさと納税の実態は寄附です。
その額に応じて翌年の住民税や所得税から控除される仕組みなので、出費が先になります。
手元のお金にそれほど余裕がない場合に無理に寄附をしようとすると負担になることは知っておきましょう。
寄附金は、2,000円を引いた分が控除により戻ってきますが、戻るタイミングは翌年です。
年間6つ以上の自治体へ寄附すると確定申告の必要がある
年間の納税先が6自治体以上になると、給与所得者でも、確定申告が必要になります。
ワンストップ特例制度の利用条件に、寄附先が5つの自治体までであることが含まれているためです。
同じ自治体に複数回寄附しても1自治体と数えられます。
例えば、7回寄附をしても、そのうち3回を同じ自治体に行うと、5自治体への寄附となり、確定申告は必要ありません。
通常、確定申告が必要になるのは、自営業者や、不動産収入がある人、副収入が20万円以上の人です。
また、会社員でも給与所得が2,000万円を超える場合は確定申告が必要になります。
申告のやり方は難しくはありません。
2021年分の確定申告から、ふるさと納税は簡単な手続きで申告できるようになりました。
納税先の自治体から届く「寄附金受領書」の代わりに、「ふるなび」などの特定事業者が発行する「寄附金控除に関する証明書」を添付するだけで手続きが完了します。
名義が違うと所得税も住民税も控除されない
ポータルサイトからネット通販感覚で寄附ができるふるさと納税ですが、控除は寄附者の名義分しか認められません。
例えば扶養に入っている妻が夫名義のクレジットカードでふるさと納税をしても、決済者本人でない妻は控除に必要な「寄附金受領証明書」が有効にならないので注意しましょう。
ふるさと納税のデメリット回避方法
ふるさと納税のデメリットを回避する方法は以下の2つです。
控除限度額を簡単にシミュレーション
控除の限度額以上の寄附をした場合、超えた分は控除されません。
つまり全額自己負担となってしまいます。
これを回避するには、事前に限度額をシミュレーションしておくことが大切です。
上限額の目安を知るための計算方法は以下の通りです。
- 所得税からの控除額=ふるさと納税額-2,000円×所得税の税率
- 住民税からの控除額(基本分)=ふるさと納税額-2,000円×所得税の税率
- 住民税からの控除額(特例分)=ふるさと納税額-2,000円×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
「ふるなび」のサイトでは、年収や配偶者の有無を入力するだけで、簡単に控除限度額をシミュレーションできます。
控除額の上限を把握し、それを超えないぎりぎりまで寄附したいところです。
しかし実際には、住宅ローン控除や医療費控除を受けたりして、思ったほど寄附控除が受けられないケースもあります。
寄附上限額いっぱいに寄附するのでなく、税の仕組みを知って、しっかり検討し、余裕を持って寄附するのがポイントです。
寄附先が5つ以内の自治体ならワンストップ特例制度を活用
給与所得が2,000万円以下の会社員で副収入がない人で、かつ寄附先が5自治体以内の場合、ワンストップ特例制度を利用することで確定申告が不要になります。
ワンストップ特例制度は、確定申告なしでふるさと納税の寄附金控除を受けられる仕組みです。
給与所得が2,000万円以内の会社員で1年間の寄附先が5自治体以内の場合に活用できます。
まず、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入したうえで、寄附先の自治体に翌年の1月10日までに送ります。
すると、翌年6月ごろに、現在住んでいる自治体から住民税控除の通知が届き、減額されたことが分かる仕組みとなっています。
この制度で受けられる控除は住民税のみとなりますが、本来所得税から還付されるはずの金額分が住民税から控除されるため、控除総額は確定申告時と変わりません。
ふるさと納税専門サイトなどで知識をつけてから行うのがおすすめ
しっかり知識を身につけてからふるさと納税を行うと、メリットを最大限に受けることができます。
窓口となるふるさと納税サイトには、関連情報が満載されています。
まずは、ふるさと納税の仕組みを理解してから始めると良いでしょう。
魅力的な返礼品を楽しむためにも、しっかりとした税金の知識を身につけておくことがおすすめです。
まとめ
認知度も高まり、ますます人気のふるさと納税ですが、正しい情報をチェックしないと、自己負担額が2,000円以上かかる、ワンストップ特例が受けられないなどの失敗をしてしまうかもしれません。
まずは「ふるなび」などのふるさと納税サイトにある、詳細シミュレーションを使って、自分の寄付限度額をチェックしてください。
ふるさと納税の仕組みや目的をしっかりと理解して、最大限に活用しましょう。