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生ではシャキシャキ、加熱すればホクホク、すりおろせばトロトロの食感が楽しめる長芋。
とろろやお好み焼きのつなぎのイメージが強いですが、実は、サラダや漬物から煮物・焼物・揚げ物まで、あらゆる調理法と相性のいい食材です。
古くから滋養強壮に効くことで知られていて、「山薬(さんやく)」という名前で漢方処方に配合されることも。
栄養価の高さから、「山うなぎ」という呼び名まで存在しています。
今回は、そんな栄養たっぷりの長芋にクローズアップ。
長芋を食べると得られる効果・効能や、おすすめの食べ方、山芋・大和芋・自然薯との違いについても解説します。
長芋の主な栄養と5つの効果

なんとなく体によさそうなイメージのある長芋ですが、具体的にどんなメリットがあるのかはわからない…という方も多いはず。
まずは、長芋の代表的な栄養と効果をチェックしてみましょう。
血糖値の急上昇を抑える
長芋に含まれる栄養素のうち、特に注目したいのが食物繊維とレジスタントスターチ(難消化性デンプン)です。
レジスタントスターチは炭水化物の一種ですが、ほとんど消化されずに大腸まで届き、食物繊維と同様の働きをします。
どちらも腸内をくまなく移動して消化吸収をゆるやかにしてくれるので、食後の血糖値の急激な上昇を防ぐことが可能。
糖尿病や動脈硬化の予防にもつながります。
胃もたれを防いで食欲増進
長芋独特のぬめり成分には、胃腸の粘膜を保護する働きがあります。
暴飲暴食やストレスで荒れてしまった粘膜の修復を助けてくれるほか、消化を助けるジアスターゼという酵素とともに胃腸の働きを活発にする効果も。
これらの成分のおかげで胃もたれなどの不調も起こりにくいので、食欲が減退しがちな夏バテ中やつわり中の妊婦さんにもおすすめです。
疲労回復・スタミナ増強
アミノ酸の一種であるアルギニンや、エネルギー代謝に関与するビタミンB群など、長芋には疲労回復を促してくれる栄養素もたっぷり。
ジアスターゼの消化促進効果によって栄養が体内に効率よく吸収されることも、効果的な疲労回復やスタミナ補給に役立っています。
生活習慣病の予防に
長芋に含まれる栄養素の中には、生活習慣病の予防に役立つものも。
糖尿病などを予防する食物繊維やレジスタントスターチのほか、体内の余分な水分や塩分を排出するカリウムは高血圧の予防に、血流を改善する作用のあるアルギニンは動脈硬化の予防に、それぞれ効果を発揮してくれます。
優秀なダイエット食材として
<可食部(生)100gあたりのカロリー>
- 長芋 64kcal
- 里芋 53kcal
- じゃがいも 59kcal
- さつまいも 126kcal
長芋のカロリーは、100gあたり64kcal。
さつまいもよりは低カロリーですが、じゃがいもや里芋に比べると同程度~やや高い水準です。
一方で、食物繊維やレジスタントスターチによる便秘解消効果や、カリウムによるむくみ解消効果など、長芋にはダイエットを強力にサポートしてくれる栄養が満載。
レジスタントスターチには脂肪の蓄積を抑える効果もあるので、食べ過ぎに注意しながら食事に取り入れることで、ダイエットの強い味方になってくれます。
長芋と山芋・大和芋・自然薯は何が違う?

長芋によく似た食材といえば、山芋や大和芋、自然薯などが思い浮かびますが、これらの違いを正しく説明できる人は少ないのではないでしょうか?
ここでは、それぞれの特徴や含まれる栄養の違いについてまとめました。
長芋は山芋の一種
山芋とは、ヤマノイモ科に属する芋類の総称で、実際には「山芋」という名前の野菜はありません。
長芋・大和芋・自然薯はすべてヤマノイモ科に属していて、それぞれが山芋の中の一種類です。
一つひとつ形が異なる大和芋や自然薯に対し、長芋はどれも長い棒のような形をしているのが特徴。
すりおろすと、長芋はサラサラしていてみずみずしく、比較的淡泊な味わいですが、大和芋や自然薯では強い粘りと甘みが感じられます。
長芋は、大和芋や自然薯などに比べて流通量が多く、価格も安いので、山芋の中でももっとも身近な存在です。
長芋は大和芋・自然薯より低カロリー
長芋・大和芋・自然薯に含まれている栄養に大きな差はありませんが、カロリーには見逃せない違いがあります。
生の場合のカロリーは、長芋が100gあたり64kcalなのに対し、大和芋は119kcal、自然薯は118kcal。
水分を多く含んでいる長芋は、大和芋や自然薯に比べて低カロリーです。
加熱で失われる成分も!栄養を逃さない長芋の食べ方

メニューのバリエーションが豊富な長芋ですが、調理法によってはせっかくの栄養が失われてしまうことも。
ここでは、長芋のおすすめの食べ方や調理のコツをご紹介します。
皮ごと食べてもOK
長芋の皮は、むかずにそのまま食べることが可能です。
皮に含まれる栄養もまるごと摂取できるだけでなく、長芋本来の風味を存分に味わうことができます。
皮をむくと表面のぬめりでやや扱いにくくなってしまうので、皮ごと調理する方が作業の上でも効率的です。
皮から生えているヒゲが気になる場合は、直火でヒゲをあぶってから水洗いしましょう。
ヒゲの数が多いときや、見た目や舌ざわりをよくしたいときは皮をむいた方がいい場合もあるので、状況に応じて下処理方法を選択してください。
生で食べれば栄養そのまま
長芋に含まれるレジスタントスターチやジアスターゼなどの栄養素は、熱に弱いことで知られています。
加熱することで成分量が減少したり、効能が失われたりしますが、生のまま食べれば効率的に体に取り込むことが可能です。
実は、レジスタントスターチそのものは長芋に特有の栄養素ではなく、米や豆類、じゃがいもやさつまいもなどにも一定量含まれています。
ところが、これらの食品は生食できないため、加熱調理の過程でレジスタントスターチの多くを失うことに。
生でも食べられる長芋は、レジスタントスターチを無駄なく摂取できる貴重な食材のひとつなのです。
すりおろして「とろろ」に
長芋の定番の食べ方といえば、スルスルと食べられるとろろ。
少し大変ですが、すり鉢や目の細かいおろし金で丁寧にすりおろしてみましょう。
フードプロセッサーやミキサーで手軽に作る方法もありますが、手ですったとろろのなめらかさは格別です。
上手におろすコツは、おろす前に5~10分ほど酢水につけておくこと。
長芋のぬめりと変色を和らげつつ、手のかゆみも防止する効果があります。
切ってサラダや和え物に
サラダ・和え物・漬物などでいただく場合も、短冊切りや角切りにした後、酢水にさらして変色を防ぎましょう。
「手を汚したくない」「洗い物を増やしたくない」という方には、包丁でカットするのではなく、ポリ袋に入れた長芋を麺棒などでたたく方法もおすすめ。
大きめに形を残しながら砕くことで、ほどよい食感を楽しむことができます。
長芋の保存方法と長持ちのコツ

一度では食べ切れず、なにかと余らせてしまいがちな長芋。
保存しているうちに変色や傷みが出てきてしまい、困った経験はありませんか?
ここでは、長芋を上手に保存するためのポイントをご紹介します。
まるごとの場合は常温保存も可
1本まるごと保存する場合は、全体を新聞紙で包んで乾燥を防ぎ、風通しのいい冷暗所で保存しましょう。
保存場所の温度が20~25℃以上になる時期は、冷蔵庫の野菜室に入れるようにしてください。
使いかけは冷蔵保存
使いかけの長芋を保存する場合は、切り口をキッチンペーパーで覆い、その上からラップをして野菜室で保存しましょう。
切り口が空気に触れると、乾燥と酸化が進んで傷みやすくなってしまいます。
冷凍保存でもっと長持ち
長芋を冷凍保存する場合は、あらかじめカットしたりすりおろしたりしておくと、そのまま使うことができて便利です。
ラップにくるんでからフリーザーバックに入れて冷凍すれば、2~3週間ほど保存することができます。
風味を損なわないよう、使うときはレンジを使わずに自然解凍するのがおすすめです。
まとめ
長芋は、さまざまな料理に使いやすいだけでなく、栄養も豊富に含まれている実力派野菜です。
体にやさしい栄養素がぎっしり詰まっているので、少し疲れを感じたら、美味しい長芋料理で心身をいたわってあげましょう。