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夏が旬の「岩牡蠣」は、冬が旬の真牡蠣とは一味違う魅力を持つ海の幸です。
ぷりっとした肉厚な身と濃厚なうま味が特徴で、夏の食卓を彩ります。
この記事では、夏に美味しくなる理由や真牡蠣との違いなど、岩牡蠣の旬について詳しく解説します。
また、岩牡蠣の主な名産地や美味しい食べ方、安全に食べるための注意点も紹介しています。
希少とされる「岩牡蠣」とは?

岩牡蠣は、日本海側を中心に、沿岸の岩場や海底に生息しています。
4〜5年もの長い歳月をかけてゆっくりと成長し、その間にタウリンやビタミンB群などの栄養を蓄えます。
肉厚でジューシーな身や、みずみずしくクリーミーな味わいが特徴です。
特定の環境で時間をかけて育つことと、真牡蠣の流通が少ない夏場に旬を迎えることから、岩牡蠣は高級食材とされています。
岩牡蠣と真牡蠣の違い
日本では、牡蠣といえば、冬に旬を迎える真牡蠣がより一般的です。
岩牡蠣と真牡蠣は、旬の時期以外にも、味わいや育ち方などに大きな違いがあります。主な違いを以下にまとめます。
牡蠣の種類 | 岩牡蠣 | 真牡蠣 |
---|---|---|
旬 | 夏(6月〜9月頃) | 冬(11月〜3月頃) |
見た目 | 大きい 厚くゴツゴツした殻 | 小ぶり 岩牡蠣より殻が薄い |
産地 | 日本海側に多い | 太平洋側に多い |
流通量 | 少ない (天然ものが多い) | 多い (養殖が主流) |
食べ方 | 生食が主流 焼き牡蠣も人気 | 生食・加熱 |
味わい | 繊細かつ濃厚でクリーミー | うま味が強くコクがある |
夏が旬の岩牡蠣は、濃厚でクリーミーな味わいと、大粒で食べ応えのある食感が特徴です。主に生食やシンプルな焼き牡蠣に向いています。
一方、冬が旬の真牡蠣は、小ぶりですがうま味が強くコクがあります。生食以外にも、鍋やフライ、グラタンなどの加熱料理にもぴったりです。
岩牡蠣の旬は夏

岩牡蠣は、一般的に6月~9月の夏場が旬です。
旬を迎えた夏の岩牡蠣は、身がふっくらと大きくなり、濃厚でクリーミーな味わいが楽しめます。
なお、産地や養殖方法によっては、春から旬を迎えて出荷が始まるところもあります。
岩牡蠣が夏に美味しい理由
岩牡蠣が夏に旬を迎えて美味しくなるのは、産卵期と海中のプランクトンの増加が関係しているためです。
岩牡蠣は、産卵期の7月~8月頃に向けて栄養を蓄えるため、身が大きくなり、食味もよくなります。
また、夏場は海水温の上昇と強い日差しにより、岩牡蠣のエサとなる植物プランクトンが多く発生します。
豊富なエサを食べて育った夏の岩牡蠣は、甘味のあるグリコーゲンやアミノ酸などのうま味成分が増加し、濃厚でクリーミーな味わいになります。
こうした理由から、岩牡蠣は夏場に最も美味しくなるのです。
真牡蠣と岩牡蠣の旬が異なる理由
夏が旬の岩牡蠣とは対照的に、真牡蠣の旬は冬です。
真牡蠣と岩牡蠣は、どちらもマガキ属で近縁ではありますが、別の種です。
産卵の特徴などに違いがあるため、旬の時期も大きく異なります。
牡蠣の種類 | 真牡蠣 | 岩牡蠣 |
---|---|---|
学名 | Crassostrea gigas | Crassostrea nippona |
成長スピード | 1~2年で食用サイズに成長 | 4~5年で食用サイズに成長 |
産卵の特徴 | 栄養を消費して一度に産卵する | 数回に分けて少しずつ産卵する |
どちらの牡蠣も、多少の差はありますが、産卵期は夏場です。
しかし、真牡蠣は一度に産卵を行い、身がやせて食味が落ちやすくなります。
一方、岩牡蠣は数回に分けて少しずつ産卵します。夏の産卵に向けて栄養を蓄えた後、産卵を経ても、身がやせにくく旬の時期が長続きします。
岩牡蠣の主な産地

岩牡蠣は、北は青森県から南は九州まで、沿岸に広く分布する貝です。
国内に多数の産地があり、天然ものが漁獲されるほか、一部の地域では養殖も行われています。
いずれの産地も、汚染が少なく清浄で、岩牡蠣のエサとなる植物プランクトンが豊富な海域に恵まれています。
ここでは、代表的な岩牡蠣の産地を3つ紹介します。
島根県:隠岐諸島
島根県の本土から50kmほど北に位置する隠岐諸島は、岩牡蠣の養殖発祥の地です。
対馬暖流の影響により、岩牡蠣のエサとなるプランクトンが豊富で、大粒の岩牡蠣が育ちます。
隠岐の養殖の岩牡蠣は、一般的な岩牡蠣より早い3月~5月に旬を迎えて全国へと出荷されます。
厳しい安全基準が設けられた「隠岐のいわがき」ブランドのものは、生食用として徹底した衛生管理が行われているのが特徴です。
石川県:能登半島
能登半島の岩牡蠣は、6月~8月頃に旬を迎えます。地元では夏になると、新鮮な岩牡蠣をその場で味わう文化が根付いています。
能登半島の沿岸では、日本海の清浄な海水に、山林に由来するミネラルが豊富な河川水が流れ込みます。植物プランクトンが多く発生し、岩牡蠣の生育に最適な環境です。
また、リアス式海岸により波が穏やかなため、牡蠣はしっかりと岩に張り付いて成長できます。
秋田県:象潟町
秋田県南端に位置するにかほ市象潟町でも、6月~8月頃に岩牡蠣が旬を迎えます。
象潟町の海には、鳥海山からの雪解け水が伏流水となって流れ込み、豊富なミネラルが沖合に広がります。
この鳥海山由来の栄養が、岩牡蠣のエサとなるプランクトンを育み、大ぶりで濃厚な味わいの岩牡蠣へと成長させるのです。
また、日本海の冷涼な海域で牡蠣の身が引き締まり、うま味がさらに凝縮されます。
岩牡蠣の美味しい食べ方

岩牡蠣は、とくに生食に向くほか、たくさんの美味しい食べ方があります。
ここでは、岩牡蠣の美味しい食べ方を紹介します。
新鮮さを味わいたいなら生食で楽しむ
岩牡蠣の醍醐味は、何といっても繊細なうま味と濃厚でクリーミーな食感です。
その魅力を最大限に味わうなら、生食がおすすめ。
新鮮な岩牡蠣は、海の香りがふわっと広がり、噛むたびにうま味が口いっぱいに広がります。
レモンを軽く絞ると、酸味が絶妙なアクセントに。ポン酢やタバスコをかけると、また違った味わいが楽しめます。
バターや醤油で楽しむ焼き牡蠣
岩牡蠣は、焼くことで甘みとうま味が増します。
殻付きのまま焼き、口が開いたらバターと醤油を垂らすと、香ばしい香りで食欲をそそられます。
自宅でも、フライパンや魚焼きグリルで簡単に調理可能です。
ジュワッと広がる海の風味を存分に味わいましょう。
蒸し牡蠣でふっくらした食感を
岩牡蠣をふっくらジューシーに味わいたいなら、蒸し牡蠣がおすすめです。
殻ごと蒸すことで、牡蠣のうま味が凝縮され、ぷりっとした食感に。
ワインや日本酒を使って蒸すと、風味が加わり美味しさがさらに引き立ちます。
蒸す時間は短めにすると、身が縮まずベストな食感に仕上がります。
ジューシーな牡蠣フライ
岩牡蠣のうま味をサクッと楽しむなら、牡蠣フライがおすすめ。
パン粉をしっかり付けて揚げると、外はカリッと香ばしく、中からはジューシーな牡蠣のエキスがあふれます。
軽く塩水で洗う下処理をすると臭みが取れ、よりクリアな味わいになります。
ご飯のおかずにはもちろん、おつまみにも最高の一品です。タルタルソースやレモン、ウスターソースなど、お好みの味付けで楽しみましょう。
アサリと一緒にスープに
アサリと一緒にスープにすると、牡蠣とアサリから出るダシが重なり、奥深い味わいになります。
パンを添えれば、スープに染み出したうま味まで余すことなく楽しめます。
体が温まる、贅沢な一品です。
岩牡蠣であたらないための注意点

牡蠣は、食中毒の原因となることも多い食品です。岩牡蠣であたらないための注意点を解説します。
新鮮な岩牡蠣の見分け方
岩牡蠣を安全に味わうには、鮮度が重要です。
以下のような基準で、新鮮な牡蠣を見分けましょう。
- 殻付きなら、殻がしっかり閉じているもの。
- 半開きの場合は、軽く叩いて素早く閉じるもの。
- 身はふっくらと膨らみ、乳白色で透明感があるもの。
- 磯の香りが強すぎず爽やかな海の香りがするもの。
また、殻に傷が少ないのも、美味しい牡蠣を見分けるポイントです。
岩牡蠣の保存期間と方法
岩牡蠣は、適切な方法で保存し、新鮮なうちに食べることが重要です。
保存期間の目安は以下のとおりです。
- 冷蔵保存(殻付き)
3~4日以内 - 冷蔵保存(むき身)
1~2日(生食なら当日か遅くとも翌日まで)
※殻付きより鮮度が落ちやすい。 - 冷凍保存
1か月程度
※解凍後は加熱調理して食べる。
冷蔵での保存期間は、商品に消費期限の記載があれば、そちらを優先してください。
続けて、殻付きとむき身の岩牡蠣について、それぞれ冷蔵と冷凍保存の手順を紹介します。
殻付き岩牡蠣の冷蔵保存
- 殻付きの牡蠣を重ならないようにお皿に並べる。
- 水で湿らせたキッチンペーパーを牡蠣の上にかけ、乾燥を防ぐ。
- 牡蠣が呼吸できるように、密閉せずラップをふんわりとかける。
- 冷蔵庫のチルド室やパーシャル室などで保存する。
殻付き岩牡蠣の冷凍保存
- 殻付き牡蠣の表面を水で洗って、殻の汚れをしっかり落とす。
- 水気をよく拭き取る。
- フリーザーバッグに重ならないように入れて、空気を抜いて密封して冷凍する。
解凍は、冷蔵庫に移しておくか、フリーザーバッグの上から流水を当てて行えます。
むき身岩牡蠣の冷蔵保存
- パックなどの開封後なら、商品に入っている食塩水とともにタッパーに入れる。
(密封された状態の商品ならそのままでよい。) - 冷蔵庫のチルド室やパーシャル室などで保存する。
むき身岩牡蠣の冷凍保存
- むき身の水分をキッチンペーパーで丁寧に拭き取る。
- フリーザーバッグに入れて密封し、冷凍庫で保存する。
- 解凍後は加熱調理して食べる。
解凍は、表面の氷が溶けてきて半解凍の状態になるまで、流水に1分前後さらすとよいでしょう。半解凍になった後、料理酒に浸しておくと、臭みを抑えられます。
加熱の温度と時間の目安
牡蠣は、生食が可能な商品だけでなく、加熱用の商品も流通しています。
食中毒を防ぐため、加熱用の牡蠣は生食しないでください。食べる際には十分な加熱調理を行いましょう。
ノロウイルスなどの食中毒を防ぐには、中心部の温度が85〜90℃に達した状態を90秒以上保つことが効果的です。
岩牡蠣の場合、調理の方法に応じて、以下のような加熱時間を目安にするとよいでしょう。
- 焼き牡蠣
殻がしっかり開くまで、表裏を中火で5分ずつ加熱する。 - フライ
衣がきつね色になるまで、180℃の油で4~5分を目安に火を通す。 - 蒸し牡蠣
蒸気が十分に立ち上がってから、9分ほど加熱する。
まとめ
岩牡蠣の旬は夏です。真牡蠣とは異なる時期に旬を迎えることから、希少な食材として重宝されています。
夏の岩牡蠣は、産卵に向けて蓄えた栄養により、身が大きく、うま味も強いのが特徴です。
ただし、旬の時期は産地によっても差があり、早いところでは春から旬を迎えます。
手に入ったら、保存や調理の方法には気を付けて、新鮮なうちに味わいましょう。
旬の岩牡蠣は、生食や焼き牡蠣などお好みの食べ方で、濃厚でクリーミーな味わいが楽しめます。